南ア 光岳南面の沢

2018年7月13 ~ 16日 (3泊4日)
中和(単独、記)

大井川水系の最大支流・寸又川。
南アルプス深南部と呼ばれる山域を構成する一大渓谷であり、その支流には無数のゴルジュや大滝を秘めている。この流域の愛好家としては、源流にあたるリンチョウは、いつか遡行したい沢の一つであった。

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(1) 概要

・期間:7/13 ~ 7/16 (3泊4日)
・対象:信濃俣河内・中俣 (遡行)、寸又川・椹沢(下降)、寸又川・リンチョウ(遡行)

(2) コースタイム

D1: 畑薙ダム(05:18) → 西河内出合(08:03) → 三俣(10:22) → 百俣沢出合(14:15) → 幕営地(17:10)
D2: 幕営地(04:42) → 木積の滝(06:05) → 稜線(09:24) → 椹沢出合(16:16) → 幕営地(16:30)
D3: 幕営地(04:45) → リンチョウ出合(05:04) → ダルマ沢出合(08:33) → オニクビリ沢出合(13:29) → 稜線(15:48) → 幕営地(16:30)
D4: 幕営地(05:00) → 光岳(05:15) → 三俣(09:50) → 西河内出合(11:01) → 畑薙ダム(13:31)

(3) 山行記録

7/13(金) 晴れ

信濃俣林道入口に駐車し、自転車で林道終点まで移動。
吊橋横のガレをフィックスロープを利用して畑薙湖に降り立つ。
いきなりバックウォーターの泳ぎだが、足が付かないのは10m程度で、後は湖水の横を歩くことができた。

信濃俣河内は、三俣までは基本的に何もない沢で、河原歩きと渡渉に終止する。今回は竿を持ってきたので、西河内出合から釣り上がりながらの遡行。オカズの調達の成功したので、三俣で竿は仕舞う。

中俣は出合からゴルジュとなり、少し進むと1mにも満たない小滝。
なるべく水流沿いに遡行したいので、水流左横を狙うが、釜が洗濯機になっており、渦に体を引き込まれて、水から這い上がれない。
何度かやっても突破できず、左岸を巻いた所、この上にも大水量の5m滝と渦巻いた釜が見え、まとめて巻いた。両岸立った地形はさらに続くが、特に問題になる場所はない。

右岸から比較的水量の大きな沢を2本見送ると百俣沢出合。中俣と百俣沢が1つの釜に落ち込んでサラシ場を形成しており、水流沿いの遡行は不可能。左岸の枝沢から巻いて懸垂で滝上に降り立つ。
この滝上から始まるゴルジュが第二の核心で、5m以下の滝2本をヘツリ気味に抜けると、ハング気味の5mの滝。右岸の壁を空身で上って高巻き、荷揚げしたのち懸垂で落ち口に戻れば核心は終了。
この先も10m内外の滝が連続するが、難しいものはない。シャワーを交えて楽しく越えられる。標高1600mあたりで、左岸に台地を見つけたので、ここで幕とした。

7/14(土) 晴れ

幕営地を出てからも延々と5m前後の滝が続き、そのフィナーレが木積の滝。
どんな由来か不思議な名前だったが、一目見て納得。流木が積み木のように重なっており、実に即物的な名前である。

この滝を右から巻くと、イザルヶ岳からの沢と当量で分かれる。
左側に入ると、両岸が崩落地のようになり、やがて完全な崩落壁の様相を呈する。
滝は容易に登れるものが多いが、崩落地の中である故に岩が脆く、快適とは言い難い。最後の二俣直下の小滝を巻こうとしたところ、急なザレで下降が困難。
大高巻きに追い込まれたが、二俣左の沢に復帰し、水涸れまで詰めると稜線は至近。藪こぎも無く柴沢への分岐点の真横に出た。

ここからは椹沢を下降路にとるため、柴沢登山道を標高2150mあたりまで降りてから入渓。
この沢の上流部は、小滝が数本ある程度で、全く平凡な渓相である。
二俣を過ぎると断続的に小ゴルジュがあり、数回懸垂したが、遡行であれば、ほぼ全ての滝が水流横を登れるだろう。
ゴルジュ群を抜けると、開けた河原が暫く続いたのち、寸又川本流に合流する。

本流からは、竿を出しながらペタペタ歩いて行くと、大量の流木が打ち上げられた河原を発見。
細いものから太いモノまで何でもある上、全てカラカラに乾いている。こんな国宝級の薪が、数百本転がっているのだ。最高の宿泊地なので、釣り竿はほっぽりだして、キャンプファイアに励んだ。

7/15(日) 晴れ

宿泊した河原のすぐ後ろが林道なので、リンチョウ出合まで林道を移動。
すると突然、上からの激しい落石音と共に、若いメス鹿が10mくらい先に落ちてきた。鹿氏は、痙攣するのみで全く動けないようだが、私に出来ることは何もない。

リンチョウ下部は、広葉樹の中に穏やかな渓が続けた後、リンチョウ滝に出合う。正面から見ると難しそうだが、近づいてみると水流右が容易。空身で登って荷揚げした。
リンチョウ滝の上からは巨岩帯となるが、その上は明るく開けた河原となり二俣(ダルマ沢出合)。ダルマ沢を下降してきたと思しき2人パーティが見えたが、先に行ってしまった。

二俣を少し行くと、核心と思われる第一ゴルジュ。先行パーティが右岸を巻いているようで、落石や倒木がゴルジュ内に降り注いでいる・・・・
巻く方が早そうだが、主目的である沢の核心を安易に巻くのは考えられず、ゴルジュ突破を試みる。1本目の3m滝は容易で水流右を直登。2本目の5m滝は厄介で、右からの突破を試みたが、泳ぎもヘツリも何度やっても通用しない。やむを得ずロープを出して左側を攻める。左壁をアブミで2m程上がり、バンドをトラバースして何とか突破。3本目の6m滝は右側からフリーで超えた。

その先の第二ゴルジュは、5m滝をかけているだけの小規模なものだが、明らかに直登困難なので右岸の枝沢から巻く。
これで、この沢の核心は終わり。水量が多いオニクビリ沢を見送ると、滝も全く無くなり、2100m付近からルンゼ状となり左右に分かれる。
傾斜の緩い左側に入ると、2200mくらいで水流が無くなり、急なルンゼとなって白い岩峰に詰めあげている。これを直登するのは骨が折れそうなので、左側の藪尾根を少し登ったところ、加加森からの登山道に合流できた。
テカリ手前の適当な場所まで登ってビバーク。

7/16(月) 晴れ

出発して15分程でテカリの山頂。光小屋もテン場も賑わっており、それまでの静寂な世界が嘘のようだ。
人が多い登山道で畑薙まで行くのは嫌だったので、イザル尾根を下って三俣を目指す。軽量化のため水を殆ど捨てたので、暑さで気が遠くなったが、ヘロヘロになって三俣に辿り着く。地元の3人パーティが休んでおり暫し歓談。
後は来た道で畑薙に戻るだけ。