日高山脈中部横断(農屋~カムエク南西稜~1823峰~ピラトコミ山~札内川ダム)

2018年12月27日~2019年1月3日
中和(単独、記)

 

日高山脈は山が深いので、その最深部に行こうと思うと、一週間近い休みが必要になってしまう。自然、関東労務層が日高の中核に行く機会は、年に数回しかないことになる。でも今年はまだ日高に行けていない。それじゃあ年末年始は日高に行くしかない。

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概要:
日高山脈中部横断(農屋~カムエク南西稜~1823峰~ピラトコミ山~札内川ダム)
2018/12/27~2019/1/3

コースタイム:
D0(12/27) : 新千歳空港 – 苫小牧
D1(12/28) : 農屋バス停(09:46) – 静内ダム(10:53) – 高見ダム(13:23) – C1(16:06)
D2(12/29) : C1(05:41) – 東沢林道分岐(07:37) – 清和橋(13:01) – C2(15:44)
D3(12/30) : C2(06:08) – シカシナイ山(10:20) – P1821(15:45) – Ω3(15:45)
D4(12/31) : Ω3(06:29) – P1848(10:40) – カムエク(14:36) – Ω4(15:36)
D5(1/1) : Ω4(07:02) – ピラミッド(08:34) – ガケ尾根の頭(10:15) – C5(13:46)
D6(1/2) : C5(06:46) – 1823峰(09:36) – P1643(11:47) – Ω6(15:29)
D7(1/3) : Ω6(06:11) – ピラトコミ山(09:17) – 林道(13:36) – 札内川ダム(15:01)

行動記録:

12/27
前日移動。苫小牧でアマゾンからのガス缶をコンビニで受け取り、そのまま駅でビバーク・・・などするはずもなく、全館暖房のビジホで過ごす。

12/28 晴れ
苫小牧から色々乗り継いで農屋バス停。ここから南西稜取付まで約48kmの林道歩き。この山深さこそが日高の魅力!!そんな自己暗示をかけて淡々と歩く。どうやら単独の先行者がいるようで足跡がある。ルート被らないといいなぁ。高見橋の分岐手前でツェルト泊。

こんな感じの林道が続く

12/29 雪
出発してすぐに足跡の主を追い抜く。ペテガリに行くとのこと。他人のトレースを辿るなどお互い不幸でしか無いのでWin-Winだ。
除雪はナナシ沢出合の1km位先で終わり、膝ラッセルになるのでスノーシューを履く。地図に無い橋やらトンネルがあり困惑したけど、どうにか清和橋に到着。南西稜を突破できないと、もう一度48kmの林道歩きになるので、敗退という選択肢はない。

地図に無い作りかけの橋。橋の下の足場を使って渡る。

清和橋の少し先から尾根に取付くが、急斜面のラッセル。笹の上に乗った新雪で、踏み抜きが酷い上に笹の葉で滑る。吠えながら必死に登る。標高900を超えた辺りで傾斜が緩むので整地してツェルト泊。

12/30 雪のち晴れ
シカシナイ山まではシューが比較的快調。サクサク登るっていると、シューの真横で轟音と共に雪庇が谷底に消える。うーん。
シカシナイから先は藪と雪庇に加えてシューでも膝上ラッセル。進まない。シューで藪アスレチックをやると引っかかるのでアイゼンに変えると股ラッセル。相変わらず進まない。1821山頂でイグルー泊。

藪と雪庇の尾根
太平洋まで見えるマイホーム

12/31 晴れのちガス
カムエク南西稜の核心部に入るので、最初からアイゼンピッケル。雪庇尾根を所々腰までのラッセルしていくが、ハイマツ藪の踏み抜きも酷く、1848まで拷問に近い。
核心は1848の先の2箇所の靴幅+αくらいのナイフリッジ。左右どっちも切れ落ちてるけど、コイボクカール側なら落ちても即死はしなそうなので、そこまで緊張感はない。ロープ出してもいいかなと思ったけど、四つん這いになったり、ハイマツを掴んだりして通過。

南西稜核心部

後は大した所は無いけど、引き続き膝から股ラッセルの急登。もう吠える気力も無くなり、ヘロヘロでカムエク山頂。カムエクとピラミッドのコルで半イグルー。

カムエク南西稜を振り返る

01/01 吹雪のち止む
6時にイグルーを這い出ると、吹雪で視界が悪くヘッデンだと苦しい。暖かいマイホームに戻り、完全に明るくなってから出発。
ピラミッドへの登りは、ちょっとした岩場もあるのでアイゼンでの行動だけど、藪の踏み抜きも多く消耗する。ピラミッドからガケ尾根の頭へは岩稜をかわしながらの股ラッセルが続く。進まない。

ガケ尾根の頭の雪稜

ガケ尾根の頭南側の岩稜帯を抜けた辺りから吹雪が収まってきて、1832峰が遠くで雪煙を上げているのが見えてきた。1602のコルは吹き溜まりでイグルー建設に好適だけど、もう少し進めるだろうと色気を出したものの、雪庇尾根と藪の踏み抜きで全然進まない。天気も悪いし、正月なので早めに行動を切ろうと思ったけど、モナカ雪ばかりでイグルーも雪洞も建設不適。風が当たらない岩の隙間を除雪してツェルト泊。

01/02 雪が降ったり止んだり
雪庇地帯なので完全に明るくなってから出発。1823峰手前のピークまで、引き続き藪と雪庇のアスレチック会場。

雪庇尾根

一段上がった1737からはシューで歩ける快適な尾根になり、何事も無く1823峰に着。視界が悪いので懐からコンパスを出すとアウターのフロントジッパーの金具が壊れて雪の中に消えた。ジッパー全開固定、非常にまずい。さすがに試される大地。吹雪かれたら低体温になる可能性があるので、さっさと先に進む。
1643から国境稜線を外れてピラトコミ山に向かう。ここは地図を見て、雪稜を期待していた場所だ。だけど、実際には猛烈な藪尾根。所々ナイフリッジもあるけど、藪もセットなのでスッキリしない。おまけに藪こぎやラッセルしていると壊れたアウターの隙間から雪が入ってきて寒い。モン○ルに対する呪いの言葉を吐き続ける。ピラトコミ手前のコルでイグルー泊。

藪尾根、奥がピラトコミ山

01/03 快晴
今日はピラトコミに登って下山するだけ。でも相変わらずヤブと格闘しながらのラッセル。イライラメーターはとっくに振り切っている。絶叫しながら雪庇とヤブの集合体を処理していると、ふいに右足の接地感が薄くなり、少し遅れてズズンという音とともに雪庇が落ちていった。この山行で三度目。いい加減に学習しろよという話だけど、酷いヤブなので、藪と雪庇のコンタクトラインを攻めざるをえない
山頂直下からはご褒美のように快適な尾根になり、十勝平野を一望しながら山頂。下山は東面直登沢の右岸尾根を使ったが、地図にない小さなポコが多く意外とかったるい尾根だった(この尾根はなぜか赤札が付いている。原始性が魅力の日高への冒涜だと思う)。後は林道を歩いてダムのゲートでタクシー召喚の術。財布は冬山のようにお寒くなるが、中札内のバス停まで20kmもあるので、もうここでゴールしてもいいでしょう。

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この山行のために11日間の休みを確保しましたけど、低気圧の通過もなかったので、停滞ゼロ、予定を大幅に前倒して抜けられました。主目的だったカムエク南西稜は、間違いなく中部日高で一番美しい雪稜ルートです。ポロシリ、ナメワッカ、イドンナップ、エサオマン、カチポロ、1839峰などなど、北部中部の主要なピークを左右に眺めながら、国境稜線最高峰のカムエクに登り詰めるので、日高のど真ん中にいる愉悦を感じます。最短経路でも入下山だけで4日かかりますけど、クライミング的な困難さは低いので、もっと歩かれてもいいルートだと思いました。

阿弥陀岳北西稜

2018年12月30日~31日
川端(記)、小渕

12月30日
赤岳山荘駐車場に車を置き行者小屋へ。天気はいいが気温が低い。
行者小屋にテントを張りジョウゴ沢へ今季初アイスの計画でしたが、最近フリーばかりで久々の山ということもあり、深いラッセルがあるとキツいので、明日に備え北西稜の偵察へ。
行者小屋から少し下りたあたりで適当に尾根を目指しましたが、いつも間に北稜寄りになっていることに気づき、これまた適当なところをトラバースして北西稜の下部まで詰めて戻りました。トレースはありませんでしたが深いところでも膝までのラッセルで状態はまずまずでした。
12月31日
7:00出発
快晴。
前日付けたトレースを見失う間抜けなミスがあり時間をロス。
リッジでロープを出したこともあり行者小屋から岩壁の1Pまで4時間かかった。
11:00
1P 小渕
右のバンドを進み傾斜の落ちたところを登るとハンガーボルトがある。途中のランナーが取れず苦労していた。
2P 川端
ビレイ点からすぐ上の凹状を登る。ここもランナーが取りにくいが、よく見ると残置ハーケンが見つかる。かなりランナウトしましたがホールドもあるので落ち着いて登れた。3P 小渕
ビレイ点から左に回り込むが足元の雪が崩れそうで少々気持ち悪い。途中の木やハーケンでランナーが取れる。ハンガーボルトのあるところでピッチを切った。
4P 川端
出だしが少々悪い。一段上がったところから右へトラバースぎみに登る。ホールドもあり、お助け紐もある。スラブの下まで来たら手の届くところにハーケンがあるのでランナーをとり、細かいホールドを拾いジワジワ登る。凹角部分にハーケンが連打されているのでさほど恐怖を感じず登れたがハーケンが墜落に耐えるとは思えなかった。途中にスリングがあり助けてくれる。
最後の抜け口は雪がついている岩を持つ気になれずバイルをひっかけ一気に足を上げてリッジに出る。少し登ればハンガーボルトがあるのでピッチを切ってここで実質クライミングは終了。ここからコンテで御小屋尾根に出る。ロープをほどき阿弥陀頂上へ。15分くらい。阿弥陀岳 15:30
快晴に加え稜線にでてもほとんど風がなく、雪も締まっていたので最高のコンディションでした。

鳥海山北面 (中島台~新山~稲倉岳~中島台)

2018年12月21日~23日
中和(単独、記)

正月前に体を冬山に慣らしておきたいので、気候の厳しさに定評のある鳥海山に行くことにした。登山大系によると、鳥海北面には幾筋かルートが拓かれており、気象条件も手伝って充実した山行ができるそうな。今年は暖冬寡雪だけど、鳥海は山麓の矢島(標高46m)のアメダスは積雪30cm。雪の心配はいらなそうだ・・・

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概要:
2018/12/21~12/23
鳥海山北面 (中島台~新山~稲倉岳~中島台)

コースタイム:
12/21 : 中島台浄水場(9:50) – 林道終点(12:20) – 台地状地形(14:40) – Ω1(15:50)
12/22 : Ω1(06:09) – 新山(10:40) – 扇子森(14:26) – Ω2(15:40)
12/23 : Ω2(06:01) – 稲倉岳(06:36) – 唐吹長峰(08:35) – 中島台浄水場(10:47)

行動記録:

12/21(金) 晴れ
夜行バスとレンタカーで中島台に移動。除雪は横岡第一発電所手前の浄水場で終わるため、レッカーされないと信じて路駐。
第二発電所までトレースがあったが、その先は膝ラッセルになるためスノーシューを履く。林道終点からは鳥越川に沿って上がって行くが、頻繁に倒木や飛び石で渡渉を繰り返すので、意外と骨が折れる。途中、倒木に雪が乗っているかと思って無造作に歩いたらスノーブリッジ。思いっきり踏み抜いて沢に落ちそうになるが、引っかかって助かった…。
次第に右岸が安定した尾根っぽくなるので、これで楽に標高を稼ぐと標高1000mあたりで台地状を呈してくる。台地の中には無数の沢と窪地があり複雑な地形。けどまあ、天気が良く新山が見えるので、新山基部を目指して歩いて、適当な場所で半イグルー(壁だけブロック、屋根ツェルト)建設。

台地状地形

12/22(土) 昼前後は吹雪
朝は新山も見えて「冬の鳥海はいい天気だなー」と皮肉を吐いていたが、標高1600mあたりから猛吹雪。風はそれほどでも無いけど、視界が極めて悪く、直登ルンゼを登っているのかわからない。というか5m先の斜面が水平なのか登りなのかも不明。数分おきにコンパスを切って、遮二無二ピックを刺して登っていたら稜線に出た。
稜線も引き続き吹雪。新山と思われるピークを踏んで下降するが、ほぼホワイトアウトしており、外輪山に上がる方法が全くわからない。時折、火口壁が霞んで見えるので、壁基部をトラバース気味に千蛇谷を下降。火口壁上部からの雪崩にビビりながら、せかせかとラッセルし、標高1800m辺りで登山道の杭を見つけて外輪山に上がる。
外輪山に上がると傾斜も緩むのでシューに変えて歩いていると、扇子森あたりで唐突にガスが晴れ、酒田の街まで見えた。地形さえわかれば、こっちのターン。蟻の戸渡り周辺の雪庇尾根を越え、多少の風雪にも耐えられるように全イグルー建設。ゴミとかいらない地図を燃やして焚き火しつつ、酒を飲んでダラダラと過ごす。屋内でも焚き火ができるのがイグルー山行の醍醐味だ。

マイホーム

12/23(日) 晴れ
今日も晴れ。落ちる可能性がある所は全て通過しているので、今日はハイキング。稲倉岳からの下りは素晴らしい雪面で、スキーだったら最高だろうけど、自分が履いているのはスノーシュー。尻セードしようかと思ったけど、カッパが破れたら惨めなので普通に歩いた。唐吹長峰の北東尾根を降りて自分のトレースを拾えば、後は来た道。車はドナドナされずに残っていた。

八ヶ岳 裏同心ルンゼ・南沢大滝アイスクライミング

2018年12月15、16日
中和、玉置 (記)

前週末の広河原沢は雪も氷もなく撤退、結局伊豆の城山でフリークライミングという残念すぎる結果に終わったので、今度こそということで氷結が良好だという情報があった裏同心ルンゼと南沢大滝へ行ってきました。

12月15日 裏同心ルンゼ
前夜に出発し、美濃戸口で車中泊して暗いうちに出発した。雪が薄く積もった林道を進んでいくが、ギアとテントの重さで足が前に進まない。中和さんにどんどん引き離されるが、仕方ないので黙々と歩き続けた。赤岳鉱泉についた頃にはだいぶ疲れてしまった。しかもザックを下ろした時に太ももが攣ってしまいしばらく足を引きずる羽目になった。中和さん、心配かけてすみません。足をかばいながらテントを設営し、アタック用の荷造りを済ませた頃には足の調子も回復してきたので、予定通り裏同心ルンゼへ向かった。

しばらく進んでF1に到着すると、すでに先行パーティーが取り付いていた。氷結は良好そうだ。我々もギアを準備し、腹ごしらえをして滝に取り付く。10mくらいの短く傾斜もそれほどない滝だったが、シーズン初&足の調子が万全ではなかったので少し緊張した。滝の抜け口にペツルボルトの支点があったのでそこで中和さんをビレイした。中和さんは人生初のアイスクライミングだが、ゆっくりながら落ちることもなく順調に登ってきた。F1の上部は60mほどの河原歩きとなりF2へ向かった。F2は3段に分かれており、下部と上部が70度から80度程度の傾斜だった。3段合わせて45mくらいだろうか。まとめて1ピッチで登ることにしたが3段目で疲れてしまいだいぶ時間がかかってしまった。残置支点が他のパーティーに使われているのでF3の氷にスクリューで支点を作り中和さんをビレイ。後続パーティーも続々登ってくるので先に進んでもらってから、F1と同じような長さ、難易度のF3をこなしさらに上へ進んだ。F4?は傾斜の緩い河原歩きの途中の40度程度のナメ滝だったのでフリーソロで突破。最後のF5に取り付く。ここは水が流れており少し鬱陶しかった。F5を抜けると前方には大同心が迫ってきた。右側に45度程度のルンゼがあり氷結も良さそうなので、ここで中和さんが初リードにトライ。難なく突破し、大同心の基部へ上がった。時間があれば大同心南稜を登りたかったが、午後2時を過ぎていたので取り付きだけ覗いて大同心稜を下山し、赤岳鉱泉で宿泊した。

12月16日 南沢大滝
テントを畳んで南沢大滝へ向かった。大滝は自分が見たことのある写真よりもまだ細かったが登ることは出来そうだった。小滝の方も十分氷結しているように見えたが、他のパーティーが取り付いていたので最初から大滝を登ることにした。大滝は全体的に湿っており、スクリューの刺さりが悪かった。特に上部の垂直部分は脆い氷の上を水が流れている状態だった。アックステンションをかけつつ1mおきにスクリューをセットしていたら弾切れになってしまったので一旦ロワーダウンで下部のスクリューを回収して再トライ。必死になってなんとかトップアウトして支点をセットした。服についた氷を払いながら、中和さんをビレイする。中和さんも結構苦労したようだ。さらに奥に別の滝があるという話を聞いたので、氷結した河床を歩いて進んだ。すると確かに50度程度のナメ滝が現れたが、あまりそそられなかったので懸垂下降で大滝下まで戻った。結構時間も押していたので、その後は二人ともトップロープで1トライずつ登って下山することにした。しかし、中和さんが支点を回収する際に凍結したロープがスタックしてしまい懸垂下降はできず、結局本来とは別の残置支点でロワーダウンすることになった。このトラブルでかなり時間をロスしてしまった。ロープの凍結を甘く見ていたことは反省。美濃戸口についた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

シーズン初のアイスということで感覚を取り戻すのがメインだったが楽しめた。自分はアイスのリードはまだまだ修行中なのでもっと経験を積んで行きたい。中和さん、どうもありがとうございました。

天竜川水系 水窪川支流・戸中川

2018年11月2日~11月5日
中和(単独、記)

この時期にノコノコ沢登りに行くと奇異の目で見られるが、温暖寡雪な南ア深南部は意外と快適である。吸血生物と釣り師がおらず、紅葉が盛りというメリットも捨てがたい。そんな訳で天竜川水系の水窪川支流・戸中川に行くことにした。目的は悪いゴルジュを有するという西俣と、多くの滝を持つ東俣の遡行である。

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概要:
2018/11/02(金)~2018/11/05(月)
天竜川水系 水窪川支流・戸中川西俣(遡行)
天竜川水系 水窪川支流・戸中川中俣(下降)
天竜川水系 水窪川支流・戸中川東俣(遡行)

コースタイム:
11/2(金) 仮設ゲート(06:03)-戸中山林道ゲート(06:30)- 第1ゴルジュ(07:00) – 第2ゴルジュ(09:14) – 二俣(12:58) – 崩落地末端(13:38) – 宿泊地(13:57)
11/3(土) 宿泊地(06:09) – 稜線(08:49) – ロクロバ峠(11:12) – 堰止湖(14:03) – 中俣出合(15:26) – 宿泊地(16:01)
11/4(日) 宿泊地(06:10) – メラドの滝(06:40) – 連瀑帯(10:19) – 戸中山林道(13:45) – 宿泊地(15:37)
11/5(月) 宿泊地(06:06) – 鹿の平(07:44) – 戸中山林道(10:04) – 戸中山林道ゲート(11:36) – 仮設ゲート(11:58)

行動記録:

11/2(金) 晴れ
戸中山林道はゲートの2km手前で通行止め。ゲート手前の崩落地は落石の巣なので妥当な措置だろう。仮設ゲートから30分程度歩いて西俣出合にかかる奈良代橋の横から入渓。
当初は穏やかな河原が続くが、次第に両岸が立ち始める。やがて黒光りした側壁に囲まれ、薄暗い第1ゴルジュとなる。ゴルジュ内は沢が屈曲するたびに滝を掛けているので、どんな滝が出てくるのかワクワクが止まらない。一本だけ10m超のハング気味の滝があるが、これを右岸から巻く以外は、全て水流通しに遡行可能。

10mハング滝

第一ゴルジュの先は、しばらく平凡な河原となるが、右岸からの大きな滝を見送ると第2ゴルジュが始まる。こちらも両岸が激しく立った薄暗い渓相だが、水流通しにフリーで遡行できる。ちょっと渋かったのが、途中にある6m滝と、出口にある5m滝。6m滝は、右壁のバンドを空身で登って荷揚げするが、荷揚げロープを全力で引っ張っても水流に負けてしまう。「ヴォルガの船曳き」のような体勢で必死にやっても上げられなかったが、落口に移動するとあっさり荷揚げ出来た。沢の荷揚げは、水流を読まないと体力の無駄である。ゴルジュ出口に掛かる5m滝は、フリクションは良いので突っ張りで這い上がってから右壁に飛びつき、細かいホールドを拾って越える。

6m滝

第2ゴルジュを抜けると、両岸も寝始め、堰堤と河原が交互に現れる退屈な渓相。地図では1170m付近で三俣のようになっているが、右俣、中俣は水量に乏しい。左俣は水量を保ったまま、3~6m程度の滝を連続させるが、ガバだらけで楽しく越える。その先の二俣で左俣を採ると、薄暗いゴルジュのような渓相となり、またも5m程度の滝が連続する。そう難しいものはない。崩壊した堰堤を二個続けて越えると、崩落地の末端部に出る。

崩落地末端

崩落地最初の10m滝は、岩がボロボロなので迷わず巻きを選択。その先も小滝を越えていくと、沢は崩落壁となって消えていくのが見える。これより先に進むのは諦めてビバーク場所を探すと、一段高い場所に落石が無さそうな場所をゲット。沢に向かって外傾しており快適とは言えないが、崩落地の中なので贅沢は言えない。薪は左岸の尾根まで上がると大量の倒木があり、燃料には困らなかった。

11/3(土) 晴れ時々曇り、一時小雨
視界が無い時に崩落地に入るのは非常に危険なので、天候が不安だったが幸い晴天。崩落地の突破にかかる。
本谷ルンゼは急傾斜のガレとなっており、上部はかなり苦しそう。右側のルンゼは水流があるが、崩落壁に詰め上げており抜けられない。さらに一本右のルンゼは下部は急峻だが、上の方は傾斜が緩い。そんな訳で、水のあるルンゼを登ってから、右端のルンゼへの引っ越しを狙う。
水のあるルンゼは、4m程の滝を持つが、垂直のボロ滝で登りたくない。右壁を巻くが、ほぼ全てのホールドが動いて心臓に悪い。滝上から、リッジに向かって急なザレ斜面を登る。
乗り越すリッジは、下から見ると簡単にそうに見えたが、ガレとザレを練って固めたようなボロリッジな上、靴幅しかなくビビリが入る。馬乗りになったり、四つん這いになったりと無様な格好だが、恥も外聞もない。ジリジリ前進すると、右側のルンゼとの標高差が5mくらいまで接近するが、ボロ岩なのでクライムダウンなど不可能。ハーケンかワードホッグを打って懸垂したいが、ハンマーで叩くと簡単に崩れてしまう岩ばかり。リッジを進みながら、あちこち叩きまくって、一応はハーケンが効くリスを拾えたので、長めのナイフブレード2枚でルンゼに懸垂。このルンゼも相当ボロいが、リッジに比べれば遥かに快適で、崩落地頂点まで詰めあげる。崩落地の頂点は、笹やら土やらがオーバーハングしており、フリーでは越えられない。適当な根っこにスリングを掛けてA0で乗り越した。

崩落地

乗り越した場所は黒沢山南側の笹原で、ここから二時間程、軽く笹藪をこぎつつ稜線を歩き、中俣の下降点であるロクロバ峠に移動。
下降する中俣は、登山大系でボロクソ言われていたので、何も無いと思っていたが、立派な堰止湖が出来ていた。左岸の尾根が大崩落して作られたようで、南ア最大の湖沼ではないだろうか。湖岸を歩いて通過しようとしたが、かなり悪い。技術的なものではない。へつれない場所で池の中を歩くのだが、泥が堆積して「グチャ」、「ズボッ」っという感じの沼を、胸まで水に浸って歩くため、非常に気持ち悪いのである。心なしかドブ臭までしてくる。
装備が泥だらけになりそうなので、高巻きに変更したところ、釣り師と思しき巻道があり、これを使うと簡単にダム本体に行けた。このダム湖を抜ければ、下流には何もない。ゴルジュのような場所もあるが、歩くだけで戸中川本流に合流。

堰止め湖

本流を遡行し、大きめの堰堤を越えると広大な河原となり、泊まり場は無尽蔵。「フルフラット」、「薪豊富」、「柔らかい砂地」など強気の条件を出しても、希望通りの好物件がザックザク。数百人は寝れそうな明るい砂地を1人で独占し、焚き火を相手に楽しい夜を過ごす。

宿泊地

11/4(日) 曇りのち雨
西俣が予想以上に容易だったので、東俣も簡単に抜けられると思っていたが、最初のゴルジュでその考えは打ち砕かれる。登山大系にある「メラドの滝」と呼ばれる滝から始まるのだが、両岸立った薄暗いゴルジュに2つの沢から大きな滝が落ちこんでおり、沢からのプレッシャーが凄い。水流左にバンドが有るが、とても登る気にならず、右岸を巻きにかかる。この巻きも中々悪く、ロープ1ピッチ、懸垂1回で落ち口に立つ。(写真は最下段しか写っていないが、右側の滝は3段30m以上ある)

メラドの滝

メラドの上は、直登できる5m以下の滝を連続して掛け、「このままゴルジュを抜けられるか・・・?」と、またも甘い考えが生まれ始めたが、ゴルジュ出口に10m直瀑が待っており絶望。右壁を斜上するバンドから直登できる可能性もあるが、落口への数メートルが悪い。取り付く気にならず、2つ下の滝まで降りてから右岸を巻く。第1ゴルジュを抜け、一旦平穏になった後、第2ゴルジュとなるが、全て水流付近を突破できるので、特記することはない。

第一ゴルジュ出口の滝

標高1050m辺りで沢が東に90度曲がると、傾斜が急激に増し始めて滝が連続。最初のスライダー状の滝はツルツルで突破不能なので、左側を巻き気味に登る。続くヒョングリ滝はやや細かいが右壁から登る。これを越えると登山体系にある全6段の連瀑帯である。核心である5段目は、細かい上にヌメリがあり、ホールドに立ち込む踏ん切りがつかない。「タワシを持ってこなかったからな!」と捨て台詞を残して、倒木で懸垂して3段目の落口に撤退。

連瀑帯4・5段目の滝

3段目の落口から左岸の30m弱のルンゼを小さく巻きにかかるが、人の頭より大きい岩でも抜け落ちるボロルンゼな上、掴めると思っていた木もポキポキ折れる頼りない代物で、心もへし折られる。ナイフブレード2枚と親指位の太さの木にスリングをかけ、懸垂20mで3段目の落口に後退。さらに倒木でもう1回懸垂して最下段まで戻った後、右岸の大高巻きと懸垂1回で連瀑帯の上に出る。
ここを越えると、堰堤と河原が続き、この渓谷では珍しい明るく平穏な場所となる。崩壊した林道を見送って、堰堤を越えていくと、再びゴルジュ状の滝場。10mを越える滝は無いが、ヌメる滝が多く消耗。CSの乗り越しだったり、手がかりの無い斜瀑だったり、手強いものもあり、登りきれず左岸を巻く。
標高1600m付近で3畳ほどの流木が転がったスペースを見つけたので、ここに沈殿。雨で湿気た薪で火力は貧弱だったが、ダラダラと焚き火をしていると、体も概ね乾いて寝られる状況になった。

11/5(月) 晴れ
宿泊地の上は、既に源流も近いと言うのに滝場がしぶとく続く。難しい滝は無いが、相変わらずヌメるので階段状の滝でも慎重にならざるを得ない。二俣を左に入ると、まもなく水が枯れたガレ沢となり、崩落地へと突き上げる。当初は崩落地を詰めようと思ったが、アリジゴクのようなガレで標高は上がらず、体力ゲージだけが減っていくのが自分でもわかる。妥協して木が生えた右岸の尾根に逃げると、獣道があり、これを辿れば鹿の平の一角に飛び出す。

鹿の平

4つの平といえば「信濃の国」だが、南ア深南部にも4つの平がある。ここ鹿の平と、黒バラ平、カモシカ平、笹の平と呼ばれる笹原である。カモシカ平以外は水場も至近の別天地で幕営にも最適である。さすがに鹿の平で一泊は出来ないので、せめて昼寝でもとガチャを外して草地に寝転んでいると、往復一時間かけて不動岳に行くのが面倒になってきた。寝過ごすと笑えないので15分くらいで切り上げ、不動岳は寄らず、鎌崩尾根から戸中山林道を経て下山。昼前には仮設ゲートに戻った。

遡行図:

・戸中川西俣
下流部の2つのゴルジュを含めて殆どの滝が登れ、楽しい遡行が出来る。詰めの大崩落地は悪いので、適当な所で左右いずれかの尾根に逃げるのが安牌。

・戸中川中俣
釣り師が逆河内にアクセスする際に使われる沢なので難しい場所はない。堰止湖というユニークなものがあるが、大正池やオンネトーのような、観光用の小奇麗な堰止湖を想像して行くと後悔する。

・戸中川東俣
崩落地を除けば、滝/ゴルジュ/高巻きのいずれも西俣より悪い。おまけにゴルジュ以外は、大菩薩や丹沢のような微妙なヌメリがあるため遡行しずらい。

主要装備:
ハーケン 11枚、カム#0.5~1.0 (1番のみ使用)、ワードホッグ2本(未使用)、沢ハンマー、60mロープ、15mフローティングロープ、アブミ(未使用)、スカイフック(未使用)、沢靴(ラバーソール)、軍手、ツェルト、シュラフ、のこぎり

 

大井川水系 寸又川支流・栗代川(遡行)~小根沢(下降)

2018年10月13日~15日
中和(単独、記)

栗白川は数年前から計画していたが、天気が悪かったり沢靴を忘れたり、今年だけで3回流れている因縁の沢である。寸又では最も入渓しやすい沢なので、いつでも行けるという謎の安心感があったが、運良く休みを取れたので、同じく大無間を取り巻く小根沢とセットで遡下降した。

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概要:
2018/10/13(土)~2018/10/15(月)
大井川水系 寸又川支流・栗代川(遡行)
大井川水系 寸又川支流・小根沢(下降)

コースタイム:
10/13(土) 栗代橋(6:26) – ユズリハ沢出合(8:51) – ホオジロ沢出合(10:11) – こっぱ沢出合(12:44) – 倉沢橋(14:37) – 大崩沢出合(15:01) – 岩小屋(15:11)
10/14(日) 岩小屋(6:04) – 二俣(8:07) – 稜線(9:17) – 大無間山(9:47) – 三方嶺(10:48) – 左俣出合(15:59)
10/15(月) 左俣出合(06:00) – 左岸林道(06:10) – 小根沢出合(8:51) – お立ち台(12:12) – 左岸林道起点(15:17)

行動記録:

10/13(土) 曇り、夜遅く雨
栗代橋から下を覗き込むと、栗代川も寸又川もカーキ色に濁っている。崩落地が多い南ア南部では、堆積土で濁りが長引くのは間々あり、水位も脛下程度なので予定通り入渓。茶色く濁ったゴルジュを歩くのは不気味だが、壊れた堰堤を2つ越えると穏やかな河原になり、水は澄み始めて一安心。
取水堰堤を越えた先の「八丁暗見」に入るが、淵や釜は埋まって深い場所でも膝程度。ユズリハ沢を分けた先の「曲がり渕」も同様で、かっては泳いで取り付いたという「鶴の天」ですら股程度の深さしか無く、遡行は容易。
曲がり渕を超えると、広河原となり左岸からホオジロ沢が合流。「竜言渕」と呼ばれるゴルジュに入るが、これまた浅いので通過は容易。滝を越えるのにアブミを1回使ったが、これは簡単に巻くことも出来る。
ここまで肩透かしを食らうと、核心部と言われる「龍神の瀬戸」への期待はいやが上にも高まる。黒光りする側壁は、数十メートルの高さで屹立し、風格は大渓谷のそれである。倒木が引っかかった3mの滝を右から越えると、核心部の滝である。1つ目の滝は、かつては振り子トラバースで越えたと言うが、今ではそんな面倒はいらない。釜が埋まっているので、水流に耐えて這い上がり、へつり気味に登れる。2つ目の滝も以前は泳いで水流を横断したそうだが、足が付くので、歩いて右岸に渡りバンドを登れば核心部は終了。
こっぱ沢を分けると穏やかな河原となり、歩くだけで倉沢橋に到着。橋のすぐ上は5mの滝だが、これは下部が立っており右から小さく巻く。その上の滝も越えて大崩沢を見送って、本谷(倉沢)の滝を越えると、まとまった数の流木と岩小屋を見つけたので行動終了。
が、この岩小屋、いざ入ってみると天井が低く快適さに欠ける。焚き火すると燻製になりそうなので、雨は降らないと信じ、外でごろ寝していたが無情にも深夜から雨。ツェルトに包まって黙殺していたが、全身濡れ始めて寝ている場合ではなくなり、焚き火と一緒に岩小屋に引っ越した。

10/14(日) 曇り時々小雨、夕方から晴れ
岩小屋を出てしばらく行くと20mの直瀑。これは観賞用で左岸を巻く。この先で二俣となり左に入ると、5m前後の滝が続くが問題になるものは無い。最後の二俣手前で15m程度の滝が2本連続。1本目は水流左横を直登するが一歩だけが微妙。2本目の直瀑は遠望すると高巻きかと思ったが、これも水流左横を直登。

15m直瀑

この滝を越えて最後の二俣を右側に入る。すぐに沢は3つに分かれるので、北東に向かう沢に入ると水が枯れ、ヤブのない斜面を登ればP2102と大無間のコルに出る。大好きな大無間に立ち寄りつつ、三方嶺に移動して小根沢下降点を探る。三方嶺の大崩落地が小根沢の本谷のようだが、ガスってて下降路は全く見えない。崩落地は下手に取り付くと進退窮まるので、山頂を南側に50m程下った場所から小根沢の枝沢に入る。

標高差400m近いガレとザレの集合体を下ると、一時間ほどで水が流れるガレ末端部。いくつか小滝を見送ると、本谷が右から合流してくる。ここからは10mを越える滝が連続し、水流沿いに下降できない。懸垂を2回交えつつ、右岸を小さく巻きながら下降していく。

連瀑帯

連瀑帯を抜けると、両岸立ったゴルジュに滝を重ねており、高巻きを選ぼうものなら相当上まで巻き上げられそう。ハーケン連打で懸垂かと思ったが、左岸の小ルンゼから小尾根を乗り越し、ガレを下降して巻けた。その先にも滝が2つあるが、これは左岸のバンドからガレに移行して滝下に降りる。
上流部で険しいのはここまで。後は左右から支流を加えつつ、時折ゴルジュとなるが、容易な癒し系ゴルジュ。最後のゴルジュを抜けると、だだっ広い河原となり左俣出合。ここはフルフラットな砂浜に大量の流木というリゾート地。山奥の雰囲気が心地よく、砂地に寝転び、酒と焚き火と星に囲まれてダラダラと過ごす。

10/15(月) 断続的に小雨
宿泊地から10分ほどで左岸林道に交差。林道から下山も可能だが、計画通り小根沢の出合まで下降を継続することにする。
左岸林道の下流も広い河原が続き、場違いな堰堤まであるが、徐々に両岸立ち始めてゴルジュとなる。序盤は容易なゴルジュだったが、両岸が30mくらい立った薄暗い空間になると、高巻きが絶望的な廊下に2つの滝を連ねる。最初の5m滝は容易、続く2段8m滝は圧縮された水流がS字を描いて落ちている。沢に引っかかった倒木を支点に懸垂するが、水流が強いため体を持っていかれそうになる。S字状の水流を振り子気味に横断して釜に降りる。

2段8m滝

その後も、断続的に黒光りするゴルジュと滝が出てドキリとするが、バンドが繋がっていたり、落ち込み程度だったりで、ロープ出す事は無い。頭上を森林鉄道の鉄橋が横切ると、15mの滝を落として寸又川の本流と交わる。本流は茶色く濁って水流も強そうなので滝下には降りず、林鉄の軌道跡に上がり下降終了とした。

後は下山のみだが、小根沢左岸の尾根を300mくらい登り返して左岸林道に復帰すれば、残るは林道起点まで約20kmの林道歩き。この林道は全長40kmを超える長さで悪名高いが、今では崩落の悪さに定評がある。今回の山行では、シビアな崩落地は「お立ち台」手前の一箇所だけだが、ここの横断は中々に悪い。ガレと岩壁の境界付近を横断したが、岩壁基部をトラバースする箇所が不安定で、ビビリながら通過。崩落地の上の樹林帯を大高巻きするのが安牌。

左岸林道

お立ち台から先は、以前より崩落が進んでいるものの、手を使う場所は無い。0.5kmごとにキロポストがあるので、数字に一喜一憂しながら林道起点に至る。

遡行図:
「赤石沢よりはるかに悪い」とまで言われた栗代川は、ほぼ全ての淵と釜が埋まって、その魅力は著しく衰微している。現状では倉沢橋より下流のみでの遡行価値は無く、本谷(倉沢)や大崩沢を詰めるか、他の沢へ継続しないと物足りない。

遡行図_栗代川

小根沢は予想以上に面白い渓谷で、源頭のガレに始まり、大滝、ゴルジュと目まぐるしく渓相が変化する。かといって極端に難しくもない。中流の河原が冗長な感もあるが、段丘が発達して泊まり場として非常に優秀。遡行記録が少ない渓谷だけに、どんな滝やゴルジュが出てくるかワクワクしながら下降できた。

遡行図_小根沢

朝日祝瓶山 金目沢左俣

2018年10月6日~7日
中和、谷水(記)

大朝日岳の南に位置する祝瓶山、これに南西からつきあげるのが金目沢左俣。ゴルジュの沢で、中でも井戸の底と呼ばれるゴルジュが目玉となる。
週末には台風差し迫っているのに、直撃しなさそうだから・・初日は天気よさそうだから・・と、とりあえず現地に行ってみることになった。

1日目:道の駅おぐに(6:30)→トイレ跡前駐車場(8:15)→在所橋より入渓(8:25)→二俣(10:50)→井戸底ゴルジュ突破(14:00)→幕営地(16:00)
2日目:幕営地(6:15)→奥の二俣(14:00)→陵線(16:10)→祝瓶山山頂(16:20)→登山口(18:25)→林道分岐郵商店前?(19:30)→車乗車(20:45)

1日目(晴れ)
深夜2時頃道の駅に到着し朝6時過ぎに起床。道の駅周囲は霧に包まれていた。天気予報は晴れだがいかんせん台風が近づいているのでこのまま雨になるのではという不安がぬぐえない。とりあえず祝瓶山の登山口にマウンテンバイクをデポしに出発。途中から霧が晴れて青空がみえてきた。テンション上がりながら、デポした後、入渓点の在所橋へ向かった。トンネルをくぐってしばらく行くとトイレ跡に広くなっているスペースがあったのでそこに車を停めた。朝食をとり装備を整えいざ出発!10月だが中和さんの額には汗が浮かぶほどの気温でいい天気だ。
入渓してすぐは大岩が多数ある河原歩き。前半は平和な河原と聞いていたがこれがなかなか飽きさせない。全身使って岩を登って遡行していった。多くの徒渉を繰り返し岩魚小沢・モチア沢を越えるころは大変平和な河原になっていた。正直すこし飽きる位の平和が続いた。
すると唐突に釜をもつ小滝が現れた。釜を歩いて自分は左から岩を登り、中和さんは右から水線突破。平和な河原歩きが続いていただけにこの滝はかなり楽しかった。二俣が近づいていることを感じながらまた河原歩きが続いた。するとまた突然、魚止の滝・逆くの字の滝に辿り着いた。水量がすごく、どこから行けばいいのか分からない。中和さんに先行してもらう。ザックを背負ったままでは圧に負けるためザックをおろして押しながら滝の下をくぐり、水圧が弱まるところでザックを背負い残りの滝を登る。そのまねをして滝をくぐるが息が思うようにできない。滝から出た時の解放感が気持ちよかった。

逆くの字の滝。右奥に進むと水圧がすごくなる

日当たりのいい二俣に到着して一休憩。この沢の中で絶好のテン場適地。15時位なら泊まってしまいたいが、時間はまだ11時前、明日の天気も怪しいので今日中に井戸底ゴルジュを抜けたい!ということでさらに先へ進む。

その後はどんどんゴルジュになって小滝が連続するようになった。ただ高さのないゴルジュで太陽光が差し込むのでそんなに圧迫感はない。ショルダーしてもらいながら突っ張りしまくり突破していく。とある滝の水線突破を諦め左手から岩場をトラバースするとその先にも滝があった。このままトラバースしていけるのかと思い岩の上を進んでいくと、道(?)が落ち口まで続かず途切れた・・・。中和さんが空身で対岸の方から行ってみることに。道(?)を辿っているうちに水流の2m位上を歩いていたのでクライムダウンかと思いきや、中和さん飛込!!全身が釜に沈んで見えなくなる。2秒位浮かんでこず(@0@)))本当に驚いた。(後から聞いたら中和さんも驚いたそう。)対岸に取付いたがなかなかいいホールドがなく、ホールドも崩れたりして、抜けられない。しばしスカイフック使用し休憩はさみ、リトライ!左足のスメアが滝中に決まり、見事突破!荷上げして自分もお助け紐で上げてもらった。水流に飛び込むのは怖かったなぁ。釜が深かったため、「これが井戸底だったのでは?」「以外に明るかったですね」とか話しながら進むと、突如として両側がせり立ってきてゴルジュ内が暗くなる。なんだなんだと思っていると先から中和さんが「すごいですよ」と呼んでいる。見てみるとすごかった。井戸底に相違ないゴルジュの深さと暗さ。上の方から差し込む細い光が滝を青白くライトアップさせて幻想的な光景だ。水流もひんやり冷たい。感動しながら井戸底ゴルジュを抜けるころには体はすっかり冷え切っていた。

井戸底ゴルジュの一部 – 滝自体は突っ張りで超えていける

日向で小休憩。白湯持ってきておいてよかった、と思いつつ体温回復。自分はここで一気に疲れが出てきた。中和さんはまだまだ元気そう。ゴルジュはまだ続く。やがて右手に10m滝×2が見えた。左側から登れそうだったので取付いたが、濡れていない岩が滑々で1段が上がれない。悪あがきせず左のルンゼに入り、適当なところを右にトラバース+懸垂下降で左俣の水流に戻った。豪雪に耐えた木の枝が大きくしなって進行を阻んできた。朝日の山恐るべし・・・。さらに30分ほど歩くと再びゴルジュに突入しそうな雰囲気となったためその手前でテン場適地(増水したら即移動ではあるが、流木は沢山)を見つけて幕営となった。

その夜は星がきれいに見え、風もなくおだやかだった。焚火を見ていると時間を忘れる。アルパインだと夕飯食べると寝てしまうが、沢では21時位まで平気で起きていられる。しかし明日はなるべく早く山頂に行きたいので、5時起床ということで21時位に就寝した。

2日目(雨のち曇りのち霧雨)
目が覚めると風はなかったが雨が降っていた。予定より早かったが仕方がない。昨日よりは確実に寒いだろうなぁ、と思いつつ出発。すぐに7mのシャワー滝に着く。記録ではシャワークライミングしながら直登できたハズだが、雨のせいで水量が多くそんな気にならない。始めは左手ルンゼから巻こうとしたが、想像以上に悪く少し戻って小さな尾根をあがり少し大きく高まいた。小滝を超えながら歩いていると、この沢最大の20m滝が遠くに見えた。登れるものではなかったため少し戻って、右岸から高まくことに。上がるのに使用した枝沢でハーケンを使用した。1枚回収できませんでした。すみません・・・。高度かせいでトラバース開始する前に休憩。雨のせいで休憩中は体が冷える。休憩もそこそこにトラバース再開。遡行図によると奥の二俣の右俣(自分達のルートは左俣)に降りるまではトラバースするようだ。ゴルジュの上のトラバースなのでかなりの高度だが、霧と木で水流が見えないのと木や枝がしっかりしていたのでそれを感じることはなかった。
雨は止んだが霧が晴れることはなかった。トラバース中、中和さんが「あそこに谷と尾根見えと思います。」と。谷はあるような気がするが尾根はよくわからない。それが二俣を分ける尾根だと信じて下降していく。ドンピシャ奥の二俣の右俣に降りることができた。地形を読む力ももっと磨かないと、と思う。ここまでくれば沢ももう終盤である。最後の大きな8mと6mの滝に出会う。8mは階段状だが高度感あったためメインロープを出しハーケン打ちながら谷水リード。ハーケンが抜けなくなることを恐れ深く打てず、意味をなしていなかった。反省((´・ω・`)。上の6m滝は中和さんリード岩が剥がれてなかなか悪い。何とか抜けたが、ハーケン3枚置いてきてしまった・・・。きれいな滝だったのにすみません。
だが大きな滝はこれで終了。あとは水がなくなってゴーロになって最後に藪漕ぎが少しあるだけ・・・のハズだった。少なくとも「日本の渓谷96′」ではそんな感じの記録だった。しかし1200mを超えても水は枯れる様子はないし、結構悪い2m位の滝が続く。お助け紐出してもらったり、両岸に生えている草を抜けない!と信じて手掛かりにして登っていく。途中からはその滝に対して憤る(≧□≦)//
やっと藪に突入する。しかし腕は奥の二俣までのトラバースもしているので藪パンプ。それでも落ちることなく、息も絶え絶え進み、次第に傾斜がゆるくなり、木の枝が笹に代わりついに登山道に到着?v(≧▽≦)v喜びをかみしめつつの休憩。

あとは20分で山頂往復し下山。コースタイムよりは早く下れたが、途中で日没。ヘッデン下山となった。18時30分位に登山口についた・・・が、今回ここにあるのはマウンテンバイクである。これで車を回収しないと山行は終わったとは言えない。自分はてっきり1人が行き、1人が待つものだと思っていた。しかし中和さんから驚きの提案!マウンテンバイクのザック背負っての2人乗りである。中和さんがお腹にザックを背負ってサドルに座り、自分がザック背負って後輪に立つ。そして中和さんがこぐ!登りはさすがに歩くが林道は下りが多かったため速かった。そして怖かった。。。途中の商店で中和さんが空身で車を回収に行ってくれたため、無事車を回収することができた。最初から最後までありがとうございました。

ヨセミテ エルキャピタン ザ・ノーズ

2018年9月15日~26日
河合(記)、他1名

憧れのルートに挑戦してきました。

挑戦にあたり、多くのウェブ上の記録を参考にさせて頂きました。次に挑戦する方の参考になるよう、なるべく詳細な記録を本音とともに残すことで、お礼とさせていただきます。

なお、記録に記したピッチ数は多くの方が持っているスーパートポのYOSEMITE BIG WALLs Third Edition 2011をベースにしていますが、グレードは、より自分の感覚に近い、ヨセミテビッグウォールズドットコムのYOSEMITE BIG WALLS The Complete Guide 2014(現地で入手した)を記しています。

【きっかけ】
クライミングを始めた時から、エルキャピタンを登ることは夢であり、目標だった。そろそろ練習して挑戦したいと思っていたのが昨年10月。でもパートナーは会内では見つからず。そんなある日、カサメリ沢のトップガンをトライしていた時、同じ思いを持った今回の山行のパートナー、櫻田さんに出会った。
櫻田さんは私より遥かに山の経験が豊か。何度か組むうち、この人となら行ける!と思い、頑張ってみることにした。

【練習】
問題は、私も櫻田さんも、ビッグウォール技術はほとんど持ち合わせていないことだった。日本語の技術本もない。そこで、スーパートポのHow to Big Wall Climbを解読することから開始。近くの公園で人生初のユマールをしてみたり、エルキャプ南東壁ゾディアック経験者の向畑会長に、二子山でセルフロアーダウンを教えてもらったり、ノーズ経験者のTさんに話伺ったり。本格的な練習は4月から開始。
平行して、今まで真面目に取り組んでこなかったクラックに取り組んだ。既に11月に入っていて瑞牆山や小川山はシーズンオフだったので、湯川、城ヶ崎に通って練習。クラックが奥深面白過ぎて、途中からクラック登ること自体が目的になっていた気が・・・
4月に入ってから月2回ペースでシステム練習などを開始。阿寺で荷上げ・ユマール、湯川でエイド・フォローのクリーニング、日和田でトラバースのフォロー・振り子・セルフロアーダウン等を練習。真夏灼熱の阿寺で熱中症寸前になりながら、計量ミスって50kg近い荷物を上げたのは忘れない。
5月に入ってからは平行して、瑞牆山のマルチに通って、マルチ筋トレ。調和の幻想、錦秋カナトコ、山河微笑、ベルジュエール、蒼天攀路、大面岩左稜線などメジャールート(一部違う?)を登った。
そんな感じで準備を進めていたけれど、8月上旬の例会時の居酒屋でノロウィルスの集団食中毒を食らい激痩せ、今まで作ってきた体力がゼロに戻ってしまう。その後1月で何とか体調を戻したけど、追い込みできなかった結果はエルキャプの2日目以降のバテバテで露呈。

【準備】
食料は、行動食のクリフバーを除き、アルファ米など大体日本から持参。1日1,500kcal計算で4日分持ち上げたが、実際は1日1,000kcalも摂れず。クリフバーは死んでいる胃が受け付けず、行動食食べる暇もほとんどなし、昼間のカロリーはほとんど溶かしたポカリスエット粉位。カロリーよりも喉通りを重視すべきで、ジュースとかゼリー飲料が欲しかった。なお、火器はジェットボイル一式を持ち上げた。疲れた体に暖かいスープはしみたので、あってよかった。
水は1人2.5l×2人×4日+予備2.3lで、22.3l持ち上げた。途中0.5l落とし、5.3l余ったので、大体1日2l消費。下山や、渋滞でもう1泊増えるリスクを考えれば、適量だった。
ペットボトルは日本製がアメリカで調達するより丈夫なようなので、丈夫そうな2lペットボトルを選んでダクトテープを巻いて持参。ホールバックは、リリースロープ17m位でもトラバースピッチで容赦なくぶっ飛んでいきましたが、全く漏れず問題なし。
ホールバックは多分36kg位。私の体重(51kg)では2日目までスペースホーリング、でも最後はボディーホーリング。ビッグウォールは荷物もガチャも重いので、体格良い方が有利と感じた。なお、ノーズで出会ったクライマーで私は最もチビだった。

【作戦】
櫻田さんは登攀スピード速くて外人に引けを取らず手足長いリーチ魔人、体重も河合より重い。河合は多少クラック慣れしている、ということで、お互いの長所を活かすべく3泊4日で以下の作戦を立てた。
Fix:C2など難し目のエイドピッチが連続するので河合メインでSickle Ledgeまで
1日目:荷物が重くスピード重視なので、櫻田さんメインでDolt Towerまで
2日目:King Swingは河合がやりたかったので、河合メインでCamp4まで
3日目:櫻田さんメインでCampⅥまで。エイドの難しいGlowering Spotは河合
4日目:Changing Cornersは河合、後は元気な方がリード

9/15 羽田→サンフランシスコ→ミッドパインズ
荷物は2人合わせて80kg超える。初日はミッドパインズのドミトリーまで。出国手続きで2時間半待たされ、空港を脱出したら午後4時。運転は櫻田さんに終始任せっきり。すみません。右側通行怖い。

9/16 Camp4
朝3時に起きてCamp4へ。人生初のヨセミテ、わーい!キオスク前には既にシュラフにくるまった人々の姿。我々は9・10番目で、今日は51人オッケーだから、問題なしだ。

シュラフの列

夜が明けると絶景が広がる。言葉にならない。受付は8時からで、係が1人しかいないので全然列が進まない。係のおばさんが気を利かせてくれて、日本人のKさん一行の張っているテントサイトNo.29にしてくれた。なお、テントサイトの確保は1週間までしかできず、延長の場合は前々日~前日に手続の必要あり。結局我々はノーズアタックで手続できず、最後は追い出された。
残りの時間は、世界で一番有名なボルダー課題、Midnight LightingV8/V9を触ってみたり(もちろん登れず、ライトニングホールドまでも行けなかった)、エルキャプメドウで、ノーズのサイズ感に圧倒されたり、ノーズの取り付きを確認したり、ノーズ後にやろうと思っていたSeparate Reality 5.11dの取り付きを確認したり(結局登る元気なかった。ミーハーですね)、ガチャの整理をしたり、日本に忘れたガチャを買い足したり(ヨセミテ内は日本と値段あまり変わらない。つまり、安くない)。

ミッドナイトライトニング。登られ過ぎて石灰岩のようにツルツル

9/17 0~4p目Fix
朝8時50分に0ピッチ目となるPine LineからFix開始。荷上げも同時に行った。

0ピッチ目:Pine Line 5.7 or C1(リード:河合)
荷物の引っかかりを考えて、0ピッチ目は引っかかりの少ないPine Lineを使用。時間短縮のためA0。以降、フリーで登ったピッチは1つもなし。20m位にある松の木でピッチを切った。

出発進行!

1ピッチ目:5.11d or C2(リード:河合)
松の木の右側に荷物を回してから、1ピッチ目開始。本来の取り付きより15m位低いようで、ボルトとカムを併用しつつ本来の取り付きへ。Pine Lineからだと、Not recommendedの5.11aのラインの方が自然になるが、トポ通り5.11dのラインに入る。ボルト直後のピトンスカーにカムを決めたら吹っ飛び、早速フォールしてしまった。ピトンスカーには今後もずっと悩まされることになる。途中、60mロープでも終了点まで足りなくなりそうなことが判明したのでカムを残置して振り子し、5.11aのラインの途中にある正規でない終了点へ(トポには出てない)。最初から5.11aのライン選べばロープ足りたかも。そんなに悪いようにも見えないのだけど。荷上げはズリズリ重いけど練習の甲斐あってかスムーズ。1パーティ、5.11aのラインを来た軽量パーティに抜かれる。2ピッチ目:5.11d or C2(リード:河合)
7m位登って正規1ピッチ目の終了点にクリップし、ロアーダウンして残置カムを回収し登り返す。初めての振り子トラバースが出現、壁を走る。爽快だ!

手前のテラスが本来の1ピッチ目終了点

3ピッチ目:5.10c or C2(リード:櫻田)
櫻田さん初リード。ピトンスカーとボルトのミックス。中間部でフォール!やっぱりピトンスカーで抜けたらしい。4ピッチ目:5.11c or C2(リード:櫻田→河合)
最初7m位のボルト、C2のセクションが出てきて、何もプロテクションを受け付けない。櫻田さんギブアップでリードチェンジ。浅効きハイブリッドエイリアンに乗り込んでみたけど角度変わったら抜けそうで怖かったので、手前に良いプロテクションを固め取りしてフリー(5.9)でランナウト突破。その後は振り子が連続するも、1つ振ってからが悪く、赤い次の残置スリングに手が届かない。エイリアンを決めてアブミに乗り込んだら吹っ飛んで振り子バック、肘を擦りむいた。ここも結局魂のフリーで突破。その後はロープをフレークに食われないよう捌きながら、Sickle Ledgeに15:40到着。大分時間かかってしまった。こんなスピードで大丈夫か、不安が募る。  その後60mを2本Fixし、最後はなぜかあった固定ロープを懸垂して取り付きへ。Fix用に担ぎ上げたロープ4本のうち、50mシングルは不要となった。

9/18 レスト、観光
当初はFixの翌日突っ込む案もあったけど、疲れたのと、天気予報上はずっと晴れだったので、この日はグレイシャーポイントへ行き1日観光。櫻田さんからミッドナイトライトニング禁止令が出るも、それどころではない。

9/19 DAY1。5~14p、15p目Texas Flake Fix、El Cap Tower泊
勝負の1日目。この日、日没までにDolt Towerまで行けなかったら敗退と決め、午前3時起床、4:40にワンデイを狙う先行のチリ人パーティ(ガイドと15歳の子供!Fix時に会ってロープを共用している。先行することも打ち合わせ済。もっと早く出ると聞いていたけど、外人の時間はあてにならない)が先行したのを見送ってユマール開始。Sickle Ledgeで泊まっていたガイドパーティ(後で追いつかれ、疫病神となるとは、この時知る由もなかった)に「明日また来いよ」と言われるも当然シカトし、5:55登攀開始!

5、6ピッチ目:Ⅳ、5.9 or C1(リード:櫻田)
トポ上の5、6ピッチ目をリンクするようにFixロープが垂れていた。自分達のロープと交錯しそうだったこともあり、ユマールでセルフを取りつつ櫻田さんリード。さくっとリンク成功。Fixロープが邪魔だったとのこと。

疫病神のポータレッジを越える

7ピッチ目:5.12a or C1(リード:櫻田)
7m位登ってから残置を使ってトラバース、振り子3回であっという間にStoveleg Crackへ入り、一気に後続パーティを突き放す。ナイスクライミング!恐らくStoveleg一番下の終了点でピッチを切る。河合は初の本番セルフロアーダウンでロープが引っかかって戻ることに。トホホ。以降セルフロアーダウンではほとんど捨て縄をする必要がなかった。(結局トータルで3mmスリングを2本捨てたのみ)8ピッチ目:5.9 or C1(リード:櫻田)【Stoveleg Crack下部】
トポにはハンドと書いてあるけどフィストだよ!9ピッチ目:5.9 or C1(リード:櫻田)【Stoveleg Crack上部】
ワイド部分が出てきて、櫻田さんが奮闘している。隣のクラックを男女パーティが登ってきたが、ルート間違えたらしく戻っていった。(後で抜かされるケリーパーティ)10、11ピッチ目:5.10c or C1(リード:櫻田)
櫻田さんがまた怒涛のリンクで、Dolt Towerまで行ってしまった。すげぇ。ロープが足りなくなって、メインロープ解いてスペースホーリングしていると言う。危ないから勘弁して下さい。さすがにバテたそうで、ホーリング途中から河合と交代。13:20位にホーリング完了。順調だ!12ピッチ目:5.8 or C1(リード:河合)
まずはロアーダウンしてから、スクイーズチムニーを登り返す。アブミは出さずA0とフリーでスピードアップ。櫻田さんは残置スリングにスリングを2つ折りしてセルフロアーダウン省略を試みるも、うっかりタイオフになってしまい120cmスリングを残置することに。セルフロアーダウンでは、アンダーフレークにロープ食われやすいとのことで、要注意(現地で会った慶應大の学生情報)。13ピッチ目:5.9 or C1(リード:河合)
トポにはフィストと書いてあるけどスカスカだよ!A0バッククリーン祭り。14ピッチ目:5.7 or C1(リード:河合)
簡単なフェースと少しクラック。問題なし。15:50 El Cap Tower到着。順調!でも飛ばしすぎたせいか、かなり疲れた。 El Cap Towerにはドイツ人2名パーティが。荷物がやたらデカい。聞けば今日はDolt Towerからここまでしか進めなかったとか。これは先行されるとヤバイなぁ。Texas FlakeへのFixを試みていたが、最後のワイドチムニーがどうしても突破できず、暫くしたら憔悴し切って戻ってきた。そこで、「Fixしてあげるから、明日先行させろ」と交換条件を持ち掛ける。渡りに船だったようで、あっさり交渉成立。途中のボルトまではFixしてきたので使ってよいと言う。時間が遅くなってきたので急いでFixすべく、Fixラインの使用を妥協することにする。

15ピッチ目:5.9(リード:河合)【Texas Flake】
エイドの効かないチムニーピッチだ。本当は手足の長くてチムニーの上手な櫻田さんにお願いしたかったけど、今日の獅子奮迅の登りで屍状態だったので、河合がリード。途中まではユマールとミックス。出だしは簡単なクラック、まずはTexas Flakeに入るまでが大変。残置あり。ユマールではろくに進めないので結局半分フリーで突破。フレーク内も狭くてユマールし辛いので、結局フリー交えて中間部のボルトまで。さて、ここから核心、恐怖の「広がるチムニー」だ。アブミをボルトに残置して高度を稼ぎ、背中を壁側、う○こ座り体制へ。試しにツルツルしている所に足を置いたらズルっといきかけたので、ざらざらしている所を選んで足を効かせて登っていく。怖いけど落ち着いていけば難しくはなく、あっさりてっぺんへ。でも落ちられないクライミングなので、思わず叫んじまった。Fo!

テキサスフレークに吸い込まれるロープ

日没直前にケリーパーティが追い付いてきて、結局El Cap Towerは6人泊となったが、それでも余裕だった。さすがの広さだ。でも小便臭い。あぁ、スプライト飲みたい。以降毎日、スプライトのことばかりが頭に浮かぶ。
例のドイツ人パーティに、「キングスウィングも出来ないからFixしてくれ」と頼まれるも、ペース合わない気がしたので、曖昧に返事を濁す。結局ケリーパーティがFixしてあげたらしい。出来ないって分かっていながら、何で来たのだろうか。フリーラインから行けばいいのに。

エルキャプタワーにて。なぜか正座。

9/20 DAY2。 16~20p Camp 4泊
5:30行動開始。まずは荷上げロープをフレークの外に回そうと試みるも、櫻田さんの介助なしには無理だった。ユマールの櫻田さんも苦戦していて、荷物はフレーク下部残置の引っ張り上げで突破してきた。でも、腰に付けていた500mlの水を落としてしまったそうな。

16ピッチ目:C1+(リード:河合)【Boot Flake】
まずはボルトラダー。徐々に間隔が遠くなる。ブーツフレークに入る最初のピトンスカーにナッツを決めたらぶっ飛んで、さかさまフォールしてしまった。げんなり。エイリアンはしっかり決まった。その後もプロテクションはいまいちで緊張していたら、残置の後でやっと快適なハンドになった。ケリーパーティもドイツ人パーティのFix使って登ってきたらしく、すぐ追いつかれた。17ピッチ目:5.10b or C1(リード:河合)【King Swing】
遂にKing Swingだ!事前の慶應の学生情報を元に、右側の支点から振ってみるも、うっかり右寄り過ぎて全然届かず、すぐユマールバック。疲れた。次に、左端のボルト2つの終了点のうち右側を使って振ってみるも、中々届かない。一回惜しくて体制崩した時に、腰を強打してしまった。痛ぇ。結局ロープがフレーク左側に移行し、回転半径が小さくなり、左端ボルト使っているのと同じになってしまった。その状態で振って辛うじてキャッチ。30分位は格闘しただろうか。トポでは20 feetブーツフレークの下と書いてあったが、私はさらに降りてブーツフレークから数えて3つ目のボルトに足が来る位で振った。降り過ぎたかなと思ったが、後で追いつかれるガイド曰く、3つ目のボルトが胸元位だといいらしいとのことで、よくわからない。

ブーツフレークを見下ろす

Eagle Ledgeにセルフを取り、♯0.2~♯4カム1セット、水、ホールラインを送ってもらい、絶対に落ちられないC1を超慎重にこなして、終了点へ。あぁ、めっちゃ疲れた。
櫻田さんはセルフロアーダウンでトラブルあるも、何とか通過してきたのでよかった。

18ピッチ目:5.10b or C1(リード:河合)
ブーツフレークとキングスイングであまりに疲れたのでリード交代を打診するも、櫻田さんも体調不良だったので、引き続き河合リード。イモ虫ペースとなる。出だしのフレークは取れそうで怖い。しかも途中でハンドジャムをきめようとしたら横にいたミツバチに右手親指を刺される。文字通り泣きっ面にハチで、泣きながら終了点へ。指痛ぇ。Camp4で櫻田さんに虫刺されの塗り薬を恵んでもらう。助かった。19ピッチ目前半:5.10d or C1(リード:河合)
フリーラインのリン・ヒルトラバースは、A0でも5.10dのフリーを要求されるので、オリジナルラインへ。ケリーパーティがフリーラインで追い越しをかけてきた。ケリーパーティがいたので、正規19ピッチ目手前の終了点でピッチを切る。ユマールの櫻田さんは、最後、登り切った振り子支点から、河合ビレイのロアーダウンでフォローしてきた。ナイスアイディア!19ピッチ目後半:5.7(リード:櫻田)
ここで長らく順番待ち。なんとドイツ人パーティが、全てケリーパーティにFixしてもらって追い越しをかけてきた。げんなり。河合は完全に終わってしまったので、リードチェンジ。落ちられない5.7の下降をこなし、正規19ピッチ目終了点へ。岩もルースだし、これはフォローも怖いよ~ユマールじゃなくて、フォロー確保の方が安全かも。20ピッチ目:5.11a or C1(リード:櫻田)
クラックに入るまでが悪いようで、櫻田さんが極小カチを保持している。その後、薄いフレークにカムを決めて乗り込んたら、フレークごと吹っ飛んでフォール。この周辺は岩が安定していなくて浮石もあり、要注意だ。このフォールで櫻田さん携帯の液晶にヒビが入ってしまった模様。Camp4に16:30頃到着。今日はこれ以上進む体力も時間もないので、Camp4泊を決断する。 次のピッチをFixしようとしたら、ガイドパーティが来てがちゃがちゃポーターレッジ設置などを始め、交錯するのでFix不能となる。しかも「お前らを見てたが、遅い。明日俺より先行して遅かったらぶち切れるから、先に行かせろ、朝6時には俺らは出発する」と脅してきた。遅かったのは事実だし、壁でのトラブルは面倒なので、おとなしく従うことにする。この判断が翌日以降に大きく影響することとなる。先行を了承したら途端に機嫌がよくなったので、暇つぶしに色々情報をもらう。
元Yosemite Search and Rescueの人で、「El Capで最も良いルートは?」「そりゃMescalitoさ!でもShieldもいいな。Salatheも素晴らしいぜ」。ガイド料金は6000ドルだそうな。(客は全ピッチユマールだけで荷上げなし。練習は2日間。クライマー感覚だと、そこまでして登りたいのかなという感じ。)ホールバック2つとポータレッジをボディーホーリングで上げていた。クレイジーだ。
寝床は斜めでずり落ちてきて寝心地悪かった。しかも漏れなく小便臭い。朝、櫻田さんの手が滑り河合の寝袋がグランドフォール。ダウン上下とシュラフカバー、河合の使ってないダウンがあったので問題はなかったが、転がり落ちていった瞬間は目に焼き付いて離れない。後日探しに行ったけど見つからなかった。ガイドに「敗退したら?」と煽られるも、笑顔で拒否。

キャンプ4

9/21 DAY3。 21~24p、25p目Glowing Spot Fix、Camp5泊
ガイドパーティが中々出発しない。お前ら6時に出発すると言ったよな!何で6時に起床なんだよ!結局7:50にやっとこ出発、我々がスタートしたのは8:40となった。まったく冗談じゃないぞ!

21ピッチ目:5.9+ or C1(リード:櫻田)
一箇所トラバースあるも、概ね易しそう。櫻田さんも先の件でブチ切れ、猛烈な勢いで登ってガイドに目に見える圧力をかける。ガイドに「お前は早いな」と言わせたそうな。さすがっす。22ピッチ目:5.13d or C2F(リード:櫻田)【Great Roof】
Great Roofだ!当然ガイドパーティが詰まっており無限待ち。リードのガイドも別に早くないじゃないか。櫻田さんはテンション高めで好調のようだ。すいすい登っていく。ユマールしようと思ったらワンデイパーティが追い越しをかけてきて、また40分位待たされる。うぅ、進まない。フォローはガンガン音楽かけている。音楽は軽量化には含まないってことか。聞けば、15回目のノーズで、うち12回はワンデイだそうな。
Great Roof自体は残置が豊富で、抜け口のカム決める所以外問題なさそうな感じ。ユマールの私はセルフロアーダウン2回と若干のエイドトラバースとなった。23ピッチ目:5.11c or C1+(リード:櫻田)【Pancake Flake】
Pancake Flakeだ!でもエイドでガシガシ。フレーク終わってからのC1+のセクションで櫻田さんのスピードがぐっと落ちる。悪いみたいだ。うっかり櫻田さんのホーリング準備完了前に、ホーリングラインのテンション来たのでホールバックのリリースをしてしまった。すんません。強風でビレイヤーはロープを飛ばされないよう必死でマネジメント。24ピッチ目:5.11a or C1+(リード:櫻田)
出だしのクラックが奥まっていて大変そうだ。途中で左に移り、Camp5まで。でも、ホールバックが途中までしか上がらない!仕方なく一度降ろして仕切りなおす。リードロープとホールラインが見えない位置で交錯していて、何とかしたが時間食う。後ろから素早い陽気な3人パーティに追いつかれかける。櫻田さん最後に60cmスリング落とす。ほんとお疲れ様でした。

ピンボケ!

25ピッチ目:5.12d or C2(リード:河合)【Glowering Spot】
上にいるガイドのクライアント情報では、既に4人いて、満杯らしい。(後で追いついて聞けば、ガイドパーティの2人しかいなかったとのこと。嘘じゃねーか怒。)ということでCampⅤ泊まりとし、後続パーティへの先行意志を示すため、上側のGlowering Spotの取付で河合、その下で櫻田さんが寝ることにし、Glowering SpotのFixをやってしまうことにする。
Glowering Spotは俺に任せろ!ということで河合出撃。悪いと噂で聞いていたので緊張。ところどころ残置のナッツがあるが、基本はピトンスカーにオフセットナッツやマイクロカムを決める作業が永遠と続く。今回自分がリードしたピッチの中で、最も嫌らしいピッチだった。右側のクラックに移ってからは楽になった。ぎりぎりヘッデン残業を回避しFix完了。 Glowering Spot取り付きの寝心地は悪く、何度も落ちそうになったが意外と寝られた。職場のデスクやら床やらカビ臭い書庫やら、ブラックかつ劣悪な環境で寝泊まりしていた経験が思わぬ所で役に立つ。
夜中は、陽気な3人パーティが下界のファンキーな人たちとFo!と鳴き交わしていた。ホエザルかと。私も混じって吠えていたので同類か。Fo!!

9/22 DAY4。 26~31p、ヨセミテ滝経由で下山
今日はヘッデン残業してでも、何が何でも山頂に抜ける計画だ。気合が入る。

26ピッチ目:5.11b or C1(リード:河合)
5:20スタート。Glowering Spot終了点からボディーホーリングしてから、長いエイドのピッチ。コーナークラックでリーチが稼ぎ辛い。幅が広くなってからはフリーを交えつつ、終了点のキャンプⅥへ。今回の疫病神のガイドパーティがChanging Cornersをノロノロとリードしていて、1時間以上待たされる。キャンプⅥ付近は特に小便臭い。多分ジャミング決めているクラックも小便まみれと思われる。おぇ~27ピッチ目:5.14a or C2(リード:河合)【Changing Corners】
恐らく最後の核心となる、Changing Cornersだ。絶対抜けるとの固い意志で臨む。最初は長いC1セクション、その後ボルト3つをスリング掴んで登り、件のコーナーに入る。出だしはナッツ効かずオフセットエイリアン極小、次にナッツ♯3、さらにオフセットナッツ♯3辺りを順に決めて、残置を掴む。コーナーに入るエッジが立っていて、ロープ切断が怖いので落ちたくないところ。C1セクションに入ってカムを決めてからバッククリーンしていたら、指がコーナーと挟まって流血してしまった。なお、コーナーのロープ擦れるところはダクトテープが一応貼ってある。その後終わらないC1をこなして終了点へ。とても長いピッチで、リードに1時間半以上かかった。ユマール時にもロープが痛まないよう、コーナーチェンジの所のロープの流れには要注意だ。

コーナーチェンジの直前

28ピッチ目:5.10d or C1(リード:櫻田)
Changing Cornersで絞り出して憔悴していたらしく、櫻田さんがリードを交代してくれるという。頼りにしてます。左右クラックどちらでも登れそうで、櫻田さんは直上を選択。さくさく進むけど、早く1ピン目クリップして下さい(泣(忘れていたそうな)。

終了点直前

29ピッチ目:5.10d or C2F(リード:櫻田)
まだいけるというので、櫻田さんにもう1ピッチお願いする。ほんと頼りにしてます。C2Fとなっていたが、櫻田さん曰くあっさり抜けられたそうだ。でも、ホールラインとメインロープが交錯してしまい、また荷上げを途中で止めてもらうことになった。Wild Stanceまで。×印のあるデカい岩があったので触らないよう注意。

ワイルドスタンスから見下ろす

30ピッチ目:5.10c or C1(リード:河合)
河合が復活してきたのでリードチェンジ。もう終わりは見えている。櫻田さんは既にグシュグシュしている。頂上はまだっすよ?
御褒美の超快適な5.10cの短いクラックを登って、さあ終了点と思ったら、「ないじゃねーか!」トポに記された終了点が見当たらず、櫻田さん得意の外人サイズのボルトラダーをチビの河合が頑張ることに。ろくにヌンチャク持ってきておらずランナウト、何とか最後の右巻き手前の終了点に辿り着く。

ご褒美クラック。超快適。

31ピッチ目:5.5(リード:櫻田)
フォローの櫻田さんが呻いている。なんでも、ハングのユマールでハーネスと肉が挟まって激痛で発狂しそうだったとか。落ち着いてから、フィニッシュは櫻田さんにきめてもらう。
右からハングを巻いて登っていったがいつまで経っても声が聞こえない。ロープが上がり始めたので、どうやら着いたようだ。ここで問題発生。①メインロープとホールラインがまた交錯。②1ピン目に河合のリーチでは届かないが、ロープ巻きあげ切っており、セルフロアーダウンできない。①はメインロープをほどき、②は60cmスリングを捨てることで解決した。最後まで油断できない。 岩の上にある終了点を過ぎると、夢にまで見た終了点の松の木と櫻田さんが見えた。でも、足元のフレークでロープがスタックする。仕方ないのでロープやアブミを巻いて被って進む。土の上に足が乗った瞬間、視界がぼやけた。松の木にタッチした。泣いた。櫻田さんと抱擁。櫻田さんも泣いている。何度も無理かも、と思ったけど、諦めないで頑張ってきてよかった。
16:51、ザ・ノーズ完登。

ロープゾンビ出現
例の松の木にて

落ち着いてから記念撮影、17:40下降開始。指がボロボロで痛い。時間が遅いのでイーストレッジは却下、明るいうちにヨセミテ滝トレイルへ合流すべく、El Capitan山頂を目指す。

ホールバック重い!泣きそう

その後は明瞭なトレイルを、途中夕食摂ったり、水汲んだりしながら、櫻田さんのGPSナビゲーションで23:10 Camp4帰着。借り物ホールバックのショルダーがブチ切れたり、足元がツルツルで滑ったりで、とても疲れた。リンゴ食べて爆睡。

9/23 レスト
朝起きて、予備で持っていた50ドル札を握りしめ、朝食を食べに向かう。途中で横浜から来た日本人パーティに出会い、情報交換。同じくノーズを狙っているそうな。ご好意で車回収の車を出してもらった。ヨレヨレだったので助かった。代わりに知りうる限りのノーズ情報をお渡しする。うまくいっているといいなぁ。
朝食で念願のスプライトをガブ飲みしていると、一足先にゴールしていたケリーパーティと再会!なんでも、最後までドイツパーティのFixをさせられたそうな。お疲れ様でした。El Cap ReportのTom Evansが明日来るから写真もらえるよと教えてもらう。
その後はギアの整理。河合のヌンチャク2つ、ナッツ4つ消失していて、なぜかオフセットカム1つ、カラビナ2枚増えていた。どこで落としてどこで増えたのだろうか、謎だ。河合はトポも1枚落としていた。

ギアの皆さん、お疲れ様でした

エルキャプメドウに記念写真も撮りに行った。出発前に見たよりエルキャピタンが低く感じた。今日もノーズにはたくさんのパーティが取り付いている。他の得体のしれないルートにも点々と。
その後ノーズ取り付きに寝袋を探しに行ったが、見つからなかった。さらば私の♯5よ、永遠に。Camp4の延長はできなかったので、ベッドで寝たいとの櫻田さんの希望を叶えるべく、空きのあったHouse Keepingに移動。シャワーを浴びて、ビールで乾杯!

9/24 Cookie Cliff、Church Bowl Treeフリー
この日は、朝Tom Evansを訪ねた。黄色いダウンパーカー着ていて、パソコン出しているのですぐわかった。「お前らは派手な服着ていて進みがゆっくりだったので、写真撮り易かったぜ」と褒められるも、素直に喜んではいけない気がした。ルートの話も色々教わり、写真をSDカードに入れてもらい、1人20ドルを支払う。苦労を考えれば安いもんだ!
その後は現地で知り合った日本人のIさんとショートピッチで遊ぶことに。
まずはCookie Cliffに向かい、Pringles 5.11a(ボルトルート)をトライ。取付が山火事の後で灰だらけだ。Iさんにヌンチャクかけてもらったけど、ボルト遠くて悪くて恐怖。5.11c位に感じた。足指痛くて、2便出せず、RPもできず。

Pringles5.11a。激辛。外人サイズか

その後Cookie Monster 5.12aやOuter Limits 5.10cを見学するもやる気力なし、お気軽エリアのChurch Bowlに移動。
Churh Bowl Lieback 5.8、Church Bowl Tree 5.10bをフラッシュした所で力尽きた。

Churh Bowl Lieback5.8。快適。
Church Bowl Tree 5.10b。渋い。

足指痛い、手指も痛い。Church Bowl Treeはまたピトンスカーでプロテクションセットが悪かった。

9/25 ヨセミテ→サンフランシスコ→飛行機
早朝にヨセミテを出発し、サンフランシスコまで。4時間ちょっとで着いた。

9/26 帰国
帰りの飛行機で喉腫らした。明らかに過労だ。

【総括】
今回、一部他パーティのFixを使うなど、完璧なスタイルではないですが、無事The Noseを3泊4日で完登することができました。スタイルについては残置の使用、初日のFixなど、言い出したらきりがないですが、自分達の実力、現場の混雑を鑑みてこれが限界でした。
反省点はたくさんあり、次の機会があればもっとうまくやれるんじゃないかと思います。でも、正直、しばらくビッグウォールは勘弁願いたいところ。次はフリークライミングを楽しみに、ヨセミテにまた行きたいな!

私が感じた、ノーズを登るのに必要なもの
・フリークライミング力より、体力!
(荷上げ、重いガチャ、長い日数。冬山を登る体力に近いかもしれない。)
・トラブルに動じない落ち着いた心と、対処の引き出し
(大体想定外のことが起きるので、落ち着いて対処しましょう。)
・そして何より、思いを同じくする、グッドパートナー!
(櫻田さん、一緒に頑張っていただき、本当にありがとうございました。)

日本や現地で御世話になった皆様、どうもありがとうございました。現地では特に慶應大学の皆様や、サイト29を共有した皆様にとてもお世話になりました。Iさんも、フリー付き合ってくれてありがとう。

もしノーズに挑戦したいと思っていて、技術やルート情報など諸々、疑問に思われることがありましたら、当ホームページの連絡先から、遠慮なく河合までお問合せください。私自身も経験者からアドバイスを頂きました。同様に夢を追いかける皆様のお力になれればと思っています。今後トライされる皆様の幸運を祈ります。

【おまけ1、道具リスト】
・カム:♯00~♯4 ×3、♯5×1、オフセット小さい方から1セット(4つ)
・ナッツ:オフセット、ノーマル 各極小~大まで1セットずつ+ブラスナッツ1セット
・ロープ:60mシングル、60mセミスタティック、60mハーフ(リリース兼予備)
・ジャミングプーリー×4
・クイックドロー×20
・ホールバック120lスイベル付き
・サブザック25l
・その他カラビナたくさん、グリグリなどロックデバイス、チューブデバイス、ユマール、エイダー、デイジーチェーン、スリング、捨て縄等。持って行き過ぎた気が。

【おまけ2、ヨセミテの図々しい輩たち】

リス
アライグマ

前穂高岳 北壁Aルート

2018年9月22日~24日
赤井、谷水(記)

穂高山頂につきあげるアルパインルートに行きたい。前穂ならば奥又白池をベースにできる。赤井さんがつきあってくれるということで、今回決行することができた。前々日まで23日が雨予報だったため、転身も考えていたが、前日になり晴れ予報になったのでとりあえず池まで行ってみよう、ということで金曜夜に出発!
「氷壁」の舞台ということを後から知ったが、結局まだ読んでいない・・・。

1日目:上高地バスターミナル(9:30)―徳澤園(11:00-11:15)―奥又白池(14:20)
2日目:奥又白池(4:00)―北壁取付(7:30)―前穂山頂(12:00-1230)―奥又白池(16:30)
3日目:奥又白池(7:00)-徳澤園(8:10)-上高地バスターミナル(10:30)

1日目(雨のち晴)
沢渡バス停前駐車場でテント泊。予報通りだが朝から雨が降っている。テンション下がる中、7:30頃係の人から「テント撤収してくださ~い」とゆるく注意を受ける。仕方ないので出発準備し上高地へ。雨で大正池も梓川も茶色い。しかし人は多い。さすが上高地と思いつつ足早に徳澤園へ向かう。途中で雨があがりテンションもあがる。池への急登にそなえて徳澤園で休憩していると、カラスが他パーティのザックの上にのせられていたパンをパッと捕って木の上へ・・・。サルにもカラスにも気を付けてください。
奥又白池へは松高ルンゼの右側の尾根上の道沿いをひたすら登る。上高地はまだ夏の雰囲気があったが、池の周りは紅葉していてとてもきれい。ただ、連日の雨のため池も増水していたのか、左回りの道は水没しており、右回りの道を通ってテント場へ。その日は全部で5テント張られた。水場の沢も増水していてテント場から下ることなく汲めたのは楽だった。
星も月もバッチリ見られたことで、明日の晴れが期待できた。ワクワクしながら就寝。

2日目(快晴)
朝はヘッデン出発。遭難碑の先にケルンがあり、その右手に踏み跡があるのでそこからA沢に下っていく。B沢を横切りC沢へ。トラバースの途中で夜が明ける。とても綺麗なモルゲンロートだった。ガレガレすぎてゆっくり見ている余裕はなかった。7月なら雪渓があり多少楽なのかもしれない。C沢に入ると大分ガレ場も安定したように感じた。落石に注意しつつ詰めていく。途中で4峰へ行く踏み跡と本峰東壁への踏み跡とトレースが分岐した。なおもC沢を詰めていく。C沢を詰め切ったところで左手のB沢に乗り換えると悪いB沢をほとんど歩くことなく北壁の取付きに着くことができた。ここでまさかの後続がいたので先に行ってもらった・・・が、思っていたよりゆっくりパーティで落石も多かったので先に行ければよかったと少し思う。

1P:赤井さんリード
松高カミンに向けてトラバース。難しくはないが絶対に落ちられない緊張感がある。
2P:谷水リード
松高カミンをすすむ。岩がもろい。ガバと思いつかむとゆれる、剥がれるのはこのルートのデフォでした。ピトンはベタ打ちされているのでものを選んですすむ。第一テラスで前のパーティがピッチきっていたのでその下で終了。
3P:赤井さんリード
第一テラスまで。
4P:谷水リード
前のパーティが進むのを待っている間に落石がザックにヒット!自分も赤井さんも1つづつもらってしまった。その衝撃で落ちるかと思った、怖いね!でもそれも楽しい\(>▽<)/気持ちを落ち着かせてすすむ。
5・6P:赤井さんリード
このピッチから日が当たるようになった。暑すぎず寒すぎずベストコンディション!!ガレてはいるが注意すれば落石が起きるとは思えないが・・・。6Pはビレイなし。
7P:谷水リード
ここからはAフェースに入り岩は固く、快適クライミング!凹状を左上するようにすすむ。前のパーティに追いついたところでピッチを切った。赤井さんの声は聞こえず笛でコミュニケーションをとった。
8P:赤井さんリード
前のパーティは左スラブを少しトラバースし上がっていたが、その先で難渋しているようで進んでいかない。直上もできるようだったので、赤井さんはそちらを進む。少しチムニーっぽいがフリクションばっちりだった。山頂直下でピッチを切っていただき最終ピッチは自分がやらせていただいた。

山頂直下、凹状終了後

山頂からは槍から焼岳から一望でき、なおかついろんなルートから来た人で混雑していた。ここで大休憩をとりロープをしまう。ガレたA沢を下るのでハーネスはそのまま。一山超えたが、A沢に入れるかが本日の本当の山場と言っても過言ではない。三本槍のコルを目指して12:30に山頂を後にする。
結果として、間違えた。3時間ほど前穂と明神の間の尾根をさまよった。前穂から1つ目のコル、ここが三本槍のコルと思ったが、「新版日本の岩場下」によるとそこから右手に行くと×というルートになる。正解としてはコルに下りきる前、穂高から明神へ下っていく左手に注意していると、それなりの大きさのケルンがある。近づくとケルンの中に赤布がはさまっている(見つけた時に嬉しすぎて写真撮り忘れ・・)。そこに辿り着ければ、踏み跡とガレ沢に降りれるので、迷うことはないと思う。
A沢のあまりのガレっぷりに60m懸垂を1回はさみカレ沢に踏みかえた。しかしカレ沢もガレており気が抜けない。徐々に奥又白池が近づくので頑張れる。

カレ沢の下山 – 写真中央に小さく奥又白池がある

予定より遅くなったが、日没前にテント場に戻ることができた。一度はビバークするかもしれないと本気で思っていたので、本当によかった。朝早く出るのは大事だった・・。

この夜ばかりは普段お酒を飲まない自分もお酒を飲みたくなった。持ってきてないので自分は味噌汁、赤井さんはビールで乾杯?
ありがとうございました(^O^)\

0.4~2を1セット持って行ったが、2は未使用。小さいほうが使えるように感じた。ピトンがベタ打ちされているが、持っていくと安心。

3日目(快晴)
朝日を見て、ゆっくり下山。晴れた河童橋には人がたくさん・・・。

天気にも恵まれ最高の山行となった。山頂にぬけるのは気持ちがいいので都立大ルートにも興味がわいた。4峰正面壁が一番メジャーらしいのでそちらもいつかお邪魔できたらと思う。北穂の滝谷や奥穂の南陵で山頂に行くのもいいし。休みが足りない。

瑞牆山 小ヤスリ岩 蒼天攀路

河合(記)

十一面岩の奥にひっそり聳える小ヤスリ岩。この岩を意識したのは、今年、ベルジュエールを登った時だった。明瞭な左右2つのカンテ、真ん中の美しいフェース、それぞれに合計3本の難ルートが拓かれているらしい。その中でも特に目を引くのは右のカンテ、蒼天攀路3p目。グレードは発表時5.12bで、最新のトポでは5.12aとされているようだ。アプローチが結構遠く、他にルートもほとんどないため、パートナー核心っぽい。少ない便数で登らないと厳しそうなので、来年トライしようと思ったけど、今年付き合ってくれるパートナーが見つかったので、行ってみることにしました。

8/17 day 1

玉置さんに付き合ってもらって初トライ。8時40分植樹祭駐車場出発。取付まで特に迷わず10時到着、10時40分出発。

1p目(5.10b、35m位):河合リード
最初は出だしにぺツルのある汚い泥ルンゼ。靴についた泥をぬぐいつつ、次は浅いコーナークラックを最初はボルト頼り、途中から大きなカムが頼りに登る。バランス悪い感じ。睡眠不足、かつ季節外れのノロウィルス食中毒からの病み上がりで体調は悪い。2回位足がつりかけたので、不意落ちしないよう慎重に登る。最後はびしょ濡れのコーナーを避けつつ終了点へ。終了点はぺツル、RCC、リングが混在。

出だし
コーナー。ぺツル2つ位あったはず

2p目(5.10a:20m位):河合リード
最初は少し被り気味のチムニー、途中から何とも不思議な三角形に変貌。チムニー内でグルンと1回転。後半三角形になってからは背中で体をスタックさせてイモムシ登りができるようになり、簡単になった。大き目のカムは1セットで十分。あまりオフウィズス登りにはならなかった。上から登っているクライマーを覗き込むと面白い。

チムニー下から
人間が挟まってる

3p目(5.12b:30m位):河合リード
さて、楽しい前菜は終了でメインディッシュだ。大分時間経ってしまって、13時45分スタート。出だしはクラックをレイバックで直上~左トラバースで最初から悪く、凄まじい高度感。調子も出ないし怖くて、1ボルト目はエイドでプレクリしてからスタートしてしまった。2ボルト目まではバランスが悪いけど何とか大丈夫、でも3ピン目がめちゃ遠そう、と言うより、そもそも見えない。カンテの反対側の大分上みたいだ…手前に発見したクラックに半開き♯0.5キャメを突っ込みテンション。あぁ、弱い…その後、恐怖しながら突破。どうやらここが最初の核心みたいだ。なお、♯5キャメは、残しておくとロープ流れ悪くなるので、結局外した。

ビレイ点を見下ろす
カンテを越えると美しいフェース

その後はしばらくマイルドで、美しいフェースをエンジョイ、と言いたいけど、ボルト間隔は遠いし、風強くて寒い。6ボルト目まで各駅で到着するも、7ボルト目が遠くて怖くてムーブが起こせない。核心直前の左フレークに伸び上がって片っ端からカムを突っ込むも全部外れ、その度にパンプしてフォール。玉置さんに持ってきてもらったアブミで核心ムーブ手前までのムーブを省略するも、核心ムーブできなきゃ進めないので結局ダメ。カムの選択肢が尽き、意を決して右足に乗り込んで突っ込んだら何とかムーブがこなせた。最初から恐れず突っ込めばよかった。
8ボルト目までのムーブも引き続き悪く、やはり足がポイントだった。久々にカンテも使った。かなり精魂絞り出す。
8ボルト目~9ボルト目間も結構遠い。ボルト少し上に♯0.3キャメが決めたけど、なくてもほとんど変わらない。意を決して右カンテのガバへランジしたら、取り損ねた!ぶっ飛びたくない一心で気合で耐えて、今度は左ガバへデッドしたら、何とか取れた。このシチュエーションでこのムーブか!

点々とボルト

最後はマントル返してから、傾斜の落ちた簡単なカンテ状を登って終了。トップアウトに1時間半もかかってしまったけれど、抜けられてよかった。

花唄小径(5.8:30m位):河合リード
蒼天攀路3p目は河合のみのトライ。玉置さんにも小ヤスリ岩のてっぺんに立ってもらうべく、蒼天攀路2p目終了点から右にトラバースし(ロープ付けないと危ない)、もう1本リード。でも、このルート、結構悪い。上のテラスから6キャメを決めるまでの緊張感が中々。蒼天攀路の1,2ピッチ目よりしんどい。足元は抜けかけたリングボルト1個で、微妙なムーブ。その後はマイルドになったけどランナウト気味で落ちられない系。

最後はノープロのフェース

再び小ヤスリ岩のてっぺんに着いたら、もう夕方になっていた。頂上も素晴らしい!景色を堪能してさっさと下山。下降は何とかオンサイトできたが、ヘッドライト下山になった。

てっぺんにて

8/26 day 2
一度は封印しようと思ったけど、時が経つほど悔しさは募り、1便目でおおよそのムーブはこなせていた(気がした)ので、今度は、Sさん(会員外)を誘って出撃。今度は1,2p目を省略して3p目までショートカット。植樹祭駐車場から85分かかった。小ヤスリのコルまで標高差550mを登る。

1便目
各駅ヌンチャクがけに徹する。やっぱり♯0.5キャメは使ってしまったが、今度は各核心セクション2回以内で、ばちっとムーブが決まる。これは行けるかも??

2便目
気合入れてトライしたら、最初のトラバースがこなせてしまった。レストポイントで呼吸を整えつつ6ボルト目以降の第2核心へ、と言いたいところだけど既にヨレヨレ。無我夢中で吠えて7ボルト目に到達し、必至でレストするもパンプが取れない。8ボルト目までの最後の核心ムーブがテンションムーブだったため再現できず、その場のアドリブで頑張るも後1足1手で無念のドカ落ち。その後のムーブも一発でこなせたので悔しい。さっさとトップアウト。

3便目。
Sさんは2撃であっさり登ってしまった。まずいっ、蒼天パートナー消失の危機!腕は2便目で頑張り過ぎて終わりかけていたけど、ビレイ含めて1時間空けて、気合で3トライ目。トラバースは危ういところで抜けるも、出だしからガタガタ。腕も回復せず、第2核心手前でヨレきってフォール。カチ筋が残っておらず、ムーブを確認して終了。時間切れでSさんの1,2p目トライもまた今度になり、辛うじてパートナー消失危機を脱する。

登れてないけど、あまりの爽快さにガッツポーズ!

9/9 day 3
前日に行こうとしたら、秋雨前線にやられて雨だったのでカサメリ沢モツランド。翌日に望みをかけて控えめに登ろうと決意してオリーブ5.11cをまったり流すも、たらこ5.11dが面白くてついムキになってカチ筋パンプ。
当日朝は駐車場びしょ濡れ、それでも風当たり強いので乾くと信じてSさんHさんと突撃。アプローチも荒れてて、うっかりシロクマのコルまで登り過ぎてしまった。
取付についたら意外と乾いていたので、まず濡れた花唄小径5.8をエイドで登る。核心はろくにエイド効かない上。落ちられないので緊張。5.10台あると思うのだけど。
頂上は猛烈な風。頂上から懸垂下降しながらヌンチャクがけと掃除。核心は濡れていた。

1便目
トラバースは自動化でスムーズにできたけど、その後保持できず3ボルト目クリップした直後、落ちてしまった。トップアウトせず戻る。

2便目
明らかに前日の腕パンプが残っているが、足は元気だ。ホールドは生暖かくてちょっとヌメる。これは足で耐えるしかないということで頑張ったら何とか登れた。

終了点にて。この時点で登れてないですけど

初トライの翌日、最新のトポで5.12aとされている、カサメリ沢のギャラクシアンにトライしてみたら、フラッシュ寸前まで行けた(ヌンチャクかかってたし、最後落ちたけど)。蒼天攀路3p目と1グレードは差を感じた。ムーブを固めて登り終えた今、初便の印象よりはよくなったけど、それでも易し目のは5.12bあるのではと感じた。トラバースの怖さ、ボルトの遠さ、高度感が体を固くしていることが影響しているかもしれない。

5.12のマルチという敷居の高さや遠いアプローチからか、あまり登られていないルートのようですが(おかげで順番待ちなくて助かった。2パーティいたらちょっとしんどい)、ロケーションは日本離れしていて、ムーブも面白いです。岩も固くて美しいし、てっぺんは快適で眺めは素晴らしいし、これでアプローチが近ければ人気ルートになりそう。遠いと言われるボルト間隔は、クリップホールドやロープ流れの関係で仕方ない気がします。3ボルト目以降はぶつかる出っ張りもないし、思いっきりぶっ飛べば良いかと。アブミやらカムやら動員した私が言っても説得力ないですが、チョンボ棒なんて使わず、トップアウトできるかドキドキしながら登った方が楽しめると思います。開拓はほんと楽しかっただろうな~と羨ましく思いました。
道連れになっていただいた玉置さん、Sさん、Hさんありがとうございました。