2002年4月27日から2日間
中嶋、宮川、瀧島(記)
春の明星山 P6南壁クイーンズウエイとクワトロ
今年は2月以降がかなりの暖冬だったために、桜も記録的な早い時期での開花してしまい全国的に春は足早でやってきた。
雪の少ない春の雪山より新たな刺激を乾いた岩に求めることにした。
メンバーが4人の集まり、1日づつ相手を変えて、3日間でひとり3本登る計画を立てた。
春の明星山では毎朝の小滝川の沐浴から始まる。
秋ならば飛び石伝いに簡単に渡れる小滝川も雪解けで増水すると渡れないこともあるそうだ。
ルートの事ばかり考えていたので渡渉の事はあまり考えていなかった。
初めに中島が渡渉にトライしたがビビッて戻ってきた。
川を渡れなければ南壁は見るだけだ。
気合が入って、ロープを引張って激流を流されながらのクロールで対岸にたどり着くことができた。
後続は上流の木を支点にしたテンショントラバースで無事に渡れた。
P6南壁の場合、林道から登るルートを観察することができる。何回か南壁を訪れていても多くのルートが入り乱れているし、トラバースが多いルートが多いので下見は重要だ。いきなり取り付いてルート図首っ引きで登るよりも下見で目的物を確認しておいてから取り付かないと「俺は今どこにいるの?」こんな状況に陥りかねない。
今回も事前に壁の観察を入念にしておいた。
4月27日
快晴 クイーンズウエイ 中島、瀧島
スタート10時15分終了15時30分頃
このルートは87年の10月にも登っている。
その時は石灰岩の岩場の面白さと難しさを思い知った。
今回は15年ぶりだ。
前回はルート図首っ引きで大きな南壁の中を右往左往し、3ポイントA0した。
さて今回はと言えば2ピッチ目の核心部Ⅵ-でノックアウト。
情けない。
対岸の林道からの入念な下見のおかげでその後は順調にロープを延ばす。
中央バンドで大休止。
フリースピリッツを登っている倉田、宮川パーティーもほぼ同時に中央バンドへ着いた。
春の連休だと言うのにこの壁は貸し切りだ。
林道の観光客には見上げてくれる気分は悪くない。
ところで今日のパートナーの中島とは久しぶりにロープを結び合うがしばらくの間ボルダーで鍛えて以前に増してパワーアップしているので心配はない。
彼は当然オールフリーで登りきった。
さてクイーンズウエイは下部よりも上部がおもしろいように思う。
中央バンドからの3ピッチは目標物が少ないフェースにロープを延ばすが、弱点を見出すクライミングセンスが必要だ。
上部のⅥ-はなんとかフリーでこなせた。
全11ピッチ、結果はともあれ楽しめた。
久しぶりの明星、久しぶりのロングルート、乾いた岩、小さな幸せを感じた。
今度はオールフリーで登りたい。
フリースピリッツのパーティーと一緒に下る。
大岩の上の松ノ木からの下降路は以前に比べて安定したように思えた。
4月28日
快晴 クワトロ 宮川、瀧島
スタート9時15分終了16時30分
トップは空身、セカンドが二人分の水、食料、靴など最小限の荷物を背負う。今回はすべてこのスタイルで登った。
初日にクイーンズウエイを登って後、クワトロを観察しておいた。前日にはオールフリーに失敗しているので今日こそはと、気合を入れて取り付いた。
1P目宮川、フリースピリッツの1P目と同じで左上する草付バンドを35m見た目より難しい。Ⅲ+40m。
2P目瀧島、テラス右のフレーク状からフェース。エイリアン、キャメロットが気持ちよく効く。Ⅴ-25m。
3P目宮川、スラブの中のバンド状を左へ。ぎりぎりのバランスでさらに左のクラックを掴む。直上後ハング下を右にトラバース。絶妙のラインだ。Ⅴ+30m
4P目瀧島、頭上のハングを左から回り込みバンドをつなげて下り気味のトラバースでクイーンズウエイのビレー点へ。Ⅴ35m。
2ピッチ目から4ピッチ目まではスラブ帯の中にフレーク、クラック、バンドと見事に継ぎはぎした抜群のセンス。
5P目宮川、枯れ木テラス目指して快適に。20mⅣ+すぐ隣ではマニュフェスを登る薫嬢が悪戦苦闘していた。
6P目瀧島、左が被った凹角を登る。Ⅴ-20m。
7P目宮川、スラブを直上。Ⅲ20m。
8P目瀧島、ハング右のスラブⅣ+からガラガラの中央バンドを左上。8、9ピッチを一緒に登る。50m。
ここで大休止。水飲んで、パン食って気持ちを落ち着かせる。
5Pから8Pまではクイーンズウエイと同じラインだ。
9P目宮川、右のピナクル目指してバンドをトラバース後、凹角を登る。ⅡからⅢ50m
10P目瀧島、右下のルンゼ状へⅡ10m。
11P目宮川、ガラガラのルンゼを進みハングを左から、バンド状を右に移りクラック。Ⅴ30m。このあたりから岩がトゲトゲしてきて手が痛い。
12P目瀧島、バンドを右に回り込んでハング上のテラスへ。Ⅲ20m。
13P目宮川、ハングの間の凹角を目指してフェースを登り、その凹角を豪快に越す。さらにフェースを右上気味に登り、リッジを右に回り込んでスタンスへ。50mⅤ。コールは全く聞こえない。
14P目瀧島、いよいよ核心部。目の前のハングを右上に超えていく。ハング下でランナーを厳重に取ってから、ホールドをまさぐると意外とでかい。これなら大丈夫、気持ちを落ち着かせて確実にムーブをこなす。ハング上の安心な太さの木でビレー。すばらしい高度感の5.10b20m。
15P目宮川、傾斜は落ちるが弱点を突いてロープを延ばす。Ⅲ+45m。
16P目瀧島、易しいリッジⅢ50m
前日のクライミングで自分の体は自然の岩にも高度感にも慣れてきたようだ。前日はⅥ-を登れなかったが、今日はⅥ+をきれいに登れて大満足。ロングフリーを満喫できた。
下部のスラブ帯でのライン取りは絶品だ。すでに数本のルートが絡み合うこの壁でこんな素敵なライン残されていたなんて。ルートの内容だけならばフリーでの初登ルートのフリースピリッツ以上に感じてしまった。それほどすばらしルートだ。
残置支点は比較的少ないのでカム、ナッツ類を有効に使えて、岩は思った以上に堅い。今回は事前に林道から下見をしてから取り付いたけれど、やっぱりルート図と首っ引きだった。それでもこれだけの満足感。ちなみにルート図は岩と雪のビックウオールコメンタリーのものが使えた。みんな持っている日本の岩場のルート図はイマイチかも。
ところでアルパインルートの場合、これでもかと思うほどのモロガバのホールドは剥がれそうな気がして安心して掴むことはできません。石灰岩の明星はこの手のモロガバのホールドの宝庫です。みんなに聞いてみると、怪しそうなモロガバのホールドは避けているようです。細々とクライミングを続けてきて、自分のモロガバホールドに対する認識がきわめて正常であった事がわかりました。