2002年4月28日
森広、池﨑、櫻井(記)
岳沢を取り囲む尾根には北西側に西穂-奥穂の稜線、北東側に奥穂-前穂の吊尾根、そして南東側に明神岳南西尾根がある。
残りの一辺はもちろん上高地に開けている。
岳沢にいるときや、徳沢のあたりを歩いている時に気になっていたのがこの明神岳の尾根だったが、今回この尾根をたどることができた。
岳沢のベースキャンプを5時過ぎに出る。
昨日重荷でフーフー言っていた道をスタスタと駆け下って、標識の7番に着く。
ここからが始まりだ。
樹林帯の急登がしばらく続く。
踏み跡は明瞭、時々残雪を踏むがほとんど土の上を行く。
樹林帯が灌木帯に変わってしばらくするとフィックスの残る狭い岩稜が出てくる。
この岩場は100mほど続くが重荷や雪の状態が悪いときはロープが欲しいだろう。
今回は乾いた岩だったので難なく通過できた。
またしばらくの間ひたすら登ると森林限界になり5峰の肩の台地(約2600m)に出る。
上高地や霞沢岳の展望が素晴らしい。
整地された幕場もいくつかある。
夏に来て泊まっても気持ち良さそうだが水が荷物になりそうだ。
ここからは展望もあり風が気持ちよい。
5峰のピークを巻き4峰のピークに出る。
この尾根を歩きたいと思ったもうひとつの理由が岳人の1999年1月号に載った記録のここからの写真が素晴らしかったことなのだった。
それは豊富な残雪の斜面からグンと飛び出した量感あふれる岩のピーク。
岩溝には新雪が詰まって岩の輪郭をくっきりと浮かび上がらせモンブラン-デュ-タキュールあたりを思わせる...だったのだが、行ってみれば残念ながら残雪は少なく岩溝には枯れ草と這松が「ここは日本ですよ」と教えてくれていた。
それでも同じアングルで一応写真撮影。
3峰の登りは岳沢側に寄り気味に行く。
おおまかな岩塊の積み重なりを、手を使って登るがすぐにピークに出る。
このあたりからの西穂の稜線は素晴らしい。
また右手はるか下に新村橋もよく見える。
これまで何度も見上げた明神の稜線に立っているのが嬉しい。
2峰もガラガラを巻き気味に登ると難なくピークに出る。
垂直のアプザイレンで、ロープ、ハーネス最初で最後の出番だ。
やや古い残置スリングを選んで、ヌンチャクのバックアップをとって櫻井から下る。
出だしは気持ちの良いスラブで空中に出ている感覚が素晴らしい。
途中傾斜の無い所を歩きまた降りると40m程度で雪のコルに立てる。
続いて池崎君。
最後の森広さんはちゃんとバックアックを回収してくれていた。
傾斜の無いところを無理に一回でコルまで降りてきてしまったので回収は登り返しも覚悟していたのだが、すんなりとロープは手元まで落ちてきてくれた。
「これは祝福されているなあ」と独り言が出てしまった。
1峰もガラガラ登りでピークに立つ。
展望は素晴らしい。
南に乗鞍、焼岳、西穂、奥穂、吊尾根から前穂、徳沢など、このピークならではの賑やかさだ。
1峰から奥明神沢のコルまでは慎重さを要するクライムダウン。
浮石も多くてホールドを選びながら、になる。
奥明神沢は岳沢のベースキャンプまで一直線の高速路だ。傾斜が一様で上部からのグリセード、シリセードはちょっと怖い。
半分程度下りてからは、シリセードやスケーティングをそれぞれ楽しみながらベースキャンプに戻った。
その前にヒュッテのビールで乾杯も忘れてなかった。
久しぶりに喉がしびれた!15時岳沢ヒュッテ着。
コル状のところや尾根の東側には残雪があったが、稜線ではほとんど雪を踏んでない。
正直なところ夏山のようで拍子抜けだった。
楽しみにしていた展望は期待通り。
穂高南部の展望台としては最高のルートだった。