2019城ヶ崎

2019年3月28日
河合(記)

今冬の城ヶ崎トラッド

今冬は、一切雪を踏むことなく城ヶ崎に通いました。仕事忙しくて冬山の体力作る暇なかったとか言い訳はありますが、結局は城ヶ崎のトラッドが魅力的ってことに尽きるかなと思います。今年のテーマは「ルーフと3D」。でも、ついたのは腹筋と体幹でなくて腹回りの贅肉な感じがしてヤバイ。
前置きはこれくらいにして、今年完登できたルートを、南のエリアから順に紹介します。全くの個人的な感想兼備忘録で、ムーブ書いてたりするので(実際トライしないと意味不明と思われますが)、オンサイトに拘る人はこの下をスクロールしないことをお勧めします。

[浮山橋]
・バナナラマ5.10b(体感5.11a)3日5便
昨シーズンの宿題。このエリアで「グレード上」一番簡単なルート。大事なことなのでもう一度書きます。「グレード上」。登ったという話を全然聞かないこのルート、昨シーズンはフォローでノーテンだったので、今年はすんなり登れると思ったのだけど・・・スコーピオンのトライ後、ワークアウトで触るも落とされ続け、気がついたら10台のルートで人生最多日数便数に。ムーブが悪くて10台前半ではなく、わかりにくさも合わせればイレブンありそう。自信のついてきたトラッドクライマーの鼻をへし折るのに最適で、知人の5.12クライマーはトップアウトできませんでした。岩は申し分なく固くて、プロテクションも見落とさなければ問題ないです。終了点はないので、エイドダウンがオススメ。トップアウト後に左にトラバースして少しダウンクライムすると潅木がありますが、無理やり終了点作ってフォロー回収すると、ロープが激しく重くてしんどいです。・スコーピオン5.12b(体感5.12b)5日12便
マリオネットとセットで、1日1便2日間冷やかしで触りましたが、ムーブが作れませんでした。マリオネットが終わった後で、1日4便、5便と集中的にトライしたところムーブが作れて、その後登れました。ムーブはかなりトリッキーで、最適ムーブを見出すのに苦労しました。さらに、出だしのフィンガートラバースが悪く、私はここで苦戦しました。でも、ムーブさえわかればトライしているうちに楽になる系で、2箇所ある核心のムーブ強度は高いものの、回復するレストポイントも要所にあり、マリオネットよりストレニュアス性は低いと思います。ハンドジャムの連打、痛いフィンガージャム、ヒールフック、クロスハンドジャム、足先行、コウモリノーハンドレスト、ルーフ腹筋、フィンガーボトミング、クロスハンドジャム、カチ、クロス・・・とにかく多彩でジャミングと3D要素満載、登っていてとっても楽しいです。プロテクションも番手が決まれば不安なく、思い切りトライできます。今まで登ったトラッドルートの中で、最高に面白かった!マリオネットより半分?1グレード位難しく感じたので、マリオネットが5.12aなら、5.12bで妥当なんじゃないでしょうか。トラバースルートなので、要フォロー回収。結構人気ルートなので、他パーティいた際は上手くやって下さい。
[アストロドーム]
・マリオネット5.12a(体感5.12a/b)5日10便
昨シーズンの宿題で、2日通ってムーブはバラしたけれども、その後はコンディションもパートナーも掴めず、登れませんでした。今年は極寒の1月にアストロインしてトライ。とにかく全身を使うルートです。正面から見るとわかりませんが、傾斜はほぼルーフ、チムニー登りで傾斜を殺しながら、最後のパンピングハンドジャムへと繋げます。当然、要フォロー回収。私のムーブだとガバとハンドジャム以外存在しませんでした。2箇所目のレストポイントにダメージ少なめで入れないと、最後に待ち受ける核心で落とされること請け合いで、ストレニュアス。ほんとよくできたルートだと思います。初めてトライした人は大体ヨレヨレのマリオネット状態になって降りてくるのが、名前の由来か。プロテクションは良いですが、チムニー内の不意落ちで頭打たないよう注意。ヘルメットは、頭も(物理的にも本来の用途でも)使うのでオススメできません。アストロ同盟結成するか、道連れを捕まえてレッツゴー![シーサイド:サンライズエリア]
・アーリータイムズ5.10c(体感5.10c/d)1日2便
アップのつもりで登ったらうっかり落ちてしまいました。核心は見た目通りの場所で、クラックに固執すると10cでは済まない印象。要所で休めてワンポイント悪い系で、ストレニ性はないけれど、初見はわかりにくいと思います。蛇足ですが、隣の腰痛5.12bもどうやらワンポイント極悪系の模様。驚くほど足がない![シーサイド:サンセットエリア]
・サイクロン5.11c(体感5.11c)2日2便。
人気ルートのシンデレラボーイの横にある迫力あるルーフクラックを、フッキングで抜けるルート。あんな所にあんなホールド系。プロテクションも良いですが、傾斜強すぎてフォロー回収しないといけないのがちょっと面倒なのと、抜け口のカムスタックに注意。ジャミング要素は出だし位しかなく、核心は全くもってフェースムーブ。・赤道ルーフ1p目5.10c(体感5.10d)1日2便。
雨で他のルートがほぼ全滅していた時にトライしましたが、ヌメりでかなりおっかなく、たまらずテンションしてしまいました。これも全くジャミング要素はありません。そこらへんのアップで使うボルトルートより、ずっとパンプできます。カムがクラック内で開きやすいので、ご注意を。これも要フォロー回収。

(右は人生楽ありゃ苦もあるさ)

・赤道ルーフ2p目5.11b(体感5.11b)2日4便
1p目から繋げる元気はなかったので、チェシャ猫5.10dから継続。核心を抜けてパンピングアイアンⅠに合流する寸前、ヌメリに負けてテンション。トップアウトせずにその後トライを重ねたら、RP時にパンピングアイアンⅠとの共通部分がわかり辛くて泣きそうになりました(パンⅠ登ってない)。内容はサイクロンに似ていてジャミング要素なしのフッキング系、ムーブはサイクロンより易しいです。その分高度感はあって、プロテクション決めたら突っ込む系なこともあり、結構緊張しました。パンⅠ共通部分を一発でこなせる自信があるなら、トップアウトせずにエイドダウンがトライするのに効率的と思います。・人生楽ありゃ苦もあるさ5.9(体感5.10a)フラッシュ
これも雨で他のルートがほぼ全滅していた時にトライしましたが、ヌメりで最後のランナウトが怖かったです。アップに使うのは隣のチェシャ猫5.10dの方がいいなぁ。

[なみだち]
・アルタミラフェイス迷いルート5.10d(体感5.11a)フラッシュ
タコで腕が攣りかけた時にワークアウトでトライ。1つあるボルトまでは5.10a位で易しいけどプロテクションが悪くて、エイリアン黒が足元に。ボルトから先が分かりづらい核心で、名前の通り迷わないよう突っ込むしかないです。ボルトは多分まだ生きているけどドカ落ちはやっぱ怖い。核心は完全なフェースムーブの辛口ルートでした。・タコ5.12b(体感5.12a)3日6便
前傾135°の綺麗に割れた迫力あるクラック。日本で初めて登られた5.12のクラックとのこと。名前がかっこ悪い。内容は、核心で10手ちょっと、息つく暇もなくジャミング時々ジャムっぽいフェースムーブの、真っ向勝負のクラックルートでした。厳しいシンハンドという人が多いけど、私には悪いタイトハンドとバチ効きフィンガーでした。ジャミングの決まりの良い場所は限られ、遠い点と点をデッドポイントジャムで繋ぐ核心ムーブが厳しいです。核心は左手出しの人が多いようですが、私は右手出しでした。核心は低くてあまりパンプしてない状態でムーブが起こせるので、ムーブさえ決まれば登りやすい印象。プロテクションも良いですが、1個抜けるとグラウンドフォールの危険が常につきまとうので、確実に決める必要あり。年末に1便触って、2月末に真面目に始めましたが、めちゃくちゃ混んでいて、7人待ちまで!いつの間にか人気ルートに!?[日蓮崎]
・イブ5.10d(体感5.10d)1日2便
短い幅広フィンガールート。オブザベしていた時は「全部レイバックすりゃいいんじゃね」と適当なことを考えたけど、無理でした。オンサイトトライは、カムの番手を間違えて撃沈。カムを決めてから一度クライムダウンすると、その後登りながらカムを決めずに登れる位には短いですが、しっかりシビアなジャムがあって面白かったです。

右はスーパーシリアスジャム

・スーパーシリアスジャム5.11a(体感5.11a)2日4便
昨シーズンの宿題。覚えてなくて、今シーズンも2便出してしまいました。内容的にはフェース要素が強く、クラック限定で登れば良い練習になるかも。フェースを使うと、大してシリアスなジャムにならないのが残念でしたが、マイクロカムで遊べました。

[門脇崎]
・ホシナクラック5.11d(体感5.12a)5日16便
昨シーズンの宿題で、4日間通ったけど、3月の日を追うごとのヌメヌメ地獄に屈して詰めきれず。今シーズン1便目で、足切れまくったけど辛うじてRP。最初は悪目のフィンガージャムですが、カムをセットしてからはフェース力の問われる難解な4手の核心が待っています。ムーブ作りは初見では難しく、カムが1個でも抜けたらグランドフォール可能性大でセットもヨレる、良いコンディションを待つことが必要、付き合ってくれる心優しいパートナーも必須と、色々厳しいです。個人的には5.12aあると思っています。とにかく日当たりが良すぎて、日中は2グレード位上がって登れる気がしないですし、波が高いと取り付けません。そして何より、ホシナ以外あまりルートないのでビレイヤー核心。なお、下降箇所は観光地ど真ん中なので、朝1でさっさと降りてしまった方が良くて、奇声も上げない方が良いかと。下降支点作るときは、特大の6番キャメロットがあると安心感があるのでオススメ。同じフィンガークラック+フェースムーブのルートでは、イムジン河5.11c/dよりずっと難しく感じた、辛口クラシック。[もずがね]
・リサイクル5.11b(体感5.11a/b)オンサイト
似たようなルートのJuly・ザ・ダディよりわかりやすくてムーブもマイルドでしたが、しっかり悪いハンドジャムが要求されました。ほとんど登られていないようで、実質は下部のルーフ脱出まで。上部は5.9位ですが土が乗っていたりもげそうな岩があったりワイルドなので要注意。終了点は立木で作れ、遊歩道から回り込んで回収できます。出だしは壁の一番奥から始めた方が充実します。【ついで1:ボルトルート】
[アストロドーム]
・ジーマ5.12a(体感5.12a/b)2日7便
アストロドームの、マリオネットの対面の一番海側にあるボルトルート。波が高い日は取り付けないです。ボルトがまだ生きてそうだったのでドカ落ちしない程度にトライ。ボルト5本の短しい系。大体ポジティブなホールドですが、ホールドが遠くて初っ端からボルダームーブが連続、意外と腕が吸われて便数かかりました。【ついで2:ボルダー】
[富戸ジャクソンボルダー]
このボルダー、江戸城の築城のために切り出された石のようです。そのためルートは大体、過去に割られた面のホールドから構成されています。太刀岡山のカリスマ下部みたいな感じでしょうか。なお、名前の由来の?ジャクソンの青文字はもう消えて無くなっています。アプローチ1分、ルートも初段前後にまとまっていることもあり、いつも人の絶えない、人気エリア。昼間は日当たりが良すぎてヌメるので、朝夕がオススメ。

・馬の魂3級(体感2/3級)2日
昨シーズン、サーマレストスタイルで突っ込めなかったので、マット借りて登りました。ちょっと分かりづらい感じ。・馬の魂var.1級?(体感2級)フラッシュ
下部アンダーガバ(多分赤丸部分)を使わない限定とのこと。ムーブが変わって面白かったけれど、グレードがそんなに変わるとは思えなかったです。

・富戸の冬1/2級(体感2級)1日
スタートの左手薄カチが、ヌメるとロックできなくてきつかったです。岩が冷えたら登れました。右手出しでも、左手出しでもいけそう(私は右出し)。登った日は頂点にある鳥の糞を避けるのが核心だったかもしれない。・富戸の春初段?(体感1級)2日
トライ開始した時すでに2手目のカチが欠けていて、2日目には完全になくなってサイドガバが出現していました(写真左の赤丸)。元々シカーで固めていたので、しょうがない。カチれる範囲が狭くなったので、オリジナルムーブでは難しくなった気がします。私はオリジナルムーブではできず。しかし、欠けたためサイドガバが出現、左手で引いてレイバック気味に右手リップを一気に取れることが判明。このムーブだと初段あるか怪しいですが、バランス悪くて遠いので、結構難しい。・富戸の春var.2級?(勝手に仮称:オオサンショウウオの春)(体感2級)フラッシュ
上記の通りサイドガバが出現したため、右手を山椒魚側に簡単に出せるようになりました。このルートは、富戸の春と同じスタートで、山椒魚のガバカチ(上の写真の右側の赤丸)を右手で経由して、富戸の春のリップを取ります。手順変わって楽しいです。

・山椒魚初段(体感初段)2日
強烈なルーフを越えるこの岩の看板ルート。足位置に悩まされますが、ベスト位置に決まると安定してホールドが取れます。ヒールフックとトウフックどっちでも行けるようで、私はトウフックでした。後は気合でキャンパすれば核心終了で安心のカチ地帯です。面白い!

大源太山 コブ岩尾根、中央稜

2019年3月9日~10日
中和、玉置(記)

今シーズンは年内からなかなか冷え込まなかったが、駄目押しと言わんばかりに春の訪れも早かった。早くしないと標高の低い上越国境の雪山シーズンが終わってしまうので、雪が溶ける前にと慌てて大源太山のコブ岩尾根と中央稜に挑んだ。

3/9 土曜日 快晴
<行程>
清水集落5:45
丸の沢出合 8:03
丸の沢二俣 8:44
キャンプ地発 10:04
コブ岩基部 13:42
大源太山山頂 15:13
キャンプ地 16:59

前夜のうちに清水集落へ向けて出発。関越道で上越国境を超えた途端に思ったより雪があり、期待が高まる。清水集落に入ったあとは除雪終了点にて車中泊。1日前に降ったと思われる20cm程度の新雪があり、出発地点で積雪は1m程度だった。朝食をとって出発。最初からスノーシューを装着して歩き始めた。最初はなだらかな林道歩きでサクサク進めるかと思ったが、雪が深くなって来たのとトレースも山スキー以外なかったりでペースは遅れ気味。情けないことにほとんど中和さんに先頭をラッセルしてもらった。また、林道は法面からの雪崩でデブリがあったり、雪の斜面と化していてスノーシューには厳しいトラバースを強いられたりと緊張させられる場面が頻繁にあった。結局丸の沢出合まで2時間強かかった。丸の沢出合での渡渉は年によっては苦労するようだが今回はしっかりしたスノーブリッジがあり、特に難しいことはなく渡れた。丸の沢からはこれから登るコブ岩尾根の険しい山容がよく見えた。そう簡単に登らせてはくれなそうだ。しばらく進み、大畠の沢と丸の沢本流の間の小尾根を少し上がって、雪崩の心配のない平らな尾根上でテントを設営した。余分な荷物をデポし、出発の準備をした。この時点で午前10時ごろ。この先もラッセルが予想されるので、スノーシューを持っていくか迷ったが置いていくことにした。小尾根を下降し、大畠の沢を渡ってすぐ横のコブ岩尾根へ取り付いた。始めは急傾斜の樹林帯をひたすらラッセルで上がっていった。しばらくすると藪に覆われたナイフリッジが現れた。ナイフリッジをたどり、トサカ状のP2を過ぎると、藪の露出した60度程度の急な雪壁となった。藪をつかんで強引に登ってさらに進むとコブ岩が近くなってきた。コブ岩の手前は雪壁になっていたが、雪が深い上に所々クラックを踏み抜いてしまいなかなか進めない。なんとか突破しコブ岩基部にたどり着いた時点で時刻は13時42分となっていた。キャンプ地から標高差たったの500mを4時間近くかかった計算。コブ岩の正面は垂壁となっており、とても突破できるようには見えない。左側は急な藪となっており登れそうだ。近づいてみると傾斜は60度もなく、藪も豊富であまり難しいようには見えなかったので時間節約のためロープは出さずに行くことにした。取り付いてみると実際、先ほど越えた下部の藪壁よりも易しいように感じた。コブ岩を超えた後は恐ろしいナイフリッジと雪壁を越え、ひと登りで15:13に山頂着。下山は山頂から反対側へ2段降りて、大畠の沢源頭からバックステップを織り交ぜつつギャップを踏み抜きながらテント場まで下降した。

3/10 日曜日 晴れのち曇り
<行程>
キャンプ地 6:05
中央稜基部 7:55
大源太山山頂 13:16
清水集落 16:52

二日目は途中まで昨日の下山のトレースを辿り途中から分かれて中央稜基部へ向かった(写真2左側の尾根)。少しラッセルはあったものの、特に手こずることもなく順調に基部へ到達した。中央稜下部は傾斜50度程度のルンゼを挟んで2つの藪尾根があった。尾根上は藪が鬱陶しそうなのでルンゼの左端を登ることにした。取り付きで雪にクラックがあったのでスコップで雪を掘り集め足場を作って取り付いた。中和さんが最初先頭だったが、左の藪に入ろうとして手こずっていたので自分がルンゼを先行した。ルンゼ内はそこまで難しくはなかったが、相変わらず所々クラックがあり鬱陶しかった。幸いクラックが斜めに走っていたので乗り越しは難しくなかった。その後ルンゼの上部で左の藪へ入った。しかし、進むにつれて掴める木が少なくなり、さらに潅木の踏み抜きが酷くなかなか進めなくなった。自分がもがいているところに中和さんが追いつき交代してもらった。踏み抜き地獄で恐ろしいのでここからロープを出すことにした。もう一度自分が先頭でリードすることにして1ピッチ目。相変わらず藪の踏み抜き地獄とラッセルが続きゆっくり進んでいった。中間支点は豊富だが木を丸々一本掘り出したりといった土木作業で体力が吸い取られるピッチだった。ロープを50m以上伸ばし、傾斜が急になる場所でピッチを切った。次は中和さんリード。傾斜は60度弱でやや急になるが相変わらずの藪尾根。雪の踏み抜きは傾斜がきつい分少なかったようだ。気温がかなり高くなって来ているのを感じ、眼下で小さなちり雪崩が頻発している様子を見ていると轟音とともに左のルンゼでブロック雪崩が2回起きた。恐ろしい。こんなものを喰らったらひとたまりもないだろう。3ピッチ目は再び自分がリード。尾根を少し進んだ先に一箇所岩場があり、直登の可能性を探ったが直下の藪でとった中間支点からそれなりにランナウトしており、無茶はできなかったので大人しく左の藪から登って突破。その先の松の木でピッチを切った。最後の4ピッチ目は中和さん。最初は特に難しいことはない雪の斜面をトラバース気味に進み、小尾根に取り付いてまた藪登り。主稜線に抜けたところでピッチを切った。そこから山頂までは昨日のトレースを辿ってすぐ、下山もあっという間。あとはテントをたたんで、清水まで長いアプローチを戻った。中央稜は短いかと思っていたが、結果的にはコブ岩尾根より登攀要素は強く充実した藪クライミングとなった。帰りは途中まで河原を歩いたが、林道よりはるかに楽だった。堰堤に阻まれ途中から林道に戻ると、行きの時点で不安定そうに見えた斜面は軒並み雪崩れていた。

前回の戸隠P3尾根は敗退で悔しい思いをしたが、今回は無事に目標と敷いたルートを完登でき、充実した山行となった。しかし、中和さんにラッセルをほとんどお願いしてしまったので、まだまだ強くならなければいけないとも感じた。中和さん、ありがとうございました。

谷川岳 一ノ倉沢衝立岩中央稜、一ノ沢左方ルンゼ

2019年3月2日~3日
川上、山崎(記)

3月2日 谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜
当初、土曜日は一ノ沢左方ルンゼ、日曜日に中央稜の予定でしたが、前日夜から小雪が舞っていたので、土曜日は衝立岩中央稜に変更。当日の天気は朝のうち薄曇りのち晴れ。
センター発500。一ノ倉沢出合600。左に一ノ沢を分けた先から本谷のデブリが現れ始める。テールリッジには末端からではなく、衝立スラブ側から取り付く。中央稜取り付きに800頃。
なお、この日の朝、知っている限りでは東尾根に1パーティ2人、三スラに1パーティ3人、一ノ倉尾根に1パーティ3人が入っていました。

1P目 川上。雪のついたスラブを左上。40m。中間支点は灌木などで取る。雪の下にハーケン。2P目 山崎。1P終了点から左にトラバース後、ルンゼ状を直上。25m。3P目 川上。本来なら右にトラバースして衝立側正面フェースに出るところ、真っ直ぐ上に見える残置物に導かれ烏帽子側フェースを直進後左上。30m位だったか。
4P目 川上。とても難しそうなので難所大好きの川上リード。下部は左面に手足なし。右側にあるリス、カチ、棚などを使うが、難しく突破に時間を要す。中間支点はハーケンあり。さらに上部は被った凹角で、挑戦するも突破は困難となり、最終的にはあの手この手でずり上がる。終了点はボロいスリングが巻かれた立木。

ボロいスリングの巻かれた立木

5P目 山崎。本ルートが走る烏帽子側正面フェース目指してルート修正し、本来のルート4P目チムニーの上に出る。そこから凹状フェースを登り終了点。25m。
6P目 川上。ルンゼ状から烏帽子側の開放的な凹角状のフェースを登る。中間支点ハーケンあるが、クラックが走っているのでトライカムなども使う。40m。
この時点で14時を回っていたのと、メインピッチは終わったということで終了とし、同ルート下降する。途中ロープの引っ掛かりなどあったが、15時頃には取り付き着。
この日の中央稜は我々のパーティのみでした。

3月3日 谷川岳一ノ沢右壁左方ルンゼ
当日の天気は朝から曇り。天気は下り坂でしたが、日中は何とか持ちそうな状況。
センター発400。一ノ倉沢出合500頃。一ノ沢に入って急な登りの途中、最初の二俣が現れるが、左手が一ノ沢本谷で、左方ルンゼには左を行く。右手からはルートミスしたのか、一団が続々と下ってくる。
取り付き着630頃。この日左方ルンゼに入るパーティは我々を入れて5パーティの大盛況。
うち山頂に抜けたのは3パーティ。
1P目取り付き。ロープ無くても行けそうだが、先行パーティの落とす氷塊が時折飛んでくるのでロープを出す。出だしだけ傾斜の緩い氷で、あとは2P目の氷瀑の前まで緩い雪面。40m。
2P以降は、特に難しくない滝を交代で登って行く。確か4P目。左側は氷が薄く、中央を行き、右岸側の立木にある残置まで。25mくらい。4P目終了点から下を覗く。4P終了点からは緩雪面。5P目手前までロープを引き摺っていく。本ルート核心の5P目チムニー滝。川上リード。確保支点は左岸側の岩角へ巻き付けたスリングやハーケンを打ち確保支点とした。乗り越えた後40mほどロープ伸ばし左岸側でビレイ。
滝は、左面に薄い氷が張っており、チョックストーンの左側を登る。それほど苦労せず突破できた(写真は現地で偶然会った友人に取ってもらったもの)。
その後、中間稜までは先行者の階段状トレースがあり、雪も締まって容易。
中間稜核心のナイフリッジもトレースがあったため難なく突破。一応スタンディングアックスビレイで確保。ナイフリッジ後はロープをしまい、東尾根に向けのんびり登って行く。ガスで真っ白のオキの耳には1200頃到着。天神平経由で1500には下山。

後立山 不帰3峰B尾根 (敗退)

2019年3月2日~3日
中和(記)、谷水

近頃敗退山行が多いですけど、もっと雪と戯れたい今日このごろ。そんな訳で同じく塩見の敗退で不完全燃焼であろう?谷水さんを誘って不帰3峰東面に行ってきました。

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概要:
後立山 不帰3峰B尾根 (敗退)
2019/03/2~2019/03/3 (夜行1泊2日)

コースタイム:
3/2(土) 八方池山荘(08:20) – 唐松岳(11:10) – 宿泊地(11:40) – イグルー建設 – B尾根基部(15:00) – 宿泊地(17:01)
3/3(日) 宿泊地(04:40) – B尾根基部(05:15) – 宿泊地(14:20) – 八方池山荘(16:50) – 駐車場(18:30)

行動記録:

3/2(土) 快晴

八方尾根スキー場からゴンドラとリフトを乗り継いで、労せずして標高1800mに到着。八方池山荘の周辺は登山者で溢れかえっており、八方尾根は蟻の行列のような様相。蟻の一員となってダラダラと歩き、唐松岳を越える。不帰3峰手前の吹き溜まりにてイグルー建設。
明日のために、dルンゼを下降してB尾根取り付きまでトレース作り。時間があったのでB尾根の2ピッチ目にフィックスロープを張ってマイホームに戻る。(1ピッチ目は簡単に巻ける)

ワンルーム住宅 (家賃0円)

3/3(日) 晴れのち曇り

5時前にイグルーを這い出て、トレースを使ってB尾根基部にたどり着く。

1P (60m) 中和
正面の岩壁は難しそうなので、右側バンドからリッジに上がる。バンドは雪壁になっておりスコップで切り崩す。リッジに上がる所が、やや悪いのでワードホッグを固め打ちし、草付アックスで乗り越せば、後は簡単な草付と雪稜。2ピッチ目手前のコルでハイマツをスコップで掘り出してビレイ。

1P目のキノコ雪状雪庇

2P (30m) 谷水さん
雪壁を登ってリッジに上がる。木や藪が豊富なので掴んで登れるが、昨日谷水さんが張ったフィックがあるのでユマールで時間短縮。

3P (60m) 中和
岩峰へと抜ける雪壁とナイフリッジ。下から見ると簡単に見えたので、30分で抜けられると思ったが、一時間半後もスコップを振り回していた。雪壁とキノコ雪の切り崩しに終始するので、ピッチの大半でスコップが手放せない。最後は氷化したルンゼを一段上がった所でに太いカンバがあり、ここで切った。

4P (30m)谷水さん
残りのルンゼを登り、ナイフリッジを越える。巨大キノコ雪が張り出しているため、一見すると普通に歩けそうな雪稜だが、振り返ると完全なナイフリッジ。岩峰基部にスノーバー2本埋めてピッチを切る。

5P (25m)中和
急な草付ルンゼ。トラバースして取り付くが、ルンゼ取り付きまでは雪の下の藪の空洞に何度も落ち、ヤブに悪態をつく。ルンゼは全体的にスカスカの雪でアックスもアイゼンも決まらない。スコップを振り回せるような傾斜ではないので、アックスで除雪しては、草付に刺して登るという作業を繰り返す。草付アックスでの除雪作業で腕もパンプしてきたので、途中からはアックステンション多用。リッジに出たとこでスノーバーとアックスを横埋めしてビレイ。

この時点で12時近い上に、キノコ雪と雪壁はさらに続いている。時間切れは明白なので敗退決定。土嚢袋でcルンゼに懸垂し、嫌がらせのようなラッセルでルンゼを詰めて国境稜線に這い上がった。後はイグルーの荷物を回収して、八方尾根を下山。最終リフトには余裕で間に合わないので、最後まで歩いて下山となった。

6P目以降も除雪大会の会場

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不帰3峰の各尾根は短いので、3月頭なら半日強で抜けられると思ってましたけど、とんだ甘ちゃんでした。スコップによる切り崩しが続き、時間がドンドン吸い取られて終了のお時間となりました。残雪期なら雪を切り崩さずにアックスを刺して「えいやぁ」で登ってもいいですけど、この時期だと雪の支持力が弱いので、土木作業しないと体が上げられないです。
プロテクションは、灌木が主体ですけど、小さめのカム、ワードホッグ、スノーバーは多用。ハーケンは1P目のビレイ点を作るのに1枚だけ使いました。
またも敗退山行になってしまいましたけど、充実しました。谷水さんありがとうございました。

 

南ア 荒川出合1ルンゼ、3ルンゼ

2019年2月16日~17日
薄田(記)、川上

「悪い 」これしか言葉が出てこない。
この土日で錫杖の1ルンゼを計画したが直前で降雪予報。雪崩が怖いので荒川出合に転進する。
パートナーは悪いところ大好き人間の川上君。
16日、開運トンネルから10kmの林道はアプローチシューズでも足に豆が出来そうなくらい長い。2時間弱。
テントを張って初日はアイスクライミング。発電所から眺める2ルンゼはかなり上部に立派な滝が見えるが全体にショボそうなので3ルンゼに向かう。
途中、先行者のテントが張って有った。被らなければよいがと思ったが被って仕舞った。
3ルンゼに入って傾斜が増すと共に氷で滑るのでアイゼン装着。
途中から「夢ブラ」の1P目を登るトップの姿が目に入ってきた。準備して薄田がスタート直前に先行のフォローが1P目終了。かなり遅い。1P目は4級程度なるも先行トップが核心ピッチに入り落氷が頻発するのでラインを思い切り右手に取ったり上の落氷を気にしながらなので時間がかかった。
川上君を迎え入れV字スレッドを2カ所作る。その上はあまりに危険なので中止して下降に入る。その途中川上君はもの足り無いのか下降後リードしたいとのこと。「ショーガネーナー」と薄田が付き合う。
17日(1ルンゼ)
4時起きの6時出発で今回のメインである1ルンゼに向かう。
新道トンネル入り口を左に反れ旧道に入ると入り口が塞がれたトンネルとなりそこから尾根に巻上がるが凍っておりヤバいのでアイゼン装着。古いトラロープに導かれトンネル出口に降り立つ。
その後薮の旧道を歩いて10分ほどで出合。出合からはガレガレの20分ほどで氷の滑滝が現れる。
1P目、川上リードでスタート(8:00)
トポだとⅣ+と有るが「とんがりコーン」状の氷が切れてからが怖い。所々岩に超薄いベルグラが貼り付いているだけで支点が取れない
草付きも海苔が巻かれたおにぎり状態。
川上君バランシーな体勢で登っていく。(1時間くらい掛かった)最後のスクリューから半入れのイボイボまで距離があるので落ちたら本当にヤバイ。2P目、薄田
雪田で15分。
3P目、川上
1P目よりましだが相変わらずランニングが取れず超ランナウト。
全体が壁という傾斜ではない。岩に薄い草付きとベルグラが貼り付いているだけでアックスのピックが跳ね返される。ピックを何とか引っ掛けて登るという苦しい状態が続く。川上君右手のコーナークラックにカム3発でセルフビレー。
4P目、薄田
先ほどより少しましだが右手の岩と左手の雪面(すぐ岩)をずり上がっていく。そんなのが15mほど続くと雪面となり左手を壁に押さえつけられる。その奥に奥壁らしきものが見える。少しそれたか?(実は外していない。)
5P目、川上君
ランペ状を右にトラバース、本流状のに到達。見上げればⅤ級の氷が見えた。
ここで13:00くらい、とうてい全ピッチは無理だと判断。そこから右手の尾根に逃げるとする。6P目、薄田
急な雪面から滑滝状の氷の斜面、最後は雪面を削ってグズグズのに砂利状の所にイボイボハーケンを根本まで叩き込んで川上君を迎える。その後もう1Pトラバースしてやっと樹林帯。急な樹林体を100m程下降すると壁状になり懸垂3回でやっと傾斜が緩む。本来はもう少し北川に回り込むのか?最後も旧道落石防止ネットで懸垂。発電所到着は16:30位。
本ルートは残置の姿は無く。カムも決められるところが少ないので腕に覚えのある人にお勧めです。積雪、着氷の状態次第でグレードが変わるでしょうけど。

ウメコバ沢中央岩峰凹角ルート

2019年2月10日(日)
川上、山崎(記)

当日の天気は晴れ (風強い)。
ウメコバ沢入り口
前夜の雪が少し積もる。ウメコバ沢F1、F2は氷結しておらず、左岸側のフィックスを使い通過。

凹角ルート取り付き付近。中央の凹角沿い。傾斜は立っているので、着雪はそれほど多くない。

3P目。40mくらい。
リード中の川上。10a。中央のクラック沿いに左右のこまかいスタンスにアイゼンの爪を立て、手はピックを引っ掛けて登るドラツーセクション。中間支点は主にカム。

2P目の終了点あたりから下を望む。各ビレイ点は残置ハーケンが主体。2Pは15mくらい。

3P目の核心部。左面上に1つだけハンガーボルト。この上の中間部も難しい。40mくらい。

4P目出だし。左上にボロハーケン。カムやナッツ使用。40mくらい。

4P目出だしの確保支点。やはりボロガタハーケンなのでカム等で補強が必要。

5P目(20mくらい)は傾斜も落ちてきてシングルアックスでも登れるが雪がベッタリ。ロープが巻いてある大岩で終了。16時頃。大岩周辺は岩がたくさん浮いているので要注意。その後、ロープをしまい左手の方に向かって歩いていくと上の写真の沢と降りる懸垂下降地点に出る。フィックスが張ってあるので、それを使い懸垂下降。1回懸垂後も取り付きまではガレた急な沢を降りていくので要注意。

日光月山西面夫婦滝

2019年2月3日(日)
薄田、野澤、山崎(記)

アプローチ
今市インター~栗山ダム 約1時間
県道23号線日陰集落内のお寺脇から栗山ダムへの林道(舗装路)に入るが、当日は先日の降雪が残っていてアイスバーン化していた。結構急こう配の箇所もあるので、降雪後などは運転に注意が必要で四駆、スタッドレスもしくはチェーンがないと危ない。
栗山ダム駐車場からは来た道を少し戻り、トンネル付近から南西?方面への急な小尾根を下降する。なお、栗山ダム駐車場付近からも谷に向かって斜面を下降していく明瞭な踏み跡があるがこれは違うようです。栗山ダム駐車場から夫婦滝エリアまで約30分。一部フィックスが張ってある急尾根だが踏み後あり。

滝の概要
主に夫婦滝(雄滝、雌滝)、無名滝などがあるようだ。
雄滝…このエリアを代表する滝。落差約100mはあろうかという滝で3段に分かれていたが、当日の状態は、中段がやっとつながったという感じの細いつららの集合体で、とても難しそうと言うか無理。中間部分は日も当たり融けだしていた。今後の冷え込みに期待か。
雌滝…雄滝から歩いて5分ほどのところにある滝。雄滝のような直瀑ではなく、上部は左に曲がっており、傾斜は厳しくない。こちらも上まで長さは100m以上ありそう。当日の状態は、登攀可能だが薄くて幅も未発達な感じ。本日は我々を含め3パーティが入っていたが、みんなこの滝を登っていた。
無名滝…雄滝の手前にある滝で、少し谷を分け入ったところにある。こちらも約50メートルはあろうかという滝で、下部はスカート状で、上部10mくらいがバーチカルだが、ここは日当たりが良いためか当日はザーザー水が流れており登攀不可。どうやらこの滝の上にも氷瀑があるらしい。
本日は、登れそうな雌滝を登った。3人だったため野澤さんリードで3人同時登攀。
1ピッチ目
30m位か。傾斜は強くないが、氷が薄くてしょほい。アックスやスクリューを、氷をよく見て打ち込まないとガリっといやな音がする。スクリューが入りきらない。抜け口上がって少し歩いた2段目の氷段の前の氷柱にスリング巻いてビレー。2ピッチ目
出だし1段上がった後、5mほどの垂直の滝。やはりここも氷は薄くて壊れやすい状態で、野沢さん丁寧に登る。その上は傾斜が落ち、本来の2ピッチ目終了点(と言っても何もない)の1段下の氷段手前で切る。60mロープならそこを乗り越えて核心部である3ピッチ目の氷瀑の前まで行ける。3ピッチ目
10mくらい?
3メートルほどの氷段をこえて本来の2ピッチ目の終了点、3ピッチ目の核心氷瀑の前まで。氷結しているが、やはり一部薄くて脆そうな感じ。雌滝最上部の終了点から1回目の懸垂でここまで降りることになる。2回目の懸垂支点は無いのでV字スレッドを作ることになるが、ちょうど出来上がっていたV字スレッドにスリングが掛かっていたので、それにスリングを足して懸垂支点とした。4ピッチ目
40mくらい。上の写真で奥に写っている滝。
核心の氷瀑で、薄くて脆いところあり。野沢さん左側のラインを慎重に登って行った。垂直部を登りきると滝は左方向に緩くカーブしていく。傾斜は緩くなるので困難ではない。細くなった氷を登って行くと左側の木に残置スリング、カラビナ22枚ありそこで切る。その先もう10mほど行くとてっぺん。
下降
懸垂3回で取り付きに戻った。2回目の懸垂支点はない。V字スレッドでの懸垂となる。最後の懸垂支点(1ピッチ目の終了点のあたり)は、よく周りを見ると青いスリングのかかった木があるのでそれを使って降りた。最後は懸垂せず右岸側を歩いて降りられるらしいが、どこに下りていくのか分からなかったので行かなかった。

南アルプス 荒川出合の氷爆

2019年2月2日~3日
玉置、小池、中和(記)

今シーズンは氷の状態が悪いようで、あれこれ候補地が上がるも、目的地が決まらない難民状態。マルチのアイスに行きたかったのと、北側斜面なので氷の状態も良いだろうと信じて、南アの荒川出合の氷爆に行くことにしました。
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概要:
南アルプス 荒川出合の氷爆
2019/02/02 3ルンゼ・右のナメ滝
2019/02/03 2ルンゼ・正面大滝

コースタイム:
02/02(土) 開運トンネル(05:20) – 荒川出合(08:00) – 3ルンゼ出合(09:30) – 登攀終了点(16:30) – テント(18:30)
02/03(日) テント(08:30) – 2ルンゼ出合(08:30) – 2ルンゼ大滝(10:30) – 登攀終了点(16:30) – テント(21:00) – 開運トンネル(23:40)

行動記録:

2/2(土) 晴れ
開運トンネルから荒川出合まで10kmの林道歩き。除雪バッチリなので非常に歩きやすい。
林道歩きが多い自分は感覚が麻痺しているが、他の2人にとっては苦行でしかないと思う。荒川でのアイスを推薦した手前、氷が無かったら2人から氷のような視線を浴びての林道下山になるけど、2ルンゼに氷爆の存在を確認して一安心。2ルンゼ付近の平地にテント設営して、身軽な装備で3ルンゼに移動。

出合から1時間程、軽いラッセルを交えて氷爆の基部に到着。3ルンゼの各ルート状況は以下のとおりで、右のナメ滝に取り付く。

アーリースプリング: 上部のみ氷結し下部は草付が露出。登れない
夢のブライダルベール:氷は繋がっているけど、中間は一部がツララの集合体のよう。
右のナメ滝:過去の記録より氷の幅は狭い。左ルートは草付が露出している。

右のナメ滝
ブライダルベールとアーリースプリング

1p(30m)  小池さん
結構立っている部分が数メートル程あり、このピッチが一番悪く感じた。左岸の赤い残置スリングがある木でピッチを切る。

2p(30m)  玉置さん
傾斜は緩いがトラバース気味に登るのが、何となく落ち着かない。ルートが左右に分かれる場所が吹き溜まりになっており、除雪してピッチを切る。

3p(50m)  中和
左ルートと右ルートに分かれるが、状態が良い右ルートを登る。序盤は立っているが、一段上がると後は何てこと無いナメ。左ルートと合流する辺りで、ロープ一杯になったので適当な灌木でピッチを切る。

この上にも、もう1段小さな滝があったけど、時間が押していたのでここで終了。左岸の尾根を懸垂3回連続で滝下に戻ったが、林道に復帰する頃には真っ暗になっていた。

2/3(日) 晴れのち雨

昨日のヘッデン下山の反省も踏まえ、13時をリミットに撤退することを申し合わせていた。が、大量に担ぎ上げた酒と食料のためか、体調不良のメンバーが出たり、寝坊したりと、いきなり暗雲が立ち込める。

2ルンゼ出合からすぐに10m以下のナメ滝が連続するので各自フリーで適当に登る。ナメ滝群の上は吹き溜まりになり、所々腰ラッセル。結構しんどく、10時過ぎになって大滝基部に到着する体たらく。3段で構成される大滝は、1段目だけ登って時間切れかもね、などと言いあう。

2ルンゼ正面大滝

1p(40m) 玉置さん
滝の左側を登るが、氷が固い上に、昨日の疲れもあるのか本調子ではないようだ。1段目の落口まで一気に抜ける予定だったが、弾切れを起こしそうになり、核心部を越えたところでピッチを切る。

2p(20m) 小池さん
1段目の上部。傾斜は70度位だけど、最初の数mだけは氷が脆いので、足が決まらず苦しそうな印象。それ以後は安定した登りで難なく越えていき、1段目の落口でピッチを切る。

3p(30m) 中和
1段目の落口から右岸尾根にトラバースして下山予定だったが、両岸立っており、やむを得ず2段目も登る。1段目に比べればユルユルだけど、落ちると大滝の基部まで大ジャンプになるので確保してもらう。この辺りから本格的に雨が振り始めてきた。

4p(30m) 小池さん
目論見が外れて、2段目の落口からも尾根に移れないので、結局3段目も登る。傾斜は50度位だが、落ちると1p目より下まで行ってしまうので確保する。この滝の上は雪に埋もれたナメ滝が続くのでロープは仕舞う。

3段目の上からはラッセルしながらの遡行になるが、雨で濡れた雪でアイゼン団子が酷い。数歩でドラえもんの足のようになりゲンナリ。
下降路である右岸の尾根は、トポだと簡単に下山できるような記述だが、想像より急峻で、日没+雨+ガスでルーファイが非常に難しい。装備も体も雨でビショビショで悲壮感が漂う。懸垂3回交えて大滝の下に戻り、テントに帰ったのは21時。テントを片付け、林道を各自下るが、所々スケートリンクになっており、全員が複数回コケた。結局、全員が開運トンネルに到着した頃には日付が変わっていた・・・。

出発時間遅れ、同ルート下降しなかった等、ミスが重なって下山が遅くなってしまいました。反省点や課題が盛り沢山ですが、スケールの大きい氷爆で2日間遊べて楽しかったです。小池さん、玉置さんありがとうございました。

足尾 ウメコバ沢中央岩稜 チコちゃんルート

2019年1月27日
薄田(記)、川上

充実しました。(手強かった)
前週、川上君より足尾のアルパインが面白そうとのことで誘いがあり、それでは行ってみっかとなり行ってきました。
埼玉を前夜発して某所を5:00に出発。銅親水公園よりスタート。1.5時間で出合着。4人パーティの先行がいたがアイスクライミングとのこと。
先行を譲ってくれようとしたが辞退してフォローする。
取り付き迄約40分。前夜から降った雪が15から20cmくらい有った。
8:00川上リードでスタート。
1P(Ⅳ級)スラブ右手のコーナークラックからのスタート。夏のⅣ級なのでアイゼン&アックス×2PCのドライツーリングでどうゆうグレーディングかわかりませんがルート中一番痺れました。右はクラック、左はスラブの細かい手足ホールド。「怖い」「怖い」。
クラッカー川上はカムの選択が早く時間が掛かった(40分くらい)が危なげなく?抜けた。
続く薄田も慣れないドライツーリングで時間がかかったが脹ら脛のパンプを我慢シ-シ-抜けました。
2P(Ⅲ)薄田、Ⅲ級だけど傾斜が落ちた分雪が天こ盛り状態。おまけに大きな岩も浮いており時間がかかる。

2P中間

3P(Ⅴ級):川上本ルートの核心ピッチ。スタートから薄田も触っているでかい(50*40cm)位のやつが岩にのっかてるだけ。力、掛けなくてよかった。
肝心なクラックは4m程度(キャメロット4番残置)で1P目よりは優しく感じた。それでもホ-ルドが雪に隠れて雪払いに時間がかかる。

3P核心手前
3P中間枯木地点

4P(Ⅲ):薄田、2P目より傾斜が有り相変わらず雪がたっぷりで大変。
川上君を迎え入れ時間を見ると14:20(実際は約30分~1時間早かった)となり残り2ピッチとピークまで70mのコンテをこなす時間を3時間と見積もり下降(裏手をフィックスロープ)時間を考えて勇気ある敗退を決断。
3回の懸垂下降で1時間掛けて取り付きに戻る。残置のハーケンは無いので岩角といつ枯れたか解らない枯れ木(パリパリに乾燥)を使いました。
キャメロット4番はワイヤーが切れていて外れなかったが下降途中で川上君回収出来て良かった。BDの金物品質は安いけどそれなり。
銅親水公園に戻ったのが16:00だったのでまあまあの時間でした。
足尾の松木沢全体が鉱毒で不毛地帯。雰囲気も手伝って充実させて貰いました。

日高山脈中部横断(農屋~カムエク南西稜~1823峰~ピラトコミ山~札内川ダム)

2018年12月27日~2019年1月3日
中和(単独、記)

 

日高山脈は山が深いので、その最深部に行こうと思うと、一週間近い休みが必要になってしまう。自然、関東労務層が日高の中核に行く機会は、年に数回しかないことになる。でも今年はまだ日高に行けていない。それじゃあ年末年始は日高に行くしかない。

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概要:
日高山脈中部横断(農屋~カムエク南西稜~1823峰~ピラトコミ山~札内川ダム)
2018/12/27~2019/1/3

コースタイム:
D0(12/27) : 新千歳空港 – 苫小牧
D1(12/28) : 農屋バス停(09:46) – 静内ダム(10:53) – 高見ダム(13:23) – C1(16:06)
D2(12/29) : C1(05:41) – 東沢林道分岐(07:37) – 清和橋(13:01) – C2(15:44)
D3(12/30) : C2(06:08) – シカシナイ山(10:20) – P1821(15:45) – Ω3(15:45)
D4(12/31) : Ω3(06:29) – P1848(10:40) – カムエク(14:36) – Ω4(15:36)
D5(1/1) : Ω4(07:02) – ピラミッド(08:34) – ガケ尾根の頭(10:15) – C5(13:46)
D6(1/2) : C5(06:46) – 1823峰(09:36) – P1643(11:47) – Ω6(15:29)
D7(1/3) : Ω6(06:11) – ピラトコミ山(09:17) – 林道(13:36) – 札内川ダム(15:01)

行動記録:

12/27
前日移動。苫小牧でアマゾンからのガス缶をコンビニで受け取り、そのまま駅でビバーク・・・などするはずもなく、全館暖房のビジホで過ごす。

12/28 晴れ
苫小牧から色々乗り継いで農屋バス停。ここから南西稜取付まで約48kmの林道歩き。この山深さこそが日高の魅力!!そんな自己暗示をかけて淡々と歩く。どうやら単独の先行者がいるようで足跡がある。ルート被らないといいなぁ。高見橋の分岐手前でツェルト泊。

こんな感じの林道が続く

12/29 雪
出発してすぐに足跡の主を追い抜く。ペテガリに行くとのこと。他人のトレースを辿るなどお互い不幸でしか無いのでWin-Winだ。
除雪はナナシ沢出合の1km位先で終わり、膝ラッセルになるのでスノーシューを履く。地図に無い橋やらトンネルがあり困惑したけど、どうにか清和橋に到着。南西稜を突破できないと、もう一度48kmの林道歩きになるので、敗退という選択肢はない。

地図に無い作りかけの橋。橋の下の足場を使って渡る。

清和橋の少し先から尾根に取付くが、急斜面のラッセル。笹の上に乗った新雪で、踏み抜きが酷い上に笹の葉で滑る。吠えながら必死に登る。標高900を超えた辺りで傾斜が緩むので整地してツェルト泊。

12/30 雪のち晴れ
シカシナイ山まではシューが比較的快調。サクサク登るっていると、シューの真横で轟音と共に雪庇が谷底に消える。うーん。
シカシナイから先は藪と雪庇に加えてシューでも膝上ラッセル。進まない。シューで藪アスレチックをやると引っかかるのでアイゼンに変えると股ラッセル。相変わらず進まない。1821山頂でイグルー泊。

藪と雪庇の尾根
太平洋まで見えるマイホーム

12/31 晴れのちガス
カムエク南西稜の核心部に入るので、最初からアイゼンピッケル。雪庇尾根を所々腰までのラッセルしていくが、ハイマツ藪の踏み抜きも酷く、1848まで拷問に近い。
核心は1848の先の2箇所の靴幅+αくらいのナイフリッジ。左右どっちも切れ落ちてるけど、コイボクカール側なら落ちても即死はしなそうなので、そこまで緊張感はない。ロープ出してもいいかなと思ったけど、四つん這いになったり、ハイマツを掴んだりして通過。

南西稜核心部

後は大した所は無いけど、引き続き膝から股ラッセルの急登。もう吠える気力も無くなり、ヘロヘロでカムエク山頂。カムエクとピラミッドのコルで半イグルー。

カムエク南西稜を振り返る

01/01 吹雪のち止む
6時にイグルーを這い出ると、吹雪で視界が悪くヘッデンだと苦しい。暖かいマイホームに戻り、完全に明るくなってから出発。
ピラミッドへの登りは、ちょっとした岩場もあるのでアイゼンでの行動だけど、藪の踏み抜きも多く消耗する。ピラミッドからガケ尾根の頭へは岩稜をかわしながらの股ラッセルが続く。進まない。

ガケ尾根の頭の雪稜

ガケ尾根の頭南側の岩稜帯を抜けた辺りから吹雪が収まってきて、1832峰が遠くで雪煙を上げているのが見えてきた。1602のコルは吹き溜まりでイグルー建設に好適だけど、もう少し進めるだろうと色気を出したものの、雪庇尾根と藪の踏み抜きで全然進まない。天気も悪いし、正月なので早めに行動を切ろうと思ったけど、モナカ雪ばかりでイグルーも雪洞も建設不適。風が当たらない岩の隙間を除雪してツェルト泊。

01/02 雪が降ったり止んだり
雪庇地帯なので完全に明るくなってから出発。1823峰手前のピークまで、引き続き藪と雪庇のアスレチック会場。

雪庇尾根

一段上がった1737からはシューで歩ける快適な尾根になり、何事も無く1823峰に着。視界が悪いので懐からコンパスを出すとアウターのフロントジッパーの金具が壊れて雪の中に消えた。ジッパー全開固定、非常にまずい。さすがに試される大地。吹雪かれたら低体温になる可能性があるので、さっさと先に進む。
1643から国境稜線を外れてピラトコミ山に向かう。ここは地図を見て、雪稜を期待していた場所だ。だけど、実際には猛烈な藪尾根。所々ナイフリッジもあるけど、藪もセットなのでスッキリしない。おまけに藪こぎやラッセルしていると壊れたアウターの隙間から雪が入ってきて寒い。モン○ルに対する呪いの言葉を吐き続ける。ピラトコミ手前のコルでイグルー泊。

藪尾根、奥がピラトコミ山

01/03 快晴
今日はピラトコミに登って下山するだけ。でも相変わらずヤブと格闘しながらのラッセル。イライラメーターはとっくに振り切っている。絶叫しながら雪庇とヤブの集合体を処理していると、ふいに右足の接地感が薄くなり、少し遅れてズズンという音とともに雪庇が落ちていった。この山行で三度目。いい加減に学習しろよという話だけど、酷いヤブなので、藪と雪庇のコンタクトラインを攻めざるをえない
山頂直下からはご褒美のように快適な尾根になり、十勝平野を一望しながら山頂。下山は東面直登沢の右岸尾根を使ったが、地図にない小さなポコが多く意外とかったるい尾根だった(この尾根はなぜか赤札が付いている。原始性が魅力の日高への冒涜だと思う)。後は林道を歩いてダムのゲートでタクシー召喚の術。財布は冬山のようにお寒くなるが、中札内のバス停まで20kmもあるので、もうここでゴールしてもいいでしょう。

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この山行のために11日間の休みを確保しましたけど、低気圧の通過もなかったので、停滞ゼロ、予定を大幅に前倒して抜けられました。主目的だったカムエク南西稜は、間違いなく中部日高で一番美しい雪稜ルートです。ポロシリ、ナメワッカ、イドンナップ、エサオマン、カチポロ、1839峰などなど、北部中部の主要なピークを左右に眺めながら、国境稜線最高峰のカムエクに登り詰めるので、日高のど真ん中にいる愉悦を感じます。最短経路でも入下山だけで4日かかりますけど、クライミング的な困難さは低いので、もっと歩かれてもいいルートだと思いました。