谷川岳天神尾根(雪上訓練)

2017年12月3日(日)
赤井(L)、小池(記)、高嶋、柳川、山崎、谷水、柏舘(合計324歳)

赤井さんが企画してくださり、本年も谷川岳天神尾根雪上訓練が実施されました。以下にご報告します。

前夜泊組の、赤井さん、柳川さん、高嶋さん、柏舘さん、小池の5名は22時頃に土合集合。他にもう一組がいるだけでスペースは充分にあり快適だ。
酒、つまみを持ち寄り、テントでなごやかに宴会中、ピンポン玉くらいの小ねずみの来訪があった。足もまだ遅いくせに警戒心がなく、テント周囲をしばらくウロウロしており愛らしかったが、食料の管理には要注意だろう。
翌朝、山崎さん、谷水さんとロープウェイ乗り場で合流。最終便に間に合わない場合があるため、片道だけの購入にするのが良いらしい。

9時過ぎ、天神平で降車すると雪不足の不安も一気に解消、一面の雪に迎えられ心が踊った。赤井さんを先頭に、若手陣が続いてハイペースで天神尾根を一気に登っていく。


無風、雲もない紺碧の晴天に汗をかきつつ振り返ると白い浅間山、富士山まで綺麗に冴え冴えと美しい。

10時半頃、天神ザンゲ岩にザックを置き、近くの斜面で雪上訓練。
1)滑落停止
2)3名づつ2班に分かれ、肩がらみ、腰がらみビレイ
12時半から13時頃まで昼休憩後
3)スタンディングアックスビレイ
4)雪上での支点構築(スノーバー、竹ペグ、土嚢、ブッシュ等)
訓練終了
15時撤収
15時45分ロープウェイ天神平駅着、下山後解散。

滑落停止。滑落はまず、しないことが一番。次にピッケルを刺し、型はどうあれとにかく初期段階で止めることが重要。


ビレイでは、バケツを掘り足場をつくって、上部に垂直よりやや角度をつけ打ち込んだスノーバー2本でセルフをとり、腰がらみ、肩がらみ等を立ったり、座ったり、重心や向きを変えて繰り返し練習して確認した。


掘り固めたバケツの足場がしっかりしているかどうかと、体重差や落ち役の落ち方の上手下手によっても、滑落を止める難度は大きく変わることを体感できた。山崎さんは不意落ちの動きもうまくてビレイヤーは引きずり落とされてしまうのに、私が懸命に転がり落ちても柳川さんは絶妙ソフトに止めてくれて微動だにしないのだった。斜度がないため、もっと勢いをつけ駆け下りる等、負荷を強くしなくては練習にはならなかったのではと思い申し訳なかった。
肩がらみのビレイではロープを流すことで衝撃を吸収すると教えていただきつつも、不意に墜落がくると、ガツンと止めてしまいがちであった。


対して、午後の訓練でのスタンディングアックスビレイでは、カラビナを介して間接的になるためか、より安定してロープを流すことができ、力のかかり方の比較もできたように思う。


ヤッケの肩はかなり擦れて熱くなり、雪訓なので2軍装備でとの指定に納得した。
立ち位置での肩がらみは、体を棒のようにまっすぐに、ロープを体前に保持して摩擦を大きくすること、手繰り時もすぐ制動できるよう手の位置に気をつけること、とのアドバイスを頂く。

のち、支点構築の練習にうつり、まずスノーバーを使って、打ち込み角度と向きを確認しながらアンカーを作った。柔らかい雪ではV字の開放部を谷側に、硬いときは逆に打つというが岳連の行った実験では保持力の差がなかったらしく、セットしやすい向きでよいらしい。雪が硬く埋めきれないときは、露出しているスノーバー上部でなく雪面でタイオフする。いずれにしても連結するスリングは溝を掘ってセットし、アンカーが脱落しにくい下部の方向へ加重がかかるように気をつける。などなど、支点をより抜けにくく、強くする方法を様々実践した。富山県警では摩擦を高めるため、スキーのシールも使っているとの話をうかがっていたら、柳川さんが自作の現物を持っておられ、見せていただく。バーの幅に合わせてカットしたシールを貼ったとのことで、かなり引き抜きへの抵抗が増すようだった。
竹ペグは十字に重ねスリングをかけ埋める角度を変えて強度の変化を確認した。加重に対し直角にしないと、上から踏んでいても抜けてしまうなど、セット次第でかなり脆弱になることもあると感じた。


竹ペグ支点の崩壊による滑落事故の実例もうかがい、支点強度の重要性を再認識する。会に新人が入り人数が増え、活気が出てくる、丁度今のような頃合いは危ないと経験値で感じる、とのお話もうかがった。長く第一線で山をやっておられる赤井さんならではの重みある言葉に、身が引き締まる思いがした。
続いて土嚢に雪をつめ、スリングで縛り、掘った雪穴に埋め、溝から出した先端へロープを通して懸垂下降を試した。竹と比較すると、こちらはかなり安定感を感じる。


このほか、ブッシュをスコップで掘り出し、笹の枝の根元近くを束ねたクレイムハイストでも良いアンカーが得られることを確認した。


最後に、スノーボラードの概念を教えていただき、訓練終了。美しい晴天の谷川で、新しい仲間との楽しい交流もでき、充実した1日であった。

赤井さんの長く深い経験に基づいた知識、技術を分けていただいた、今回の機会に感謝しています。これからも技術と知識を身につけ危機管理能力を高め、山に向き合っていきたいと感じました。ありがとうございます。