2001年2月15日から3日間
森広、大滝(記)
2月15日 峰の原高原スキー場より大谷不動尊のベースまで
2月16日 本流(一の滝、二の滝の途中まで)
2月17日 不動裏の氷瀑F2左ルート 下山
米子(よなご)不動の存在を知ってからどれくらいの年数が経ったのだろう。
ここ数年難しい氷を登り込んで来た僕は、米子不動に行って見たいと思うようになっていた。
でもおののきが付き纏う。
あまりにも大きく難しい。
ガイドをよく読むと、大谷不動の方が少しはやさしそう。
それでも凄い所だ。
自分なんかに登れるだろうか。
たとえ登れなくてもいい、見るだけでもみて見よう。
現地に行かなければ登れるものも登れない。
出発前に経験者に会えたので、宇原川沿いに行くべきか、峰の原高原スキー場より入山すべきか、聞いたら、宇原川沿いの方が帰りに下りになるのでいい、と言われそっちから行ったら、すぐに深い雪に阻まれ車がスタックしてしまった。
今年は雪が多いのでこっちの方は駄目みたいだ。
すったもんだして、峰の原スキー場に着き、出発出来たのは11:40だった。
快晴。
スキー場内を横断して端っこに来ると、何と遥か向こうに氷が見えているではないか。
林道を板を履いたまま、ジグザグに緩く下って行く。
15:30大谷不動着。
こんな山奥に立派なお堂が建っている。
トイレもある。
広い敷地にテントを張る。
ここに居ながらにして、左岩壁の左ルート、中央ルート、右ルートが間近に見える。
ど肝を抜かれる凄さだ。
遅くて登れる時間ではないので、偵察に行く。
不動裏の出会はほんの数分。
本流まで行こうと思ったが、ラッセルになったので止めた。
ラジオが良く入り、須坂の夜景は綺麗だった。
2月16日
7:30出発 晴れ 風強し
本流に向かうが、雪が多くてトラバース道が急な雪壁になっている。
進み難いので途中で沢に降りて、詰める。
8:20一の滝、滝の右側から水が出ていて、温くて美味しかった。
ここをロープレスで越え、いよいよ二の滝だ。
でかい。
この頃より曇ってくる。
大滝リード。
左は雫が落ちているので右より取り付く。
氷柱状なのでビレイヤーは裏で確保する。
腹にぐっと来る傾斜と大きさだ。
覚悟を決めつつ寡黙に用意する。
いやー、大変だ。
声を出しつつ慎重に決めて行く。
新製品のミゾーの北辰(ほくしん)が研ぎ澄まされた日本刀の如く良く刺さる。
途中で傾斜が緩くなり、最後の立っている15mの手前で切る。
雪が降り出しおまけに
風も強まり、雪崩の心配が出てきた。
セカンドの森広さんをスノーシャワーが襲う。
登って来た彼女の眼鏡は真っ白だった。
あと15m登ると終わりだが、彼女がもう登れないと言うのでブッシュで懸垂した。
下りながら、なんて凄い所を登ったのだろうと思った。
帰りに右側壁の氷瀑の基部まで行ったが、雪の塊が音も無く落ちてきたのでさっさと逃げ帰った。
二の滝ではランニングスクリュウ5本使用。
2月17日
5:00起床 6:50出発 晴れ
不動裏のF1は距離があるのでロープを着ける。
F2は左右とも凍っているが左の方が登り易そうなのでそっちにする。
右側より取り付く。
大滝リード。
ここもビレイヤーは氷の裏。
裏で諦めを決め、行って来ます、と言う感じで表の無情な垂直の海原に嫌々飛び出す。
ここもやっぱり凄い。
北辰、ナジャ、ランボー、道具と己を研ぎ澄ませ、繊細かつ大胆に一歩一歩高みへ。
無になる自分を見出す。
やがて、傾斜は緩くなり右のブッシュでビレー。
森広さんを迎え、下降して9:10
帰京日なので右ルートは次回の楽しみにする。
テント場に戻って11:00下山開始。
13:20スキー場着。
須坂では「湯っ蔵んど」と言う湯船が幾つもある温泉センターが良かった。
次回は不動前、右側壁、不動裏の右、の各ルートを登りたい。
そう思うと胸がきゅうんとする。