2001年6月9日から2日間
赤井、柴田(記)
昨年9月の午前様の下山遅延以来の谷川だ。
メンバーはその時と同じ赤井さんとの二人きり。
きっとまた何か不幸なことが起きるのではとの悪い予感が。。。
6月9日
曇り時々晴れのちガス
湯檜曽駅で一晩明かし途中指導センターに登山届けを提出し6時過ぎに出合を出発。
トイレは建て替えられチップトイレになっているが男性用個室は1つしかなく以前に比べて落ち着かない気がした。
アプローチはよっぽど運動靴にしようかと思ったが迷った末に軽登山靴にした。
(正解だった事が後からわかる。)
快適にテールリッジ取付きまで雪渓を歩き、汗をかきかき約1時間で中央稜の取付き着。
ここで身支度をして衝立スラブをトラバースし、アンザイレンテラスに向かう。
二人ともアンザイレンテラスに行ったことが無いのでトポを見ながら見当をつけて草付まじりを登りアンザイレンテラス着、右斜め下に懸垂でダイレクトカンテ取付きらしき所につく。
頭上には見間違い様ない顕著な大カンテが延びておりルートが正しいことを確信。
1P(柴田)
取付きから直上するボルトラインも見えるが右斜めに登りブッシュでランナーを取り、フェースを直上したあと左に大きくトラバース。
ロープの流れがやや悪い。
2P(赤井)
小ハングの下までフリーでそこから人工が始まる。
大ジェードルの下を平行して左上にラインがのびており、古い残置ボルトのリングものびている。
さわると一部砂鉄化してこぼれる腐食ハーケンもいくつか。
途中遠いからとリードした赤井さんが打ったピンは素手で簡単に回収。
数手のフリー有り。
股間には衝立スラブが広がる。
久しぶりの人工に興奮しながら2P目終了点に到着。
3P(柴田)
レッジから延びるクラックに沿ってアブミの掛け替え。
フィフィを使うと随時休めるので楽チン。
時折現れるペツルには必ずランナーを取り「こんなとこフリーで登るなんてすげーなー」と感動しつつ進む。
右側のカンテに回り込む手前はややピンが遠くターザンのようになりながらアブミを掛け3P目終了点に到着。
残置5つくらいから支点を取りハンギングビレーで赤井さんに「登っていいよ」のコール。
赤井さんが登っている間にすっかり尻と腰が痛くなってしまった。
4P目(柴田)
順番では赤井さんリードだがモチも今一の様子でまた自分としても早くハンギング状態から解放されたいので代わってリードさせてもらう。
ビレーポイント右のカンテを越え傾斜の落ちたフェースを途中まで人工まじりで登り途中でアブミを手仕舞いフリーで終了点まで。
中吊りが恐いのでこまめにランナーを取る事を心がけた。
終了点でシューズを脱ぎ裸足でビレーしていたらこの近辺に住むブヨから大歓迎を受け、水虫のCMに出てくるオジサン状態でビレーを続ける。
終了点から少し上がると北稜の踏み跡に合流、懸垂4回でコップスラブ上のルンゼに降りる。
衝立前沢の雪渓の状態が悪く、ランナー無しのスタカットで各自必死のトラバース。
運動靴にしなくて良かったと思った。
その後も途中まで薮を進んだりと遅くなり出合に戻ったら真っ暗になっていた。
出合(6:15) → ダイレクトカンテ取付(8:15) → 終了(15:30) → 出合(20:30)
6月10日
曇り後雷雨
前日に引き続き湯檜曽駅で夜を明かす。
きっと雨で休めるだろうと踏んでいたが朝起きると雨は降っていない。
仕方ないと前日と同様のパターンで一ノ倉沢出合まで。
所沢ナンバーのシビック(向畑車)がチョコンと停っている。
彼らは何処に行ったかなー、と赤井さんと話しながらテールリッジを登る。
雪渓を歩いていた時は涼しかったがテールリッジに上がると突然暑くなる。
ブッシュの葉の朝露で顔を洗ったり喉を潤したりしながら歩く。
沢屋出身の自分は渇きに非常に弱いことを実感。
変チ取付が濡れていて水が流れているといいなーなどと妙な願望を抱いたりしてる。
変チには先行2パーティが取付いておりのんびりと身支度をしながら待つが残念ながら水は流れていない。
昨年中央カンテを登っているし天気も早めに崩れそうなので今日は中央カンテと合流する手前の変チを抜ける所まで、と決めて赤井さんリードで登攀開始。
1P(赤井)
大まかなフェースを直上。
前が混んでいることもありわりと短めにピッチを切る。
2P(柴田)
濡れたフェースを左上する。
残置が思ったより少なく途中ランナウト。
途中濡れたフェースを水が流れている所で喉を潤し横断バンド右寄りのレッジまで。
3P(赤井)
レッジ右側の濡れたクラックを滑らないよう注意しながら登る。
(先行のおばさんは滑っていた。)
あとは階段状の容易な岩場を越えて変形チムニーの下まで。
トポの3Pと4Pをまとめて登った事になる。
4P(柴田)
変チは赤井さんリードと思っていたが自分の順番になってしまったので赤井さんに「いいの?」
と聞くが「気にしないからどーぞ」との事。
先行のセカンドのおばさんが登り始めるのをのんびりと二人で見物する。
おばさんは出だしでいきなりフォール、バラバラと落石が起き3人で下に向かい「ラックー!!」
その後もなかなか進まずチムニー出口で左に抜ける所で何度もフォールし苦労している。
ビレイヤーから蜘蛛の糸のようにお助けシュリンゲが降りて来るが、それを掴むが力が残っていないのかそれでも登れない。
何度も我々に「ごめんねー」と声を掛けてくれるがどうせ我々はここを抜けるまでなのだからと「いえいえ、のんびりやって下さい」と応じる。
それでも幾度となくフォールを繰り返すおばさんを見ているうちに「そんなに難しいんだっけ」
と不安になってきた柴田は『IV、A1 or V+』とトポにあるのを見て「フリーで登りたいし」
と言い訳しつつザックを置いて登る事にした。
ようやくおばさんが登り終え我々の番になった。
チムニー手前の浮いている大岩に注意しつつ濡れたチムニーに入る。
要所に残置が有り途中からバックアンドフットでおばさんが苦労していた出口手前まで。
手の平サイズのクラックに左手を決め、濡れた岩角に右足を決め暗いチムニーから明るい外へ出る。
チムニーの亀裂を慎重にまたいで右側に戻りビレーポイントへ。
赤井さんも問題なく登ってくるが最後の所で腰のバイルハンマーが岩に引っかかっていた。
さて、予想通り天候も悪化の前兆が見えてきたのでスタコラと登った所を懸垂で下る。
登っている最中もそうだったが中央カンテ、凹状方面では頻繁に落石が起き「ラクーッ!」の絶叫がこだましている。
こんなところに長居は無用と中央稜取付きまではクライミングシューズを履いたままスピーディに戻る。
中央稜取付きでポツポツ降り始めテールリッジから雪渓に移る所でとうとう豪雨・あられ・雷の大合唱になる。
赤井さんは有名な変色した元ゴアのカッパを取り出して着ているが自分はもういいや、と濡れるに任せる。
振り返ると烏帽子スラブが一条の滝になっている。
出合に戻り着のみ着のままで一ノ倉沢を後にした。
向畑車がまだそのままだったことが気になったがまあ途中から倉田さんの携帯に電話すればいいや、と思っていた。
結局帰途では倉田さんの携帯は留守電のままでしたが、あの時間どこでどうしていましたか?
出合(6:15) → 変チ取付(7:45) → 変形チムニー上(11:00) → 出合(13:40)