南ア 甲斐駒ヶ岳 赤石沢奥壁Aフランケ 赤蜘蛛ルート

うおーーー!!イキってる河合

2016年8月6日~8日
薄田、河合(記)

何年か前、立ち読みしてたら目に留まった、Aフランケ赤蜘蛛6p目を登るクライマーの写真。目が奪われました。以来、赤蜘蛛を登ることが目標でした。
赤蜘蛛ルート、強い人はスーパーな感じのラインをフリーで登るようですが、私の力じゃ無理。ということでAA1含め人工の練習をしつつ、機会をうかがいました。今回、薄田さんが付き合ってくださるということで、登ってきました赤蜘蛛。

5p目終了点近くからスーパークラックを見上げる

8月5日
薄田さんは職場の納涼会とやらで、集合したら23時を過ぎていました。一路夜叉神峠へ。朝っぱらから外が賑やかでろくに寝られなかった・・・
途中のバス車内では、添乗員さんが「ここがシレイ沢でございま~す♪運が良いと滝を登るクライマーの姿が見られま~す♪」カモシカと扱いが同列なんですけど…我々クライマーは珍獣扱い…?

8月6日
今回は暑くてきつそうな黒戸尾根を避け、北沢峠から甲斐駒8合目岩小屋を目指しました。
7:15 北沢峠発。快晴。仙水小屋で水6リットルを汲んだら荷物が26kgに…重い…
13:35 8合目岩小屋着。バテバテ。日頃のトレーニングをサボっていたツケか…今日はここからが本番。私も薄田さんもAフランケは初めて。取付どこ~?ということで下見です。
岩小屋から真下~左に続いている踏み跡を辿る→八丈沢横の尾根に乗る→巨岩帯をFIX等使って通過→枯れ木に打ち込まれたハーケンを足場にFIXを降りる→T字路に当たったら左折→八丈沢に近付いて草付に降りたら右にターンし岩壁に沿って進む→踏み跡とFIXに導かれてがしがし降りる→左方向の八丈沢に降り立ち沢の中を下る→どう考えても行き止まりの断崖手前で右岸のバンドを岩壁沿いにトラバース→さらに八丈沢の岩壁を左手に見ながらFIX便りにがしがし下る→最後は右にトラバース→黄色い太いFIXを頼りにトラバース→Aフランケ右フェース到着→基部付近の薄い踏み跡を辿り、基部奥のブッシュ内にあるルンゼ状をFIXを伝って下る→さらに草付トラバース→赤蜘蛛取付
でした。
FIXを頼りに下る

右フェース基部からルンゼ状を下る

誤った踏み跡に入っては修正しながら1時間15分で取付に到着し、ガチャをデポ。赤テープや白テーピング、FIXなどは結構ありますが、判りにくい箇所も時々あり、初見で暗い中行くのは難しそう。踏まれていた植物も大分前のようで、最近は人が入っていなさそうでした。
空身で登り返して岩小屋に戻りました。ヘロヘロです。岩小屋の標高が2690m位、取付が2330m位だったので、標高差360m下ったことになります。こんなに下るのか…
この日から最終日まで、岩小屋は貸切でした♪

8月7日
アタック当日です。快晴。明るくなってから出発。
鳳凰岳方面の絶景

今度は1時間で取付着。前日通ったにも関わらず1箇所道を間違えました。この日、Aフランケはまさかの貸切!
Aフランケ

6:35 ちょっと遅くなってしまいましたが、登攀開始。以下、書いてあるピッチ数とグレードは、新版日本の岩場(上)と合わせています。

1p目:A1 or 5.11b(リード:薄田)
初っ端からハング越えの人工。噂のとおり2ピン目がやたら遠い。人工なのにこんなにピンを遠くする意味があるんだろうか、と愚痴りながら、朝一で動かない体に鞭打ってA1。時間短縮のため、今回唯一チョンボ棒を使用。最後の2手位はフリーですが簡単。ロープは25mも出ず。
取付から1p目を見上げる

2p目(前半):5.8(リード:河合)
快適なハンドサイズのクラックが真っ直ぐ続いていて、来て良かった!と思える快適なピッチ。もちろんフリー突破。欠点は意外と草ボーボーなこと。ロープが25m出ないうちに明瞭なテラスに支点を発見。次の支点が見えなかったので、念のためピッチを切りました。ここまで1時間。キャメ#1、#2を使用。
2p目前半をフォローする薄田さん

2p目(後半):(リード:薄田)
傾斜が少し立ってきたコーナークラック。引き続き草ボーボー。20m位登ったら支点があり、ここが2p目核心だったようです。薄田さんすんません。フォローだったし、問題なくフリーで通過。
2p目後半の核心を見上げる

3p目(前半):Ⅳ、A1 or 5.10b(リード:河合)
左のフィンガーな感じの草ボーボークラックにハーケンがチラっと見えます。こんなのフリーで行けねぇよぉ~ということで迷わずA1。草の中のハーケンを探します。ハング下のリングボルトトラバース手前でピッチを切りました。ロープまた25m出ず。それにしてもAフランケすごい~
3p目前半をフォローする薄田さん

Aフランケの綺麗な岩壁

3p目(後半):(リード:薄田)
私がピッチを切った支点、過去にピッチを切ったパーティが多かったようですが、薄田さんは「その先で切らないと次のピッチでロープの流れ悪くなるから、もっと登っておけよ~」と指摘。そのとおりで、さらに10m位A1で登ってV字ハングを少し回り込んだところ(下からは見えない)に支点があり、薄田さんにそこで切ってもらいました。さらに左側のラインにもボルトがあり、そちらからも行けたようです。また短く切ってしまった…薄田さんすんません。七丈小屋へのビール調達係が確定。
V字ハング下のトラバース

4p目5.8:(リード:河合)
V字ハングを横から乗越します。リングボルト3つのラダーがあり、A1できそうですが、支点だけ使ってフリーでトライ。見えない所にガバホールドがあり、通過したと思ったら、突如出現した谷川テイストなジャパニーズボロ壁。浮石そこそこ、見つけたハーケンは1つのみ。灌木にショボい気休めランナーを取りながら20m位登り、大テラスへ。ロープは25m位だったような。ここで大休憩。
大テラスから4p目を見下ろす

5p目5.7:(リード:薄田)
灌木の生えたジェードルを登り、左のスラブ状を登ってからカンテ状。フリーで登っても特に難しくないピッチでした。スーパーなクラックが見えてきてテンションが上がります。右にアブミが落ちてました。多分6p目登っていて落としたものと思われます。ロープはまた25m位だったような。
5p目のスラブ状をフォロー

6p目AA1 or 5.11c:(リード:河合)
時間は10:30。ついに来てしまった大核心の6p目。リード頂きます!ガチャ大集結。始めはリングボルトのラダーですが、クラックに来るとピンが部分的に消失。ナッツやカムをきめ、乗り込んでは最上段~2段目に立ち、クラックにジャミングしてバランスとりながらまた次をセット、を繰り返していきます。上部まで同様のクラックが続いているので、弾数が均等に減るようセット。終了点が視界に入り、手前にハーケン連打が見えてひと安心。終了点はリングボルト3つ。ロープ40m位の長いピッチで、リードに45分かかりました。ガスがかかったり晴れたり。
カムはフィンガー~ハンド1セット、ナッツ#7,#12の2つ、ヌンチャク10位(途中間引いた)使用。このピッチ、ガチャの使用数は人によると思われるので、行かれる方はくれぐれも自己責任でガチャ持っていってください。
長い6p目

6p目をフォローする薄田さん

7p目Ⅳ、A1:(リード:薄田)
6p目のフォロービレイから7p目のリードビレイは今回の核心。ハンギングビレイで腰まじで千切れそう。人工の速い薄田さんのビレーでこんなきついんだから、遅い人のビレイだったら、7p目も継続リードじゃないと耐えられなそう。アブミかけて乗ってみたり、体勢入れ替えたり色々試しましたが、もっと根本的な対策をすべきだったかも。7p目は恐竜カンテ乗越の単調なA1で、ピン間隔も普通でした。腰千切れかけてボロボロ状態でのフォローは魂飛び出そうでしたが。
7p目をフォロー

8p目Ⅳ、A1 or 5.10b/c:(リード:河合)
左上→右回り込みつつ太いダケカンバにランナーを取る→右手にあるフェース→針葉樹の生えた大テラスへ。最後のフェースはリングボルトですが、フリーでも行けそうな感じ。でも、さっき魂が口から出かかったばかりなので、慎重を期してA1で通過。
8p目核心フェースをフォローする薄田さん

9p目Ⅱ~Ⅲ:(リード:薄田)
木登り+ルートファインディングのピッチ。意外と傾斜は立ってます。薄田さんは40m位ロープが出たところでピッチを切ってました。
9p目の木登り

10p目Ⅱ:(リード:河合)
ほぼ踏み跡の明瞭な歩き。20m位ロープを出た所で岩小屋に到着!14:15。登攀時間7時間40分でした。つ、疲れた…10pのところ12pで登ったりして時間食ったのが反省点だけど、初見同士だし、こんなもんかなぁ。
岩小屋で口から魂飛び出た河合

これで1日が終わりだと思ったら大間違い。まずはガチャとロープを全部岩小屋まで担ぎ上げ、次は七丈小屋まで水汲み+ビール調達です。8合目岩小屋から七丈小屋まで標高差300m位あるので、ヘロヘロの体には中々に堪えます。戦利品を背負って岩小屋に戻ったら17時過ぎてました。ビ、ビール、旨すぎる…っ!昨日はワラワラいたブユもおらず、快適でした。

8月8日
この日も快晴。甲斐駒山頂経由で稜線散歩しつつ、北沢峠まで4時間半くらいかけて降りました。荷物が5kg軽いだけでこんなにも楽になるものなのか…
黒戸尾根からの絶景

憧れのAフランケ赤蜘蛛ルート。噂に違わぬ素晴らしいルートでした。こんなルートを40年以上前に初登した方の優れた眼力、実力には敬服するばかりです。

備忘録とか(河合の私見ですのでアテにしないでください)
・要体力。フリーで鈍った足に、重い荷物の登山はしんどかったです。
・岩小屋からのアプローチは要ルートファインディング。初見でヘッデンだと多分迷うので下見がおすすめ。
・ルートは、フリーのピッチもあるけど(通常のクライマーには)人工が主体。A1をスピーディーにこなせないと時間食います。
・ルートは概ね明瞭。4p目後半、8p目、9~10p目で若干注意が必要。
・岩は4p目後半以外とても硬く快適。4p目後半の落石は2p~3p目のジェードルに落ちていくので厳禁。先行パーティがいる場合2~3p目は上方に要注意。
・中間支点の間隔は4p目後半、AA1の6p目を除き概ね適当かつ潤沢。でもビレイ支点含め古いリングボルトが多い。1p目の2ピン目がやたら遠く、背の小さな人や時間と体力節約したい人はチョンボ棒あった方がいいかも。
・ガチャはフィンガー~ハンドのカム2セット、ナッツ2セット、ヌンチャク20弱持っていきましたが、明らかに過剰でした。私はフィンガー~ハンド1.5セット(キャメ#0.4、0.5、2のみ2セット)、ナッツ1セット、ヌンチャク15で充分と思いました。でも上にも書いたとおり、人によって使うナチュプロはかなり変わると思われます。6p目のクラックはガタガタしていてナッツの効きが良いです。2p目はハンドサイズが複数個欲しい。

コースタイム
8/6:7:15北沢峠→13:35/14:10 8号目岩小屋→15:25/45赤蜘蛛取付→17:00 8号目岩小屋

8/7:5:10 8号目岩小屋→6:10/35赤蜘蛛取付→7:35 2p目(途中)フォロー終了→10:30 6p目リード開始→11:15 6p目リード終了→11:55 6p目フォロー終了→12:20 7p目リード終了→12:40 7p目フォロー終了→14:15 /45 Aフランケ岩小屋(登攀終了)15:20/30 8合目岩小屋→(七丈小屋往復)→17:10 8号目岩小屋着。

8/8:5:55 8号目岩小屋→10:20 北沢峠(いつもどおり薄田さんはもっと早かった)

甲斐駒ヶ岳 黒戸尾根

2016年1月10日(日)~11日(月)
薄田(単独、記)

行程:
1月10日(日) 竹宇駒ケ岳神社 5:30 – 七丈天場 12:30
1月11日(月) 七丈天場 5:30 – 八丈下降点 7:00 – 中央稜取付 7:30 –
竹宇駒ケ岳神社 14:00
いろいろ有って(30有余年?)初めて奥壁中央稜の取付に行きました。
1月9日
夜、越谷を出発し0:00過ぎに白州道の駅(名称は正しくない)到着。一人なので車で寝る。
1月10日
周りの車の中にも寝てる人がいるので静かに出発。竹宇駒ヶ岳神社まで移動する。
3連休なので駐車場は満車状態。
準備して出発する。当然雪は全くなし。
何回登っても黒戸尾根はキツい。ロング&急登のコンビネーション。
「ガチャ&ロープ」が無いのに十分キツい。
雪は五丈くらいから顔を出す程度。やはり少ない。
七丈について小屋を覗くと管理人不在である。
軟弱にも小屋の素泊まりにしようと思ったが、しようが無いのでテントを張ることにする。
流石に雪が有り、水の心配が無くなった。
何もすることが無いので、焼酎を少し飲んで18:00に寝る。
20:00頃、人の声に起こされる。
話の内容では、黄蓮の右俣でも登ってきたらしい。
男2、女1で遅くまで喋っているので、よっぽど文句を言おうと思ったが、女性(若そう?)がいるので我慢した。
1月11日
テントは張りっぱなしで出発。
何かお腹に違和感を覚える。
キジ場が下の小屋なので、下ってくるまで我慢することにした。
これがいけなかった。
30分も経つと下痢止め「ストッパ」が必要な状態になる。
八丈直前で岩陰も無く、周りはバッチリ明るくなり、悪いことに小屋泊まりの山ガ-ルを含む登山者がヘッデンを点灯して登ってきた。
「ヤバイ」「やばい」「もう我慢の限界です」
20m先に小さな岩陰を発見!そこまで気合いで我慢する。
「間に合った」
八丈下降点分岐点は写真のでかい岩場手前で左に下るバンドを下降する。
小さな尾根を2つ越えると奥壁が登場。
後は慎重に取付迄下る。やはり雪が少ない。
中央稜は写真の中心。
中央稜取付
ルートは直線的ではないみたい。
取付はクラックかな?残置ハーケンがある。
30分くらいウロウロして下山する。
周辺ウロウロ

甲斐駒ヶ岳 篠沢七丈瀑

1999年1月21日~22日
大滝(記)、板橋、森広

1月21日

8:30 竹宇神社駐車場出発 晴

雪は少ないが地面が凍っていて時々滑る。

対岸の尾白川林道には積雪は認められない。

14:40 五合目着

小屋の中にテントを張ってから、取り付きの方へ行ってみる。

20分程登山道を登った所にある橋が降り口だ。

かなり急で滝までは遠そうなので、小屋へ引き返した。

夕食は板橋君 入魂のおでんと、ビール、いいちこ、森広さんの蜂の巣酒でおおいに満足。

1月22日

4:30 起床 6:20 出発  快晴

橋より急なルンゼを下って行く。

途中左より一本ルンゼが合流するので地形を覚えておく。

下の方に来ると氷瀑が出て来るが上手く回り込みながらアイゼンなしで取り付きまで行けた。

8:10

1P目30m
容易なので各自ザイルなしで勝手に登る。

2P目20m
右上ぎみのトラバース。

3級程度だがアンザイレンする。

大滝リード。

ランニング2本で岩壁のビレイ点に着く。

このビレイ点は、ずっと心配していたのだが、ロックハーケン4枚にシュリンゲもまあまあだったので、安心出来た。

さあ、これからが本番。

どどーんと20mぐらい聳えている。

氷の大きさと傾斜に畏怖を感じながら気を引き締める。

辿るルートは計画段階では、右の凹角が中央よりは少し容易そうなので、凹角を登るんだろうなと考えていたが、中央がそんなに難しくないように感じたので、折角来たんだから一丁やったろかと決心を固め、左上しながら中央を登った。

3P目 25m
ランナーはスクリュー4本。

右手には気にいっているシモンのナジャ。

左手にはカジタのスーパーバナナピック。

アイゼンは今回の為に前爪を新調したグリベルのランボー。

ナジャは良く刺さるが、深く入ると抜け難い点に注意。

カジタ、スーパーバナナピックは今季の物で、良く刺さり良く抜ける。

体を上げた時に脇を締める事に集中して登って行ったら、疲れずに登れた。

傾斜が落ちた所で、アイススクリューでピッチを切る。

最終ピッチは、右のブッシュ帯へ森広リード。

2級+ 20m。

11:15

終了ブッシュに残置シュリンゲがあったので懸垂。

2P目終了点に楽々届いた。

更に1回の懸垂で取り付きに着く。

11:50 着

登山道を登り返して

13:10 登山道着

13:50 五合目着

17:30 竹宇駐車場着

*ガイドブックには、午前中陽が当たって水が流れると書いてあったが、そんな事はなくてむしろ暖かくて登り易かった。

装備  スクリューハーケン、核心部の3P目でランニング4本、終了点で2本打った。

もっと打つ人で計8本位か?

 

 

甲斐駒ヶ岳 赤石沢Aフランケ赤蜘蛛ルート

1999年1月15日~1月17日
向畑(記♂38歳)、杉浦(♂29歳)

~最初に感想~

赤石沢は全く初見で取付いたため、アプローチ等の状況がよくわからなかったことや、15日に着いた新雪の処理に手間取ったことなどから、登はんに2日を要し、下山も遅い時間になってしまった。

しかし、壁の概要を把握した上で、もう少しいろいろと考えて登れば、充分1日でも抜けられる壁だと思う。

ルート自体は、クラック、リス等の弱点をつなげたラインで、しかも、巻いたり、回り込んだりせずに、壁の中心部を攻撃的に突いている。

その昔、某クライマーが余分なボルトをたたき落とした気持ちも、個人的には大変よく理解できた。

1月14日

100m先からでも来たことがわかると言われている、騒音が近所迷惑なスカイラインで杉浦君に迎えに来てもらい、竹宇駒ヶ岳神社手前にあるという、無料駐車場を目指す。

1月15日

寝たのがかなり遅かったため、6:30起床、8:00頃からのんびり歩き始める。

8合目の岩小屋がわからない、というよりも、8合目自体がどこだかわからないことや、多分明るくならないと、Aフランケへの下降路がわからないから、7合目に泊まっても同じだということで、非常に快適だとのうわさを聞いていた七丈小屋を目指す。

神社を過ぎ、山道になってきた頃から雪がちらつき、高度が上がるにしたがい、だんだんと積もり始めた。

15:00頃、7合目に着く頃には結構な積雪になっていた。

1月16日

5:30出発。

天気は晴れ。

甲斐駒往復の登山者の他、左ルンゼ、中央稜、Aフランケ白稜会ルートなどに向うパーティが泊まっていたが、既に小屋には誰もいなかった。

8合目からはトレースを追い、Aフランケ基部へと下降。

白稜会ルート1ピッチ目に取付く先行パーティにお礼を言って、となりの赤蜘蛛ルートを登り始めた時には、既に9:00を過ぎていた。

この段階で、早くもビバークを覚悟していたが、ただ、この時点では、大テラスから1~2ピッチはフィックスできて、翌17日には余裕を持って抜けることができると考えていた。

1ピッチ目、杉浦リード。

フォローは全ピッチユマーリング。

ラダーの人工だが、ビレーポイントのテラスに雪がどかっと乗っており、払い落としに苦労していた。

2ピッチ目、向畑リード。

2~3ピッチ目は、70mほど続くジェードルにクラックが走っている。

残置は少ないが、フレンズ、エイリアン、キャメロットなどから選んだサイズがおもしろいように決まるので、普通の人工とそれほど大差なく登れる。

3ピッチ目、ビレーポイントが狭く、入れ代わりが面倒なので、そのまま向畑リード。

内容は2ピッチ目と同様だが、残置が増え、ずいぶんと楽になる。

4ピッチ目、杉浦リードでカンテを人工で回り込み、ワンポイントのフリーから再び人工、さらにハングの乗っ越しに果敢に挑むが、ここではまる。

ハング上には新雪が乗っており、ホールド、スタンスとも乏しいみたいだ。

最後のアブミからハング上に立ち込もうとするが、ついつい足がアブミに戻って来てしまう、ということを5~6回繰り返し、あえなく敗退。

ロワーダウンでビレーポイントに戻って来た。

リードを交代し、気合を入れてハング上に立ち込むが、目の前のスラブには30cmほどの新雪が乗っている。

ピッケルを振り回して除雪しながら、細かいスタンスに立ち込み少しずつ進むが、ふくらはぎがしびれてくるので、浅打ちナイフブレードのタイオフからスカイフック、再びナイフブレードのネイリングと、アブミに乗って休みながら除雪を続ける。

スラブから小ハング上の残置ハーケンにピッケルを引っかけ、アブミをかけてさらに除雪。

結局、ハング上から、大テラスまでの約20mくらいは、除雪と、ふくらはぎがけいれんしそうな立ち込み、抜けそうなネイリングでの休憩の連続だった。

冒頭に登場した、某クライマーの同じクラブの後輩にあたる、ある先鋭的クライマーが執筆した「氷雪テクニック」には、冬季登はんにもちいるピッケルは、「長ければ長いほど良い」と書かれていたが、この時ほど短身のピッケルがもどかしいことはなかった。

この結果、大テラスにフォローを迎え入れたのは、ビバークタイムとしては最適な16:30となっていたので、余計なことはせずに、さっさとビバークの準備を始めた。

シェラフカバーしか上げていなかったので、夜はさすがに寒かった。

1月17日

天気は快晴だが、寒くて体がなかなか動かず、登り始めたのは8:00を過ぎていた。

5ピッチ目、向畑リード。

短いクラックからスラブ、さらに短いクラックからビレーポイントへ。

クラックの部分はフレンズ類の人工。

6ピッチ目、杉浦リード。

出だしのラダーからリスが延々と続く。

ロープスケールも40mほどあり、とても見栄えのするピッチ。

ただし、リスには最初からハーケンが打ってある。

部分的にリスがフレアーするところだけ、エイリアンやロックスを使っていたみたい。

7ピッチ目、向畑リード。

カンテを人工で回り込み、やや右上。

8ピッチ目、杉浦リード。

ワンポイントの人工からフリー、再び人工で樹林帯に突入。

9ピッチ目、向畑リード。

木登りでロープを目一杯伸ばし、Aフランケ頭の岩小屋の下でピッチを切る。

15:00頃終了。

そこでロープをたたみ、白稜会ルートから赤蜘蛛ルート上部につなげたらしい先行パーティのトレースをたどる。

8合目の稜線には16:00頃着。

七丈小屋着17:00、デポを回収、荷物を整理し、17:30下山開始。

満天の星空のなか、甲府の夜景に向って黒戸尾根を下った。

駐車場着23:30頃。