1998年2月26日
荒井・森広(記)
曇~雪~曇
6:20くらいに美濃戸山荘下の駐車場から歩き出す。
北沢に入るとモナカ雪のラッセルになり、進まないので、最初は日ノ岳稜を登る予定だったが、一番近い石尊凌に変更した。
スラブ状の取り付きの壁を登り、安定した岩稜から雪稜になる。
アプローチでは咋日降った雪はほとんど積もっていなかったが、登るにつれて新雪が増えてきた。
上部岩壁の基部では不安定な積雪がかなりあったので、トラパースして縦走路に出るのは危険に感じた。
上部岩壁はすべてガバホールドで易しく、不安は全くなかったが、雪壁になってから少し登ると、アイゼンの爪で硬い旧雪を掟えることができなくなった。
「感じ悪いな」
と思いながらも5mほど上に見える岩を目指してさらに登ると、スリップしたような感覚があって、雪が動き出した。
自力では止められずに、ザイルにぶら下がって止まった。
易しいからといって9ミリ1本で登っていたのだが、止まってよかった。
自分で雪崩を出したのは初めてで、これで危ない雪の感触がわかったような気がする。
もう1本のザイルで確保してもらって登り返し、そのまま雪壁を登る。
かなり広範囲の雪が落ちたようで、硬い旧雪しか残っていないからこの場はもう安心だ。
確保支点を作ろうとして首にかけていたシェリンゲがなくなっているのに初めて気付いた。
やはりあわてていたのかもしれない。
縦走路に出ても、踏み跡は全く残っていないし、ホワイトアウトしてしまって、ルートがわからず、時間がかかる。
雪面をトラパースしなければならないところが出てきたので、危ないからザイルで確保してトラパースしたら、期待に応えて再び雪崩がおきた。
何とか見えるうちに地蔵尾根の下降点までたどり着いたが、まもなく暗くなり、迷いながら下降する。
下ると新雪は浅くなり、行者小屋付近にははとんどない。
時刻は18:40になっていた。