1998年3月21~22日
荒井・森廣(記)
3月21日
曇
夜半に土合に着いた時は霙が降っていたが、明るくなると晴れ間も見える。
南稜目指して一ノ倉沢をつめていると、上の方で妙な音がした。
見上げると、滝沢から雪煙が広がりながら落ちてくる。
逃げた。
怖いから一番取り付きの近い一・ニノ沢中間稜へ、戻って取り付く。
2月に登ってかなり苦労した記憶があるが、今日の雪は締まって安定しており、一足早く五月の山の感覚だ。
懸垂下降してからスタカットで登っても、駆け上がるような勢いで、先行パーティにもまもなく追いついた。
核心の雪綾では2パーティ待ちになる。
時刻も早いし、天気も曇りだがすぐに崩れる気配はなく、視界も良い。
雪稜の雪も安定していて、拍子抜けするはど快適だった。
東尾根の第一岩峰には先行パーティが張り付いていて、さらに1パーティが待っていたので、めんどくさいから巻いてしまった。
国境稜線へはしっかりした踏み跡に従って、雪庇の切れ目を越えて出る。
出口が少し登りにくい。
17時、下ることもできる時刻だが、肩の小屋に泊まる。
ビバークの予定でシュラフカバーだけのはずが、荒井さんはしっかりシュラフを持っていた。
小屋の中で食べ物も水もあるので気楽だが、やはり寒い。
荒井さんはさっさと熟睡している。
3月22日
曇~晴
ホワイトアウトで西黒尾根の下降点を見つけることができず、天神平に下ることにする。
こちらのルートは大勢登ってくるので舗装道路になっている。
少し下ると視界が良くなり、まもなく晴れてきた。
けれども谷川岳の山項は変わらず雲の中。
天神平からは歩いて下りたかったが、またも通が見つからず、仕方なくロープウェイで下る。