2020年9月19日~22日
河合(記)、川上
マルチピッチクライミングには、色々な取り組み方がある。エイドorフリー。ピンクポイントorレッドポイント。オールリードorリード&フォロー。ワンプッシュorフィックス。壁のすっきりした部分で終えるor登山の原点に戻ってトップアウト。理想は、ワンプッシュかつオンサイトフリーでのトップアウトと思うけど、中々それは難しい。
今回、既に2度敗退している黄道光に、2年ぶりにチャレンジすることになった。パートナーは同じ位登れる川上さんなので、今回は以下のルールでトライ。
- 黄道光の終了点は壁の途中で中途半端なので、北沢デラックスの最終ピッチ5.11bを経由して前衛フェース頂上へ抜ける。
- 実質クライミングの2ピッチ目5.11a、4ピッチ目5.11c、5ピッチ目5.11c、6ピッチ目5.11bは下から順に各自RPする。進行スピードを合わせるかは、その場の具合で判断
- フィックスロープを許容。
- 荷上げあり。
- 個別ピッチRP時は、クイックドローの残置は許容、カムは回収。
- 最終的に、リード&フォローかつノーフォールで前衛フェース頂上に抜けることを目標とする。
9/19
そんなことをまじめに行きの車内で話し合っていたら、うっかり伊那ICまで行ってしまったぜ。当初予定では前日夜行のつもりだったけど、前日は雨。以前の経験からびしょ濡れサンシャインクラックが予想されたので、ゆっくり昼間運転で16:30槍見温泉着、17:50錫杖沢出合のテン場着。
9/20
確か7時過ぎから登り始めたはず。
1ピッチ目(Ⅲ級)リード:川上
川上さん「ロープ要りますか?(いらねーだろ)」河「朝イチなんでお願いします」当然のように川上さんはノープロで登って行った。
2ピッチ目(5.11a)リード:河合(×)→川上RP→河合RP→川上フォロー
朝イチからハングは辛い。下部のコーナー核心をパンプしながら抜けるも、上部でライン取りをミスってボルトが消失、魂のクライムダウンで最後力尽きて落ちてしまった。川上さんは一発でクリア。北沢デラックスへ向かうKさんAさんパーティを見送り、河合も再トライ。指が冷えまくって感覚無くなるも、何とかRP。4年前にトライしたはずなのに、最初からこれはまずいなぁ。体感5.11b。しかも、冷え切った指で、6年連れ添ったマイクロトラクションを落としてしまい、がっくし。荷上げはムンターで何とかした。なお、川上さんは全く指冷え問題なかったとのこと。これが二子山クライマーと城ケ崎クライマーの耐寒性の差か。
(先にさくさくと登っていくKさん)
3ピッチ目(Ⅱ級)リード:河合
KさんAさんパーティが上に抜けるのをじっくり鑑賞してから、行動開始。北沢デラックス、めちゃかっこいい。このピッチはただの草付トラバース。ホールドはガバ(灌木と笹)。
4ピッチ目(5.11c)リード:川上(×、×)→河合RP→川上RP
核心かつハイライトのサンシャインクラックを擁する55mのロングピッチだ。河合は2年前に1度トライしていたので、川上さんがオンサイトトライ。しかし、残念ながら出だしのハング越えではまってしまい早々にテンション。余程悔しかったらしく、すぐにロープ引き抜いてリトライするも、第2ハング越えと、クラック後のフェースでテンションが入っていた。やはり、厳しいようだ。
河合は2年前にびちゃびちゃのクラックに耐えるも第2ハング越えまでは繋がっていた、はずなのだが全くムーブ記憶にない。とりあえず出だしからランジになったぞ、おかしいな。今度は湿気ているクラックをだましだまし登ると、鬼門の第2ボルトセクションに来ていた。「ここまで来たら(もう1回やりたくないから)落ちられねーな。」慎重に一番確実そうなムーブを選んで抜けた。今回はガバから蛙が飛び出すこともなく、40m地点のテラスへ。後半のライン取りも悩み、少し行っては探りを繰り返し、以前登った時のライン取りと違うような気もするけど、何とか一発で登ることができた。ムーブは核心でもイレブン前半、休めるところも結構あった。でも、55mのスケールは肉体的にも精神的にも体力が必要で、体感5.11c/d。
こうなると川上さんにプレッシャーがかかる。緊張した面持ちの川上さんは、それでもきっちり次の便でRP。さすが決められる男は違うな。物静かな彼には珍しく、ロアーダウンしながらガッツポーズしていた。
(川上さん珍しくガッツポーズ!下降はフィックスしてグリグリ)
今日はここまでで時間切れ。4ピッチ目終了点と、2ピッチ目終了点にそれぞれ60mロープをフィックスして撤収。(2ピッチ目終了点にはロープ出して戻った。)
9/21
この日も7時20分にスタートしようとするも、左方カンテと共通の1ピッチ目は混雑。ユマーリングなので~と途中で入れてもらえて(無理やり入って?)感謝。朝から空中ユマーリング、3ピッチ目だけまたロープ出して、8時40分に5ピッチ目開始。
(これ全部ユマーリングとか憂鬱)
5ピッチ目(5.11c)リード:河合FL→川上FL→河合フォロー
このピッチは以前ビレイとユマーリングしたことがあるので、オンサイトトライではなかった。けれど、やっぱしムーブわからないぞ。行っては戻りをまた繰り返して前半の悪い核心を抜け、クラックに入った。カムをヌンチャクで延長するの忘れて、ロープの流れが悪くて重いけど、クラックに入ってしまえばこっちのもの。フィンガーロックをきめてランナウトさせて突っ込んだら、5.11b/cセクションが終わっていた。後半の5.11aセクションは、最後油断ならなかったけど根性決めてムーブ起こしてFL。上部はちょっと脆くて注意が必要。
また川上さんにプレッシャーかけてしまった。何か悪いなぁ。しかしそこは川上さん、また彼にしては珍しくムーブやレストポイントを尋ねられたけど、テンポよく、ビレイヤーの見た目ではあっさりとFL。このピッチは、ワンプッシュトライ時は私の担当かなと思ったので、フォローでもう一回登っておいた。ザック背負ってもノーテンで行けた。わかってしまえば、このピッチもイレブン前半のムーブだ。が、しかし、40mの長さはやはりしんどく、体感5.11c。
6ピッチ目(5.11b)リード:川上OS→河合FL
黄道光の終了点はハンギングビレイで、一応両手離して立てるけど、ちょっと中途半端だ。上には気持ち良さそうなフェースがボルト3つ分続いていて、北沢デラックスの最終ピッチとなっている。「これは登るのが自然だよね。」と川上さんと意見が一致、さあ、もうひと踏ん張り。
川上さんはあっさりとOSして一言「5.11bもないっすよ」。河合はかなり必死にFL。ムーブは悪いけど、今までの長いピッチに比べればかなり気楽だ。体感5.11a/b。
終了点は明らかなテラスがあったけど、残置ハーケン3つとボロいスリング。(後でこの6m上にハンガーボルト残置ビナ付きを発見)仕方ないので捨て縄で補強してカラビナ残置して(後で自分達の追加した分は撤去したのでありません)ロアーダウン。
個別RP完了ということで、15時位にさっさと取付に戻って、翌日のワンプッシュに向けて英気を養った。この日、黄道光は我々以外にワンパーティトライしていた。前来た時はチョーク跡さえなかったのに、良い時期は、人気だな~
9/22
さあ、勝負のワンプッシュだ。また7時過ぎにスタートしようとしたら、後続パーティも黄道光とのこと。オンサイトトライの邪魔するのも悪いし、我々が全部一発で行ける保証もないので、先に行ってもらうことにして、7時20分スタート。
1ピッチ目(Ⅲ級 30m)リード:川上
先行パーティが左方カンテ1ピッチ目終了点まで行き過ぎたので、やはり先に行かせてもらうことにした。例によってノープロ川上さん。
2ピッチ目(5.11a 30m)リード:河合
さすがに3回目じゃ落ちられない。出だし勢いよく2ボルト目にクリップしようとしたら、クリップしていた1ボルト目のヌンチャクからロープが外れた。こういうことってあるんだな~。力入ったけど、問題なくクリア。体はちょっと固い、指は昨日から血だらけだけど、動いている。もう3日目だし、やっと錫杖の岩に体が馴染んできた感じだ。でもバックロープもシングルなんで地味に重い。川上さんもノーテンフォロー。
3ピッチ目(Ⅱ級 20m)リード:川上
お散歩(草)。
4ピッチ目(5.11c 55m)リード:川上
呼吸を整えて、いざスタート。と、思ったら、Zクリップじゃね~か!!川上さん魂のアンクリップ。彼には出だしが鬼門らしい。その後立て直して、本人曰く「かなりやばかった」けど無事ノーテンで抜けていた。流石だ。こんな気合入ったクライミング見せられたら、フォローで落ちるわけにはいかないので、ノーテンでフォローした。
5ピッチ目(5.11c 40m)リード:河合
55mフォローしてから40mをすぐリードできる体力はなく、20分位休んでスタート。3度目でムーブに悩むことはない、と思いきや、下部核心でまごついてしまった。でもカラーランプが点灯するほどではなかった。最後の核心では疲れていて、思わず声が出たけど、確実に再登。途中のヌンチャクに余ったカム残置したりしたけど・・・川上さんは「きついっす」とか言いながら、めっちゃ笑顔でノーテンフォロー。この時点で黄道光完登!
(まだ本気の川上さん)
(5.11b/cパートを終え、めっちゃ笑顔の川上さん)
6ピッチ目(5.11b 15m)リード:川上
まだまだ旅は終わらない。このピッチは川上さん爽やかに再登。河合は、うっかり荷上げ荷物に入れるの忘れてしまったカムとヌンチャクのせいで、どっさり加重クライミング。足切れたりするも、短いのでパワーでねじ伏せノーテンフォロー。ちょっと落ちそうだった。
7ピッチ目(Ⅴ級位15m)リード:川上
ここからは、前衛フェース頂上に行ったことがあるという川上さんに任せた。テラスから直上したところ、わかりにくい位置にボルトと残置を発見、その後10m位左上気味に登ったところの灌木にあった残置でピッチを切っていた。
8ピッチ目(Ⅳ+級位25m)リード:川上
フェースの境界線に沿ってさらにカムをきめつつ左上。先ほどまでの爽やかなフェースはどこへやら、抜けそうな灌木掴んだり、ジャルパインテイストだ。最後はヤブに突入したら、ちゃんと左方カンテの最終ピッチ出だしの終了点に出ていた。
9ピッチ目(Ⅲ級40m)リード:河合
最後は歩きと、ほんの少しのクライミングで、気持ちよい笹原の前衛フェース頂上に出た。13時50分、リード&フォロー、ノーフォール、ワンプッシュで黄道光デラックス(仮)9ピッチ、完了!
(@前衛フェース頂上)
下降は注文の多い料理店側に降りた。左方カンテ終了点各所の懸垂下降支点に残置カラビナが1枚しかなく、しかも左方カンテ組が皆平気で残置カラビナ1枚で懸垂下降していることに愕然。仕方ないので1枚ずつカラビナを足して降りたところ、3枚も消費。持っていかないでね。さらに先行パーティが懸垂3ピッチ目で見事にチムニーにロープスタック、ヘルプを頼まれ、注文の水平テラスに降りる予定が、我々まで大テラスに降りることになってしまった。我々のロープはチムニースタックを小技で回避、やれやれだぜ、と思ったら次のピッチで落石してしまった。すんません。
何はともあれ、無事に降りてきて、翌日の予報がいまいち、かつ登攀欲を上回る温泉欲と食欲(主に河合)に突き動かされ、最終日の予定を変更して早々に下山した。誰だろなぁ、最後は深夜特急で締めるとかいう活きのいい計画書作ってた奴は。
そんなこんなで、黄道光デラックス(仮)を、今の我々にできうる多分最良のスタイルで完登できました。条件、パートナーに恵まれ、素晴らしいルートを、疲れてもなお次から次へ出てくる核心、落ちられないプレッシャーなど諸々含めて堪能できたのが良かった。
いつか状況が許すようになったら、こんなクライミングを、ヨセミテのあの例の世界一☆の多いと呼ばれるルートで、オンサイトでやってみたい。そのためにはまだ力が足りない。がんばろー。