奥多摩 盆堀川棡葉窪、三郎ノ岩道窪

1997年6月28日
中嶋(記)、宮島、板橋

大洞川井戸沢の予定だったが、日曜に台風が来るということで小常木に変更。中央道、塩山経由で柳沢峠を越え三条新橋でテントを張る。勝沼インターから三条新橋までは真っ直ぐ行けば1時間くらい。意外と近い。ビールを飲んで3時頃寝る。

28日

朝から時折雨がパラついていたので小常木もやばいということになり、こういうときでもないといかなそうな盆堀の沢に行くことになる。車で青梅まで下って盆堀についたのが10:00。

車は棡葉窪の出合いまでしか入れない事になっている。はじめに一番手前の棡葉窪を登る。全くの空荷で、共同装備は車のキーと時計くらい、

何をしに行くのか判らない風体だ。既に雨が降り始めていた。相当つまらないがはしゃぎながら登っていく。一応ちょっとした滝やゴルジュがある。こんな所に先行パーティがいたのには驚いた。30分もかからずに登攀終了、仕事道を下る。仕事道の途中、急に視界が開けたので宮島さんと「うおー」と叫んだら、すぐ近くに林業の人がいて驚かせてしまった。

車に戻ってトポを確認してすぐにお代わりをしに行く。伝名沢三郎ノ岩道窪、出合いからかなりの間はかなりつまらない河原歩き。クモの巣を払う棒を持ってガキの散歩のようにして進む。堰堤を3つほど越えてから急に沢は楽しくなってくる。直登できるそこそこに楽しい滝が連続する。大滝は思った以上にでかく、巻きもそれなりに手こずった。後は薮しか無いというところで、右の尾根にでた。踏み跡を拾っていくと棡葉窪の下降路と同じ所にでた。 とにかくずっと雨の中だったので全身ずぶぬれ、服をぬらしたくないので裸のまま3人で車に乗って数馬の温泉に向かった。数馬の温泉は五日市から車で30分はかかる。けっこう遠い。夕飯は彦バン。

 

 

足尾 ウメコバ沢中央岩峰

1997年6月21日~6月22日
瀧島(記2)、板橋(記1)、水柿

【記1】

ウメコバ沢の出合までは、車止めのゲートからジャンダルムや黒沢を見ながら1時間ほどの歩き。ウメコバ沢出合にテントを張って、中央岩峰へ。松木沢の徒渉は、要サンダル、F1.F2は固定ロープあり。踏跡をたどり中央岩峰に基部まで出合より45分。

中央岩峰左岩壁右岩稜チコちゃんルート 9P Ⅳ+

1P目は、右岩稜上の枯木をめざしロープを伸ばす。2P-4Pは岩稜上を適当に登る。5P目の御大の岩場といわれる核心部は、左の松島クラックⅣ+は、キャメロットをかまして登る。あとは頭まで適当に登る。

御大の岩場以外はⅢ級程度(あえて登るならいくらでも難しくできます)ですが、残置の類はほとんどないので(ビレイ用も)ご用心。各種ハーケン・ナッツ・キャメロット等は、感動するぐらいよく利きます。ナチプロの練習にはよろしいかと。

中央岩峰正面壁凹角ルートダイレクト 6P Ⅴ+

4時間以上かかった

1P・2PともにⅤ級程あり、残置ハーケンは腐り切っていてドキドキグレードが高い。エイリアン、キャメロットでランニングをとる。3P目のダイレクトの核心はスベリ台状の細かいフェースで、残置は沢山あるが、ギアが重く、チンドン屋状態の私にはかなり辛い。Ⅴ+になっているが10a以上に感じた。

4PもⅣ+程をエイリアンをセットしながら登り、砕石帯へ。(落石要注意)あとは頭に向かって適当に登る。Ⅲ程度

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中央岩峰の下降は、頭から10メートルほど左岩稜方面に歩き、コルに突き上げるルンゼ目指して右斜めへブッシュの中をクライムダウン、さらにルンゼを下降し、懸垂下降40メートル。(支点あり)あとは歩いて降りれます。

中央岩峰に関しては、岩は硬いが、残置ハーケンは、鉱毒の影響なのか、ほとんど腐っているので、ナッツ・フレンズ類は1セット、ハーケン5枚程度あるといいと思います。よく利きます。飲料水はどこでもとれます。

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【記2】

89年の秋に日帰りで2回松木に入った。宇都宮の水口の案内で、中央岩峰の凹角ルートをトレースした。近くて気に入った岩場なので3週間後にもう1度同じルートを登ってしまった。殺伐としてはいるが、静かで岩も想いのほか固く楽しめる。その後8年間も無雪期の松木に向かわなかったのはなぜだか自分でもよく分からない。

8年ぶりの無雪期の松木沢は草木がずいぶんと茂って前回に受けた荒涼、殺伐とした地獄の世界といった印象はない。岩と緑がうまく調和していて気持ちの休まる山に変わっていた。

6月21日 快晴

ゲートから1時間ほどでウメコバ沢の対岸につき、テントを張る。昨日までの台風で水量は多くアプローチには苦労しそうだ。ウメコバ沢に入り中央岩峰までの滝はどれも左岸から簡単に超えられる。正面に凹角ルートは、はっきりと分かる。昼近くになったのでやさしいと思われる右岩稜ルートに取り付いた。トップはすべて板橋。ゲレンデの右端を1ピッチ(Ⅳ)で稜上に出る。稜上を3ピッチ(Ⅱ~Ⅴ)で垂壁のクラックのしたについた。クラックは25m Ⅴ 級、その後稜上を2ピッチ(Ⅱ~Ⅳ)で肩に出た。対岸のチャンピオン岩稜もすごい迫力だ。ビレー点を15m程移動してヘッドウオールの快適な2ピッチ(Ⅲ+)登ると頂上だった。中央岩峰の入門ルートで楽しいクライミングができた。頂上からの下降路は裏側のルンゼを30mほどクライムダウンした所に懸垂支点があるが、ここまでの下りは慎重に。40mの懸垂下降で歩けるルンゼに降りられる。

テントに戻るとすぐに暗くなり、後は貸し切りの広い河原で酒もたっぷりある楽しい夜を過ごした。

6月22日 晴れ

今日は凹角ルートに向かう。水量はかなり減った。3回目のトレースになるわけだ。かって知ったルートのはずが、1ピッチ目からやたらと悪い。自分の実力が落ちたのか、それともルートが変わったのか、残置もかなり減ったように思えた。前ピッチ中、すべてにⅤ級以上を感じてしまった。自分のからだが完全になまってしまって、やたらと難しく感じたのだろう。

少し早いが、1本で上がることにした。ほかのルートの偵察をして明るいうちに、ゲートの車に戻った。次回はみんなを連れてきて、合宿でもしようと思う。

 

 

妙義山 ホトケ沢~並木沢下降

1997年6月15日
桜井、中嶋(記)、宮島、板橋、水柿

14日工事渋滞がひどく、着いたのは結構遅かった。寝たのは3時頃。

15日

特筆すべき事として、ホトケ沢が、沢のトポと概念図とエアリアと地元名によって異なるということ。おかげでどれを登るかで結構考えてしまった。ホトケの出合いは貧弱で水もない。しかしすぐに水がでてきて楽しめる滝が連続して現れる。後はひたすらそんな感じ。

柱状節理が発達しているところでは、滝はかなりきれいというか面白い形になる。ほとんどが直登でき、もしくは簡単に巻ける。わたしと宮島さんは巻いてしまった滝を他はザイルを出して登るなんて事もあった(20m大滝)。そこから始まるナメはだんだん傾斜が増していって、仕舞には恐くなって尾根に入ってしまう。大汗をかいて稜線にでた。谷急の頂上はまあまあの景色、でも天気がそれほどさえなかった。並木の下降点にはテープがあった。必要ない。ギリギリで下れる滝が何回かあって楽しめる。懸垂は2回。30m大滝は予想以上の迫力でかっこよかった。下降は結構悪かったけど。ホトケと比べると並木はかなり迫力があったきれいだと思った。途中のゴーロが残念だけど。登山道からはあっという間に民家の裏にでる。かなりの里山でした。

 

 

西沢渓谷 西のナメ遡行~アザミ沢支流下降

1997年6月7日
中嶋(記)、宮嶋

6日の夜にいつものように綱島に集合。八王子で水柿を拾うはずだったが、結局拾えなかった。先週に続いての西沢渓谷なのでスムーズに行けた。車で快適に寝る。

7日

やはり朝はゆっくり。山の神までは一気に行く。ホラの貝の突破は厳しそうだ。御築江、乙女、東ナメと美しい花崗岩の出合いを通り過ぎて、西ナメの出合いに着く。ちなみにスラヴ大賞は東ナメだった。西ナメはいきなりワイヤーがかかっているのが興ざめだ。私は運動靴のまま、宮島さんはラバーで登りはじめる。ちょうど良い傾斜で快適に登れる。2段40mは結局ワイヤーのごぼうで登ってしまったが、かなりおっかなかった。途中ワイヤーが動いた。かなりやばいと思う。

ここまで一気に来てしまったが、ここできれいなナメは終わりだった。もっと味わって登るべきだったのかもしれない。この後小さい滝が続いて、急に樹林の中の静かな沢に変身する。それはそれで良い雰囲気だった。途中からずっと赤テープがうるさいくらいあって、ちょっと腹立たしかった。石塔尾根は薮が多くほとんど展望は利かない。とは言っても反対側は良く見える。適当にアザミ沢めがけて降りはじめる。もっと良い踏み跡があったのかもしれないが、悪いところはなかった。途中からは里山の中の小川下りという感じで、これまた、それはそれで良い雰囲気だった。林道には意外なほどあっけなくでた。

林道にでてしまえば山行は半分終わった気になってしまう。しかしこれが大きな罠で此の後西沢本流の沢下りをやらされることになる。地形図の登山道はまったく存在を確認できなかった。いい加減沢を下ったところでゴルジュになってきて困難な雰囲気になったので、枝沢をかなり登って軌道跡にでた。道として使えなくはないが、結構スリリングだった。軌道が空中を走っていたりして。この道は途中から急に整備され、トロッコの歴史を書いた看板があったりする。

 

 

唐沢岳幕岩 大凹角状ルート

1997年6月5日~6月6日
大滝(記) 、森広

5日

6:30七倉ゲート出発

7:20高瀬ダム

8:30金時の滝左高巻き終わり

9:40大町の宿(幅12m奥行き5m 水あり フライシート不要でツェルトも吊り下げて張れる)

10:50取り付き

1P3級 部分的に濡れていて怖い。

2P3級 個々も少し濡れていて怖い。

3PA1、4級 洞穴上をトラバースしていたらフレーク状の大きなスタンスが剥がれ大落石となって取り付き及びアプローチのルンゼに落ちていった。(登る人もアプローチ中の人も要注意)。

4P4級 ボサテラスより左へのトラバースが怖くA0にする。

5P4級 緩く開いたジェードルだが窪みの部分がずうっと濡れていて怖い。乾いていれば快適そう。

6P3級 傾斜の緩いスラブだがピンが2本のみなのでじっくり進む。

7P2-3級 容易な草付き。

8PA1 ここはA1フェースの基部でピッチを切ったほうがスムーズになる。

9P4級 快適にスラブっぽく左上。

10P4級A1 あぶみでチムニーを快適に右上(ピン多い)回り込んだ所はテラスになっていて、大きな岩のブロックが積み重なっている。微妙に前傾っぽいここをフレンズ1ハーフを噛ませて岩の縁を掴んで登るがぐらりと動きそうで怖い。このピッチが一番面白く感じた。最後のルンゼに入る前にザイルの流れを考えて木でピッチを切る。

11P 緩い泥ルンゼを15m、最後右に出て終了。そこが右稜の頭。

16:0024度C

踏み跡を15m下ってドーム壁の落ち口に立つ。懸垂下降で右稜のコル到着。

18:00

6日

朝からガスが濃く、岩も濡れているし午後雨がふるらしいため下山。

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・アプローチの唐沢は怖い。

・残雪はA沢とワシの滝との間にあったが通過に支障はなかった。

・B沢には多くの雪がありシュルンドが開いているように見えた。

・正面壁左側のルートは取り付きにくいかもしれない。

・人工の箇所では5、6ヶ所リングなしシュリンゲ代用のボルトがあった。

(誰か打ち替えて下さい。)ハーケンは打たなかった。

以上

 

 

富士山 サミットフォール

1997年5月31日~6月1日
森広(記)、板橋

吉田口から火口壁にに出て、火口をのぞくとそれらしい氷瀑が見える。銀名水へ向かって火口の縁を歩きながら観察する。登るラインは何通りか取れそうだが、特に上半分は不安定に見える。31日は銀名水付近に泊まり、1日に火口の中に降りる。

1日は快晴。気温が上がってくると雨のように水が滴ってくるし、細かい氷片や石まで落ちてくる。左寄りは氷が薄く、氷柱も細い。中央は下まで達しないので、右寄りから登る。一段登って岩の凹角の下から氷柱に取り付くが、正面は壊れて登れなくなったので、左に回り込む。傾斜の緩いところには中途半端に固まったザラメ雪が載っているので、バイルはあまり効かない。ザラメ雪の下には氷があるはずだが、とどかない。スクリューもほとんど効いていないようだ。腕よりも細い氷柱は触れるだけで折れてしまう。

下部はそれでも太めの氷柱があるが、傾斜の強くなる上部は細い氷柱しかない。近くで見るととても登れるような状態ではない。岩の凹角から登って左にトラバースするとしても、一番氷柱の細い所を通らなければならない。3段ほど登った所から敗退。

ここまで登るには登ったが、降りるのはかなり怖い。板橋君に凹角の下まで登ってきて確保してもらい、慎重にクライムダウン。凹角下から岩にハーケンを打って懸垂下降で戻る。岩は脆くてハーケンの効きもいまいちなので、そっと降りる。

今年は雪が少ないから氷の発達も悪いのか、気温の変化がうまくいかなかったのか、この氷瀑を登るチャンスを捕まえるのは、難しそうだ。

 

 

西沢渓谷 ヌク沢左俣右沢遡行~ナメラ沢下降

1997年5月31日
中嶋(記)、宮島、水柿

30日

21:00綱島集合 翌1:00西沢渓谷

31日

6:00頃からハイカーが賑やかで目がさめる。ヌク沢は出合いの橋に名前が書いてあるのですぐ判る。登山道が横切るまでの1時間ほどはゴーロが多くて単調。そこから先も二股までは最近できた堰堤がいくつかあって腹立たしい。大事な税金を使って勝手にあんな邪魔で汚いものを作るのはやめにできないものかと、沢に来るたびに思う。二股から上はようやくナメ滝も多くなってきて楽しめる。あっという間に大滝に着く。全て足すと200mほど、これはさすがにでかく迫力がある。しかし登ってしまえばあっけない。稜線までは特筆すべき事はなく、薮こぎはないが結構ばてた。結局ヌク沢ではロープを出さず。

ナメラの下降点までは一般道を50分位、結構登る。途中の避難小屋でだれて大休止してしまった。西破風山を少し過ぎたところから突っ込む。薮が浅いところを縫って降りていくと、大草原のエンディングみたいなきれいなところに出た。この頃には雨だと思っていた天気が晴れになってきていた。ナメラ沢はとにかくナメが多い。水柿がはじめウォータースライダーしていたが、どこか打ったらしく敗退していた。ヌク沢よりはきれいで、下降に使うにはもってこいの良い沢だと思った。下降中二股は確認できなかった。どういうことだろう?下りの林道は。すぐにR140の工事現場に出て、工事中の必要以上に立派な国道を下って無料駐車場に戻った。

 

 

利尻山南稜

1997年5月6日~8日
櫻井(記)、荒井、大滝

利尻山南稜から北稜。「岩と雪の稜」というよりも「氷と風の稜」でした。

5月5日

15:30稚内  17:20鴛泊  19:00ヤムナイ沢出合い

羽田から直行便100分で稚内。フェリーに乗り継ぎ90分で鴛泊。東村山の家を出て10時間後にはもう出合いのテントの中にいた。時間だけを見ればもう利尻は「さいはて」とは言えそうもない。

 

5月6日

6:00ヤムナイ沢出合い 7:00大曲り手前の台地で天気待ち 14:00行動再開 16:30
950m地点設営

ヤムナイ沢右岸の林道をしばらく行き沢に降りる。標高300m程度だが沢には十分雪が残っている。大曲り手前の台地にくると雨が降り出したのでテントを張り、中で様子をみることにした。昼過ぎから雨が上がり日も差し始めたのでふたたび歩き出す。砂防ダムのすぐ手前から左の雪の斜面に入り、斜上する。稜線を吹く風がまわりこんで雪面のザラメ雪を吹き飛ばす。露出している手や頬にビシビシと当たってこれがかなり痛い。

700mあたりで稜線に上がる。稜線は弱いブリザード。ハイ松の密生する稜線を避けて左斜面に雪面を拾いながら進む。900mを越えたあたりで雪を削りテントを張る。一時強かった風も日暮れには弱くなり、鬼脇や本土の街の夜景が美しかった。

5月7日

4:40 出発 5:40 1300mピークからのアプザイレン 6:40 最低コル 8:30 大槍基部 10:50 P2ピーク 12:30 バットレス取り付き 15:00 S字状ルンゼ上 16:00 北峰ピーク 17:00 八合目長官小屋

快晴無風の中ブッシュ混じりの雪稜にアイゼンをきかせる。1300mピークからは20mのアプザイレン。大槍、バットレスが目の前に大きく立ちはだかる。思ったより雪が少なく、壁は黒々として困難が予想される。小さな登降をくりかえすと最低コルへのアプザイレンとなる。左へ振られながらの20mとブッシュのなかの15mをつづけて下る。ここから大槍まではフレーク状の岩稜の右の雪面を快適に登る。雪の状態も天気も良く、はるか足もとの海岸線を見ながら鼻歌も飛び出すところだ。大槍は基部5mほどがきびしく、かぶり気味のクラックをブッシュたよりに強引に越す。雪が詰まっていれば楽だったかもしれない。ここから左に回り込んでP2とのコルに出る。風が強くなる。全ての岩の表面はベルグラで厚く覆われている。P2はブッシュの稜を登り20mほど行き最後に岩を抱き込んで右に回り込むと下降点にでる。ここは右の雪のつまったガリーをしたからつめても良い。

いよいよ有名なP2のアプザイレンとなる。最初は20mほどリッジに沿って降り土と石のピナクルに着く。私はヤムナイ側へ下って右に大きくそれてしまったためこのピナクルへのトラバースに大変苦労した。土と石のピナクルは直径1m高さ1mのきのこ土!。たくさんの残置ロープ、シュリンゲが「まあ、我々も大丈夫だろう」と思わせる。ここから泥のナイフリッジに沿って35m降りるとP1とのコルに立つ。強い西風の吹くコルに立ちこの泥のナイフリッジを見上げていると、来ては行けないところに来てしまった気分になる。P1は途中からトラバースしブッシュと泥の浅いルンゼを肩に出る。傾斜が強いのでここからロープをつける。ひだりから回り込み容易なクライダウンでバットレスとのコルに出る。そのまま15mほど岩の詰まった凹角を登りバットレスの基部に着く。ここまで3ピッチ。コルの通過では強い西風にロープが空中で水平に弧を描いた。バットレスの取り付きには新しいリングボルトが2つとハーケンが2つ残置されていた。

ここで12:30と昼を過ぎてしまい、八合目の小屋に着くためにはタイムリミットぎりぎりとなっていた。スピーディーな登攀をするぞっ、と気合いを入れ直してバットレスに取り付く。1ピッチ目はバンドを右はしまで行きA0で4mほど上がり右上してチムニーに入る。チムニーを残置を信じてズリ上がる。フェース状を左上するとハイ松の太いのがたくさん出てきてここでアンカーを取る。35m、IV級A0。2ピッチ目はこのハイ松の中を登り左上の浅いルンゼを目指して傾斜の落ちたフェースを登る。浅いルンゼを登り切ったところでまたハイ松にアンカー。30m、III級。3ピッチ目、広いバンドを右にすすみルンゼへ入る。すぐに2mほどのツララ状氷瀑。これを左から越えてさらにちいさな氷瀑を抜けると雪の豊富に詰まったS字状ルンゼが見えてくる。S字状に少し入って左のハイ松でアンカー。40m、III級。S字状ルンゼを歩くようにして難なく上がると南峰下のリッジにでる。35m、II級。強い風とホワイトアウト。ロープピッチが終わっても少しも楽にならない。これが利尻か、と実感する。岩峰を2つ右から巻くと小さな祠に出会う。これはあとから南峰直下のものとわかった。一般ルートの証拠が現れ、幾分緊張が和らいだ。3人で握手を交わす。風が強く荷物を下ろして休むような気分にはなれない。さらに稜上を忠実にしばらくいくと雪のピーク、本峰に立った。そして立派な祠のある北峰ピーク。いくらか風が和らぎ、話をする余裕ができる。ほんの数分、ガスが切れ、島の大半を覆うマシュマロの様な雲海が見下ろせ、そして雲の波のすぐ先にローソク岩が氷りついたまま立っているのがわかった。台風なみのメイストームはすぐそこまで来ている。急いで八合目の小屋をめざし北峰を駆け下った。

5月8日

16:00 八合目小屋 19:00 鴛泊

7日の夜から8日の昼過ぎまで暴風雪となった。この長官小屋は鉄骨作りの丈夫なもので、われわれは、安心して停滞できた。しかし、ここに7日中にたどり着かなかったら、と思うと紙一重の幸運に感謝せずにいられない。ぶ厚いベルグラ、エビノシッポ、絶え間ない強いブリザード、数時間も一定しない天気。

ここでは細かいルートやテクニックの話だけをしていても全く通用しない。しんどい「山」そのものを楽しめる図太さが求められる。華麗なテクニックをスマートにこなす意味もチャンスも与えられないのだ。5月でさえこんな状態のこの山で厳冬期に記録を残したクライマーたちに敬意を表します。

北アルプス 赤沢岳西尾根(猫の耳)

1997年5月3日~5月6日
瀧島(記)、森広

山の記録は、家に帰ったら早めに書いた方がよい。一ヶ月もたつと忘れてくる。初めの計画では、ダムから赤沢岳西尾根を登りスバリ岳西尾根または中尾根そして最後に針ノ木岳西尾根で決めるという、ワクワクする計画であった。後立山を三回も登下降するヒマラヤにも通ずる長大な高度差だ。パートナーの森広さんは尋常では考えられない登はん意欲と体力の持ち主だ。

5/3 晴れ時々曇り

7:20 ダム発 12:20西尾根上 14:20 2250M 付近の岩小屋

出発前の心配は雪の少ないこと。その予想は見事に当たりかなり時間を食ってしまった。トロリー乗り場で彼女づれで来ていた山本さん達と会い一緒にバスに乗り込む。室堂まで行き剣沢をスノボーで滑るというおじさんらしからぬ計画だ。いつものトイレの横から出て20分ほど林道をトラバースする。登れそうな雪面を左上しすぐにロープを出すはめになった。亀裂の走った不安定な雪面、リッジの木登り、凹状草付×2の計4ピッチ。雪が例年並ならロープはいらなかったと思う。途中クレバスを越えるところからアイゼンを付けた。ひたすら急登で昼過ぎにやっと西尾根上の緩傾斜にでた。見上げる猫の耳は全く雪を付けていない。しばらく進み2250m付近に岩小屋を見つけて、すこし早いが今日の宿にする。

5/4 雨後晴れ

12:40岩小屋発 18:40本峰とのコル手前

完全な庇の下だったのでテントはほとんど濡れていない。朝、出発しようとして庇の外にでると雨は意外と強かったので、もう一度寝直す。おかげで睡眠不足は完全に解消できた。12時40分テント発。雨は完全に上がったが、猫の耳の登りのコルまで雪が少なくヤブこぎで時間を食う。猫の耳は右から回り込む。みごとな奇峰も裏を回れば簡単にクリアーできるとはずだったが、雪面をしばらく進んだあとのやせたリッジにルートを取るがここもひどいヤブ。途中、トップは空荷でザックを荷上げしたりで、時間かかった。猫の耳の上は痩せた尾根でヤブをこぎながら東峰へ。ここからヤブの中をシングルロープ3回の懸垂でコルへ降り立つ。Ⅲ峰の登りは見た目は悪そうに見えたがロープも使わずにクリアーできた。本峰とのコルの手前の雪庇の上にテントを張る。

5/5 雨後晴れ

9:05B.P.発 11:40赤沢岳 13:00スバリ岳中尾根2ピッチ敗退 16:00B.P.

夜中雨だった。夜が明けてもまだ止まない。ゆっくり飯を食べて、雨が上がってから出発。しばらく稜上を進むが途中から右側の雪面にルートを取る。頂上に着いたときは快晴だった。赤沢岳は後立山主稜線上の目立たないピークだけど、途中に猫の耳を持った急峻な西尾根がある。西尾根から登った赤沢岳は立派なピークだった。この時、当初の計画の針ノ木岳西尾根はすでにあきらめ、稜線から少し下って取り付けるスバリ岳中尾根を今日中にかたずける事にする。ルートを良く観察してからスバリ岳とのコルに荷物を置き取り付きまで下る。易しそうに見えたルートはかなり悪くて2ピッチで敗退する。時間はまだあったけど二人ともやけにあきらめが早かった。重い足取りで稜線まで登り返した。

5/6 曇り後雨

5:00B.P. 7:30扇沢

テント場は稜線上の風の通り道で、風が強く夜中にフライをはずす。天気の回復は望めそうもないので、テント場から直接雪の斜面を針ノ木雪渓目指して下る。途中、ふきのとうを摘みながら歩く。扇沢につくと同時に土砂降りになった。

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関電トンネルができてからはトロリーバスが走る春の連休には赤沢岳西尾根にはアプローチゼロで取り付ける。それなのに何故か人気のない静寂を保っている。見おろせば、まさに真下と言っていいほどの眼下に場違いなダムがあり、その上を歩く人の群が見える。愚かにも大自然に勝ち誇ったが如くダムは存在する。赤沢岳の西尾根は途中に奇峰、猫の耳を擁し一気にダムまで切れ落ちている。西尾根に取り付く登山者はダムからいきなり黒部の大自然のまっただ中に放り出され、ひたすら高見を目指す。

思えば今回は赤沢岳の山頂でカモシカの二人パーティに出会ったのみで春の連休の北アルプスとは思えないほど静かな山登りができた。

猫の耳を西尾根上から観察すると壁は急で脆そうに見える。多数の洞窟状の穴がありそのひとつは反対側まで抜けているように見えた。次の機会に確かめてみたいと思う。

以上

 

北穂高岳 滝谷出合い~滝谷第四尾根~D沢下降

1997年4月24日~26日
櫻井(記)、細田

4月24日

9:30 新穂高 13:10 滝谷出合小屋

白出沢あたりからは残雪が深い。チビ谷周辺は底雪崩のデブリで歩きつらい。出合いに着くと、小屋に荷を置きすぐに雄滝の下見に出る。デブリは古く、周囲の斜面も安定した感じを受けた。下見の結果、雄滝は

10mほど岩が出て水流が音をたてて流れていたが、雪と氷がつながっている右から上れそうな印象だった。

4月25日

3:00 小屋発 6:00 B、D沢合流点

ヘッドライトをつけて小屋を出る。零下の気温に雪は締まってアイゼンが良く効く。雄滝は右側の雪渓を上がれるだけ上がって、シュルントをまたいで氷化したスラブに乗る。その後逆くの字にバンドと雪をたどって落ち口上に出た。

20m程度のピッチだった。滑滝は完全にデブリの下。息を切らして合流点左上の雪崩から安全な所に上がり小休止。

7:00 スノーコル

テールリッジ状に落ちてきてC沢とD沢を分ける第4尾根が目の前にはっきりとわかる。この付近の地形については出版されている資料にも間違っているものがあるので多くを当たっておく必要がある。C沢に入り左俣を分けてからスノーコルに上がる。結局、雄滝以外は岩の露出したところは無かった。

16:30 ツルネの頭

雪稜ありゴチャゴチャのミックスあり、フェースの人工ありの3ピッチを終えてAカンテ基部に着く。目の前にせり上がるAカンテとその背景のツルネ正面壁、グレポン、ドームなどがすばらしい。やっと朝日も当たり始め、しばし幸せな気分で休憩する。すべてのホールドは堅雪や氷に覆われてピッケルのブレードが大活躍する。セカンドで登る時でも、これは必要だった。

あとでわかったのだが、私は左利きで左のホールドを丁寧に掘り出すのだがパートナーは右利きで右のホールドを確実にしたい。そんなわけでお互いパートナーがトップで掘り出したホールドに満足できなかったようだ。計8ピッチでツルネ頭に着く。前進用、アンカー用にナッツ、フレンズ、ハーケンを多用した。大半は厳しいピッチでトップは毎回1時間近くを費やした。結局ツルネの頭の雪を削りここにツェルトを張ることにした。ジフィーズを回し食いする夕飯を終えると、西の空、笠が岳の上に彗星がくっきりと非常に美しかった。

4月26日

7:30 懸垂下降開始 11:00 Dカンテ上 12:30 稜線

筆者

残置のすごい束になったのを使って20mのアプザイレンでコル。ここで泊まっても良かったかもしれないが、雪崩、落石の危険があるのと、なによりあの美しい彗星が見られたのはすばらし経験だったのだから。雪壁までの残り2ピッチも厳しかった。Dカンテ上部はカンテラインに戻れず右の凹角をアブミで越えた。稜線までの雪壁は安全を期して、隔時登攀のまま登ったが新雪があったらイヤな斜面だ。岩に手を掛け、「よっこらしょ」と立ち込むと、前穂北尾根が見えた。そしてはるか下に涸沢ヒュッテがあった。またラストピッチをもらってしまった。気分も最高に「ビレイ解除!」と叫んだ。

13:30 D沢下降開始 15:30 滝谷出合小屋

D沢はアイゼンをはずしてかかとのキックステップと尻セードで雄滝まで快適に飛ばす。雄滝はフィックスに導かれて右岸のトラバースから懸垂下降で下る。

以上。