北岳バットレス 下部フランケ~Dガリー奥壁

2002年8月17日
浅野、柴田(記)


困った時のバットレスと言う訳ではないが谷川が雨で登れそうも無い時にはよくバットレスに転進を考える。

無雪期に日帰りのアルパインが楽しめる壁としては谷川と共に貴重な存在であるがバットレスは余りルート数が多くないのでバットレスカードは大切に使わなくては、と思っている。

計画3度目の二ノ沢右壁も結局天候不順で取り止めとなった。

「ここ3日間午後は必ずしとしと降っているよ」

との指導センターの情報でやむを得ない。

現代のサラリーマンクライマーはこういうところであっさりしていると言うか物分かりが良いので事故も少なくなっているのだろう。

大切な家族もいる身としては全くその方向に異論はない。

山は少しずつ遠ざかるが無理する事はなく、55才まではアルパインクライマーでいられると思っている。

という事で夕方にバットレスに転進を決めたのは良いが既に谷川の予定で自宅を出てしまった自分はトポしか持ってきてないのでエアリアか地形図を持ってくるようにこれから一度帰宅してから来ると言う浅野さんにお願いした。

お互い仕事が遅くて結局午前1時30分に八王子集合となる。

交替で運転し、夜明け前の4時に広河原に着いたのは良いが二人とも睡眠不足でフラフラな上、雨もジャンジャカ降っている。

やむを得ず1時間だけ眠ろうと言う事にして爆睡に落ちる。

7時頃一度ウトウトしたがまだ雨が降っているようだったので眠り続け結局8時少し前にようやく起きる。

雨は止んでいるが言い逃れの仕様が無いお寝坊である。

「やっちゃった」と諦めのよい私は早くもインドアへの転進が頭をよぎるが浅野さんは大して動じる事もなく「じゃ、行きますか」という反応。

今からだと壁に取り付くのが昼近くなるがまあ仕方ない、下部フランケ~上部フランケ~Dガリー奥壁の計画だったが上部フランケをスキップすれば何とか日のあるうちに頂上に抜けられるだろう、と概要を判断して(結局その通りになった)8時30分頃に出発。

バットレスのアプローチは行きは大して長いと思わないが帰りがいつも長く疲れる。

やはり日本第二の高峰、ナメてはいけない。

チンタラ歩き二俣に着くと自動発電トイレはいつもながらのポンポン蒸気船のような軽快な音を立てていた。

ひょっとして昨年来ずっとポンポンいっているのかな、と思ってしまう。

下部岩壁帯に11時過ぎに着き、身繕いの後登攀開始。

時間が無いのでいちばん簡単な5尾根支稜を選ぶ。

<5尾根支稜>

1P目(柴田) Ⅲ級の傾斜の寝た容易なリッジ。

2P目(浅野) 小フェースを越えてハイマツ混じりのリッジを進む。

3P目(柴田)ちょっと歩きその真中のルートからのフェースっぽいところを登ると下部フランケが目の前に展開する。

<下部フランケ>

1P目(浅野)大きな畳のようなツルンとしたフェースに走るクラックを使い登る。

畳に立ち込む所とバンドに上がる所が難しい。

浅野さんはバンドに上がるところであっさりとA0を使って越え、ビレイ中の柴田は「これぞアルパインクライマーの鏡」と感心する。

フォローした柴田が涼しい顔をしてA0で抜けたのは言うまでもない。

2P目(柴田)頭上のクラックからフェース。

フレンズ残置有り。

3P目(浅野)ピンがベタ打ちのチムニーからフェース。

4P目(柴田)同じようにチムニーからクラックを登り左のフェースに抜ける。

上部フランケの取り付きらしきものが右側に見えるところでピッチを切る。

5P目(浅野)ハングの下をトラバースして左下に続くバンドを渡り終了。

ロープをたたみ左側の草付からdガリーを登り奥壁の取付のハング下に出る。

<Dガリー奥壁>

1P目(柴田)最初のハングはちょっとロワーダウンしてもらい何とか越える。

2つ目はガバなのだけど右足が決まらず情けなくもテンションをかけてしまい最後は意地で越える。

上部のクラックではセットしたカムにA0してしまうというイメージとは程遠いクライミングのピッチ。

ハングを抜けたあとのフェースを10m位登ったところでロープが一杯になりピナクルに掛けた長シュリンゲとカム2本でビレーポイントを作る。

2P目(浅野)ビレーポイントから上のフェースを一直線に延びるクラックを登り、4尾根寄りのフェースを登る。

少々右に寄り過ぎたみたいで正規ルートと離れてしまう。

3P目(柴田)ほぼ4尾根ルートに沿って登り枯れ木テラスから左に回りこむ。

最終ピッチは右の易しいチムニーと左の城砦ハングの前傾フェースと聞いていたがその間にⅣ級程度のやや凹角っぽいフェースルートがあったのでその手前で切る。

4P目(浅野)最終ピッチ。

凹角を登る。

両者ともⅢというほど簡単ではなく感じたがその理由が単に下手クソなのか疲れていた為なのか今となっては分からない。

ロープをたたみ靴を履き替えて夕闇迫る北岳頂上までチンタラ歩くが頂上付近でサルの軍団に遭遇。

ボスザルの雄叫びはなかなかの迫力だった。

北岳頂上からは草すべり経由で下る事にしたが肩の小屋あたりで暗くなる。

谷川から転進した事もあり二人ともトポのコピーは持ていても地図は持っていない。

(浅野さん、持ってくるよう頼んだのに。。。)

一般登山道だが草すべりへの分岐を見落とし小太郎山に進みはしないかと少々心配しながら歩きつづけるとようやく白根小屋から広河原の指導標が現れ、これで帰れるとほっとする。

白根御池小屋で少憩の後「相変わらずワンデイバットレスは疲れるのう」

とボヤキながら歩き続け広河原に着くと時刻は丁度午後10時だった。

交替でフラフラになりながら横浜まで車を走らせた。

 

<タイム>
広河原 8:30 → 下部岩壁取付11:05 → 下部フランケ取付 12:30 → Dガリー奥壁取付 15:30 → 北岳頂上 18:00頃 → 広河原 22:00

 

北岳バットレス ピラミッドフェース~中央稜

2001年9月15日
柴田、浅野(記)


天 候 :晴れ

形 態 :岩登り(夜行日帰り)

メンバー:柴田、浅野

行 動  :広河原発(3:30)~大樺沢二股(6:00)~下部岩壁着(6:50)、登攀開始(7:15)

十字クラック~ピラミッドフェース(横断バンド)~4尾根~中央稜(ノーマルルート)~終了点(16:30)

北岳山頂(16:50-17:15)~八本歯のコル~大樺沢経由広河原着(20:15)

装 備 :個人用登攀用具一式(ライト、フラットソール等)、カム(エイリアン1セット+#1~#3?各1)、ピトン(厚×2、アングル×2)

ボルトキット、ロープ9ミリ×2、ツェルト

1.カムは下から4つあれば十分かな(エイリアン)。

2.同ルートの場合フリーで5・7?程度をこなせる人ならアブミはいらないと思う(無雪期、ライン取りによる)。

3.ボルト、ネイリングは使用しなかった。

BPにおいても補強等行わなかった。

十字クラック及びピラミッドフェース、四尾根はランニング、ビレイ点共にピンの状態は比較的良好。ただし中央稜は今後補強する等が必要になってくるかもしれない。

食 料 :行動食のみ(非常食含む)

その他 :

1.横断バンドは大変脆い為、バンド上に人がいる場合に下部の登攀は特に注意。

2.4尾根の懸垂ポイント(Dガリー奥壁側に下降する場合)は50mシングルで下降可能。

枯れ木テラスから中央稜取付までは50mダブル1回で下降可能。

但し途中に懸垂ポイントが有り、2回に分けることも可能。

行動概要:

北岳バットレスに柴田さんと行くことになった。

その何週か前にやはり柴田さんと甲斐駒の継続に行き敗退をしていたので今度はスッキリ繋げたいと思っていた。

金曜日の夜、八王子駅に集合する。

21時位に出発したので広河原につくのは、0時頃と読んでいたのだが、甲府昭和ICを降りてから道に迷ってしまい中々夜叉神峠に行く道が見つからない。

どっちに進んでも鰍沢の文字が出てくるのだ。

「んだよいったい・・・」とひょっとして甲府敗退かなどと本気で思えた頃ようやく道を発見。無事広河原に向かうことが出来た。

それにしてもICを降りてから、道は暗く誰もいないのに開いているコンビニが結構あるのには驚いた。

助かるけど。

1時過ぎに広河原に着く。

駐車場は結構空いていて問題なく駐車できた。

早々に就寝。

15日、朝3時に起床。

朝飯にサツマ芋を食べ用意をすませ出発する。

テケテケ歩く。

眠い他は特にどうとゆうことない道なので報告はここで一気に二股に飛んでしまうのです。

二股に着く頃にはライトがいらなくなって来た。

ここまで来ると紅葉が綺麗だ。

天気は快晴でバットレスに朝日があたると紅葉とあいまってなんだかすごい景色になる。

こんな瞬間には滅多に会えるものではない。

バットレス沢を詰めて下部取付に向かう。

飛び石を飛ぶ時、やけに滑るなと思ったら凍っていた。

ここはもうすぐ冬がくるんだね。

4尾根と言う超人気ルートを抱えているだけあってアプローチは登山道のように踏まれている。

十字クラック取付を確認し登攀用意をする。

この取付はガイド図によれば「顕著な・・・」

と表記されているがまさしくその通りである。

それにしても何でルート図というのは、この「顕著な・・」

を多用するのか? 顕著な凹角、顕著なカンテ、顕著なハング等など・・・。

自分はこの「顕著な・・」

と言う表現があまり好きではない。

例えば「顕著なハング」

を期待して上を見上げると、至る所が顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著、顕著・・・でえらい目にあったことは一度や二度ではない。

単にルートを見る目が無いとは思うのだが、どうしても「顕著な・・」

と書かれていると身構えてしまうのだ。

はたして十字クラックは顕著であった。

だがしかしもっと右上の方にチムニーサイズ?とおぼしきやはり十字の形状が見える。

そこが取付ではないことは位置的から言ってもすぐに解るのだが「顕著って言うならあっちの方が顕著だよな・・・」

と一人で文句を言いながら登攀を開始する。

おそるべし・・・顕著!

1P:浅野が受け持つことになる。

見上げる十字クラックに向かって浅い凹角~クラックが伸びており残置も確認出来る。

出だしは若干傾斜が強い。

計画段階では今回はオールフリーの予定であった。

(生意気にも柴田さんに力強く宣言した浅野でした)だが5~6mで「A0入りま~す。」

この部分、雪に磨かれているのか?ツルツルであまりフリクションはよろしくない。

御岳のボルダーを連想してしまう。

まあいつものことだが、家で考える行動は得てして壮大である。

(今の時代バットレスのオールフリーくらいなら壮大とは言えないけど)そして自分の実力と現実の厳しさを思い知らされた時いつも出てくる言い訳がある。

「まっ!今回は安全第一と言うことで・・・」

しかしこの日安全第一は随所に出てくることになるのであった・・・。

所々にカムを決めて十字クラック1ピッチ目終了点に着く。

十字の向かって左端になるのかな・・20M位か?狭いながらもスタンスがあるので安定している。

ビレイピンはベタ打ちである。

2P:柴田さんリード。

頭上のガリー状に入り直上。

ハング下でピッチを切る。

ちなみにフォローピッチはどうしても印象が薄くなってしまう。

(すみません柴田さん)だから文章が短くなってしまうが決して手抜きではないことを明示しておくこととする。(本当か?)

3P:出だしの小ハングを超える。

このハング見た目程ではないと思う。

ハングを越すとすぐに傾斜が無くなりルンゼ上のスラブとなる。

スラブ途中の残置を使ってビレイ。

頭の上はやはり大きめなハング形状になっている。

はっきりしていると思うハングだがやっぱり「顕著」

は使わないのである。

ピレイはここで良かったと思うのは、4ピッチ目を柴田さんが登り始めてからだった。

4P:ハングを避ける為に2~3m左にトラバースして傾斜がない所を直上。

柴田さんの姿がハングの上に出た為見えなくなる。

しばらくして音が聞こえてくる。

「落石だな・・」と思っていると後から後から落ちてくる。

しかしハング下の為、石は全て自分の背中のずっと後ろを落下するだけだった。

良かった。

自分も登ってみるとハング上から横断バンド入り口までガレ状の箇所が多い。

今後登る人はご注意下さい。

横断バンドを左にトラバース。

ここはコンテで進むことが可能。

踏み跡も明瞭。

継続ということでピラミッドフェースは5P目からということにさせて頂きます。

5P:ピラミッドフェース横断バンドからを柴田さんがリードする。

出だしブッシュで登り15m位上のテラスでビレイ。

6P:スラブ状のフェースを直上。

逆層気味で岩の構成が見た目ゴチャゴチャしておりラインは不明確に見えるが、実際登るとスッキリしていて中々楽しめる。

要所要所でランニングも取れるし結構いい感じ。

7P:柴田さんリード。

6P目とよく似たピッチ。

8P:スラブ状にクラックが走っている。

カムが良く決まるので#2~#3があれば心強い。

クラック出口がこのピッチの核心かな。

大変安定したテラスでビレイ。

9P:柴田さんリード。

やはり6、7Pと似た感じ。

途中一箇所フリクションが良くないスラブから一段上がったところが「ムム!なんの、なんの・・」と感じさせる。

この表記で「ぜんぜん解んないよ」と言う方は是非バットレスに行ってみて下さい。

10P:ピラミッドフェース核心の一つ手前。

9Pより10mも進んでいないが、そのまま伸ばすとロープが屈曲するのでめんどくさいけどピッチを切る。

ビレイにはハイ松が使える。

すぐ右上が4尾根のようで登っている人がいる。

11P:柴田さんリード。

ピラミッドフェースの核心ピッチ。

すっきりした白いスラブ状フェースが5m程の短いジェードルに続いている。

ジェードル終了地点がビレイ点のようだ。

左上して柴田さんが登りだす。

グレードからみれば残地の数もこんなもんかな。

ここを登らずに右に行けば4尾根に出ることも可能と思われる。

でも見れば登りたくなるよ。きっと。

12P:右にトラバース約10mで4尾根に合流。

自分は合流後も直上してビレイしたが、トラバースが終わった所でビレイをした方が良い(ハイ松が使える)。

その後の直上距離にもよるが残地(リングボルト)までロープを伸ばすと風もないのにコールが全然聞こえなくなる。

13P~15P:言わずと知れた4尾根の為、記載省略。

Dガリー側への懸垂ポイントまで。

(マッチ箱のコルって言うのかな?)

16P:ここで4尾根の先行パーティー含め、フランケからDガリー奥壁からとわらわらと人が集中した。

人気あるね。バットレスって。

17P:浅野リード。

やさしいスラブを枯れ木テラスまで。

中央稜に行く懸垂ポイントにロープをセットして下降。

二回に分けて懸垂出来るが、途中で区切ると上に人がいた場合、落石が危険。

ロープが濡れている等回収が困難な場合で無い限り一回でおりた方が良いと思う。

見た目「本当に一回で降りられるの?」と思う高さだが、50mロープなら問題無い。

18P:ノーマルルート取付を確認。

浅野リードで中央稜1Pを登攀開始。

ルート数が少ないから取付はすぐに確認出来た。

(残置有り)中央稜はそれまでのルートと比較すると脆そうだし、なにより谷底の為、暗い感じがする。

初対面の印象は良くないって感じだ。

ルートは傾斜の強いフェースを強引に5~6m直上。

トラバースしてリンネに入る。

このトラバース、ハング状箇所をのけぞるように足を送る箇所がある。

ここはしゃがみこんで姿勢を低くして超えることをお勧めする。

少し下を探せばその為のスタンスはいっぱいある。

残置でビレイ。

19P:柴田さんリード。

ルート図によればリンネを抜けて1P。

右にトラバース1Pで中央稜3P目終了点になるようだが、リンネを抜けた箇所よりフェイスを右上。

1P終了点より直接3P目終了点に抜けられた。

この間残置も取れるのでその方が時間が短縮出来る。

最近は皆そうしているのかもしれない。

20P:浅野リード。

フェースを右上しハング帯に突き当たる。

そこかしこに残置があるがどれも続いていない(ように見えた)。

「さてさてどちらに行こう」と考えた挙句、ハングの切れ目を右上するラインを辿った。

少し被っていてしかも高度感があり、大変気分の良いフリーピッチ。

2~3個ランニングも取れた。

ハングを抜けるとガクンと傾斜が落ち、広々として視界が広がった。

北岳の頂上がもう少しだ。

残置まで直上してロープを伸ばし柴田さんをビレイする。

しかしここで失敗が発覚。フォローで上がってきた柴田さんによるとノーマルルートのラインはもっと右じゃないかとのことだ。

3P終了点より思っていた程右に登っておらず直上気味だったのが原因らしい。

残置がある所を見ると何がしかのラインだとは思うのだが、たまたまそこが現状で登れるラインだから良かったのであって予定していたラインを外したのは大変危険だと思う。

大失敗だ。

21P:柴田さんリード。

Ⅱ~Ⅲ級の露岩を登る。

ここに来て明るい内に壁を抜けることが出来ることを確信し少し嬉しい。

22P:ガレた狭いルンゼ状を直上。

ロープは要らないかもしれないが念の為、スタカットで登る。

約30m程で終了。

残置で柴田さんを迎え入れルートを抜けた。

ここでロープを外し頂上へ向かう。

頂上までは15分位。ルート図通りだ。

北岳頂上の風はもう冷たかった。

日が暮れ始めていてなんだか朝同様すごい風景が広がっていた。

一日に2回もこんな風景を経験できたのは大変幸運だったと思う。

中央稜は直接頂上に抜けられると聞いていたがまさしくそんな感じだ。

下部の暗いイメージからは全然想像出来ないルートだった。

甲斐駒で天気に泣いた分今回は天気に恵まれたとも思った。

柴田さんと握手を交わして記念写真をとる。

ガチャを整理、行動食を食べて明るいうちに下山を開始する。

しかしまー八本歯のコルより大樺沢までよくこんだけ梯子を作ったものだ。

大変だったろうなと思いながらスタコラ下山。

夜20時過ぎに無事駐車場に戻りました。

柴田さん有難うございました。

次は下部~上部フランケ~Dガリー奥壁、んでもってもう一回中央稜ですね。

 

北岳バットレス ピラミッドフェース~4尾根~中央稜

2000年7月22~23日
関、本郷、椛島(記)、他

今回のメンバーは、関さん、本郷さん、私の他に、本郷さんの友人の都岳連遭難対策委員の方が三名、というもの。

大人数で賑やかな山行だった。

金曜日の晩広河原に午前2時半頃着く。

4連休の最中とあってか、物凄い車の数。

本郷さんも「こんなの初めてだ」と目を細めていた。

軽く酒を飲んでいると空が白みがかかって慌てて寝入る。

7月22日(土)

容赦なく日が照り付ける下ゆっくりとアプローチをこなす。

昼前に大樺沢二股手前の大岩の下にベースを置く。

大樺沢は幕営禁止になっているが、結構いいテン場が点在する。

中でもこの大岩の下は白眉だと思う。

大岩ではボルダリングも楽しめる。

時間が中途半端だったので下部岩壁あたりで遊ぼうと思い上まで行くが、雨がぱらついてくる。

ガチャをC沢出合いにデポしてあとは宴会に突入。

遭対の方にひとり往年のバックパッカーがいらっしゃって、30年前のインドの話など伺う。

またべろんべろんに酔って

ボルダリングに挑戦しようとしたら、死にそうになって焦った。

7月23日(日)

3:00起床 4:00テン場発 5:30ピラミッドフェース取付き 8:30 4尾根上 13:00頂上

天気は上々。

いかにも梅雨明け直後といった感じの蒼い空。

関・椛島パーティーはピラミッドフェース~4尾根~中央稜の継続へ向かう。

本郷パーティー4人はCガリー大滝から4尾根へと向かう。

以下、関パーティーの記録と感想。

ピラミッドフェースでは、トポにある4P目の「小ハング帯の切れ目に食い込むバンドを右上」というところを、間違えて手前のバンドからまわってしまったようだった。

4尾根は、気持ちよかった。

炎天下のIII級ピッチのフォローはスタミナを消耗させる。

4尾根から中央稜への懸垂は、枯れ木テラスからダブルで一回。

ザイルの回収でラクが起きるくらい浮石が多い。

取付きは雪渓が厚く残っていた。

その上に威圧的に中央稜が聳え立っている。

中央稜ノーマルルート1P目関さんリード。

かぶり気味のフェースⅣ+から(本来2P目の)ルンゼで50mいっぱい。

フォローしていて怖かった。

2P目椛島リード。

バンドを20mほどトラバースしてハングを超え、稜に出る、IV+。

トラバースしていて、どこからハングを超えていいのか見えなかった。

緊張感溢れるピッチ。

お勧めです。

残りの簡単な2Pで中央稜も終了。

後は頂上まで踏み跡を3分行くだけ。

ところが…

最後の最後で関さんが「よし、かば、Cガリー奥壁に継続だ」と言い出す。

私は関さんの言うその2ピッチの壁が、ボロボロで登り様がないものに見えたのだが、関さんは「これで最後頂上に直接行くのがかっこいいよなあ。たまんないよなあ。 」と壁に見入っている。

どうしようかと思っていたところで、頂上に先に着いていた本郷さんの姿が見えた。

「おーい、早く来なよ。新聞記者が写真を取りたいってさ。全国紙だってよ。 」

我々はCガリー奥壁のことは忘れ、乱れた呼吸を整え、眼鏡のずれを直し、額の汗をぬぐって意気揚揚と頂上に上がった。

そしてそこには記者とおぼしき人がいて、我々に向けてシャッターを切っていた。

頂上でくつろいでいる縦走のおばちゃん達も一斉に我々に目を向ける。

気分はまさに英雄。

記者さんいわく、あと数日もすれば、その某○旗誌に我々の勇姿が載るとのことだ。

何はともあれ全国版。

嬉しい限りである。

くだりは八本歯のコルのあたりから下る。

「冬のアプローチはあそこをああ行くんだ」などといいながらゆっくり降りる。

薄暗くなる頃広河原を後にした。

いい山だった。

北岳バットレス 5尾根支稜~ピラッミドフェース~4尾根

1999年7月31日~8月1日
杉浦、水柿、井上、三好、倉田(記)

7月31日(土)

前夜発で広河原に2時ごろ着くが、広河原にはかなりの車がとまっている。

なんとか就寝。

朝ゆっくり起き、ハイキング気分で白根御池に。

のんびりとテント張りながら、晴れ上がった空にバットレスが見える。

この日は下見を兼ねて十字クラックを登る予定だったが、二俣から先で、入るべき沢を間違えてしまい、がらがらの悪い涸れ沢をトラーバースしたりして、取り付きについた頃にはもういい時間になってしまった。

5尾根支稜末端の窪みのところ(ビバーク可)に道具をデポして敗退。

帰りはお花畑のなかの踏跡をたどる。

ちなみに一般道とぶつかるところに、黄色のペンキでしっかりとD沢と矢印が標されている。

ちょっとびっくり。

うーむ。

ところで、アプローチについて一言。

日本の岩場(上)で二俣から2つ目の沢をつめると書かれているのは、3つ目のような気がする。

体調が今一つ良くない私は白根御池での酒宴で、頭がんがん夜空の星がくるくる明日もしかして登れないかもと不安を抱えながら一足早く就寝。

8月1日(日)

朝1時起床、昨日のデポを回収して、少し夜空が明るみ始めた4時頃に登攀開始。

2パーティ(水柿・井上)(杉浦・三好・倉田)にわかれて同じルートを登りはじめる。

あいかわらず不調な私は、フォローで登らさせて頂く。

5尾根支稜2~3ピッチ、カンテ沿いにいくと小さなテラス(2、3人テントが張れそう)がある。

そこから右の草付のバンドへトラバース。

Dガリー右のフェースは何処も登れそうで、ピラミッドフェースのルートがよくわからず、ルンゼを登る。

ぼろぼろのバンドを右に回り込み、かぶり気味のクラックをジャミングしながらのぼる。

岩はつかむとぐらぐらするので、押さえつけたりしてあまり力がかけられない。

その頃から私のがうつったのか井上さんが体調悪くなる。

いざとなると頼もしい水柿さんが変な歌をうたいながらリード。

逆層のフェース(Ⅳ+)を過ぎ2ピッチで、4尾根と合流。

そこから2ピッチでマッチ箱で、向かって左へ懸垂。

尾根上には黄色い丸ペンキが所々にあって、変な気分。

痛いてん足のあしでスメアリングしながらフェースから右に切れ落ちるカンテにでる。

ガスが出ていなければ高度感があるだろう2ピッチを快適にのぼると、テラス(テント張れる)に14時40分頃つく。

ギヤの片付けをして、そこから20分歩くと、15時20分頃に北岳頂上。

山頂を16時ちょい前に出発。

途中で休みながら、白根御池経由で19時過ぎに広河原につく。

休みたいのになぜか自然と体が動くらしくふらふらしている人が数名。

20時30分頃なんとか帰路につく。

この日はなぜか時間に関してかなり運悪いようで、中央高速で30kmの渋滞にはまり、府中インターに0時30分。

で、一番残業した方だと自宅に3時頃、着いたとのこと。

本当にお疲れ様です。

あと、体調悪い私が登れたのは皆さんのおかげです。

ありがとうございました。